メディアの話、その12 ファッションは死んだか。

フェイスブックで、スーツの着方本の話を書いた。

ものすごくたくさんの「友達」が読んでくれた。

さまざまな意見が飛び交った。

それでわかったことがひとつある。

ファッションは死んだ、と言われている。

ビジネスとしては、けっこう終わったと言われている。

百貨店やアパレルの不振、若者のファッション離れ。

新聞的にはそんな言葉が飛び交っている。

でも、違うぞ。ファッションは未だにきわめて刺激的だ。

なぜならば、ファッションは相も変わらず、とっても重要な個人メディアだから、である。

スーツの話をちょっとする。

スーツに関していえば、西海岸初のアメリカのベンチャー、いやすでに世界最強クラスのIT企業群の多くでは、誰もスーツを着ていない。だいたいトップが着ていない。だから、スーツの正しい着方があるかどうか以前に、スーツという格好が「オワコン」なんだよ、と。

でも、これは逆に「スーツ」というエスタブリッシュがいたからこそ、「Tシャツにジーンズ」というカウンターが際立ったという側面が間違いなくある。「楽だから着ているだけさ」というセリフ自体が、カウンターである。つまり、西海岸のTシャツにジーンズ経営者は、スーツ以上にある意味でファッショナブルである。ファッションの効果を「自覚」しているからだ。

おそらく「服装」というのは、ファッション市場の規模の増大と減少とは別に、人間が身につけるもっとも身体的なメディアであり続ける。ゆえに、どんな格好をしているか、というのは当人が意識するしないに限らず、ある種の情報発信であり続ける。

ファッション市場は死んだかもしれないけど、

ファッションは、いまも極めて有効なメディアである。

おそらく、これからも。

だからこそ、たくさんのひとが反応してくれたのだと、私は思っている。

じゃあ、どんな話を書いたかというと、こんな話です。いっさい加工せずに載せておきます。

会社に
「日本の男のスーツの着方は欧米から見るとダサくて間違ってる」的タイトルの新刊本があった。
大好物の本である。
なぜか毎年おんなじようなタイトルの本が必ず出る。
そこが好き。
読む前に、(たぶんこんなことが出てるぞ)と予想する。
1 靴は紐付き以外はダメ。ローファーとかダメ。でも日本は社長も首相も
  履いてるよね。
2 スーツの大きさがダメ。なぜ、あんなぶかぶかの着てるの?
3 ズボン(とはもちろんいわない)の裾がダメ。殿中でござるかよ。
4 靴下の長さがダメ。スネが見えたらダメ。
5 ネクタイの長さがダメ。ひふみん以外はベルトより下に伸ばしちゃダメ。
6 黒いスーツがダメ。あんなの公式にきてるの日本人だけ。
7 スーツの袖がダメ。ちょびっとシャツの袖が出なくっちゃだめ。長すぎ。
8 ボタンダウンがだめ。スーツに合わせちゃだめ。ありゃカジュアルよ。
9 クールビズファッション論外。夏も我慢してスーツ着て、ネクタイしろ。
10 スーツのボタンは1番目だけはめろ。椅子に座ったら外せ。それ以外はだめ。
11 白洲次郎は許す。
以上を英米のエリートはみんな充した身なりをしており、
日本のエリート層は充してない。
だから、日本はだめなのだ。
ま、だいたいこんなとこであろう。
ちなみに私はほぼ一つも守ってない。
白洲次郎さんは許すが。
何を許すのだ。
だから私はだめなのだ。
いま気づいたのだが、
靴下、短いどころか
穴が空いてて、
脛が見えている。
とりあえず、長い靴下買ってこよう。
セブンイレブンで。
次に著者だが、今回は女性。
日本で裕福なご家庭にお生まれになるか、
海外でお育ちになり、
アメリカ(もちろん東海岸)かイギリスにご留学なされて、
いまは「うつくしいふるまい」コンサルタントをされている。
ちなみに
男性の場合は、百貨店関係の方が多いですね。
さあ、どうかな。。。。
ーーー白洲次郎以外、ほぼ全問正解でした!
   著者のキャラもだいたい当たっていた。
なぜ当てられるかというと、
私たち50代は、メンズクラブだのなんだのに、
上記の話がさんざん出ているのを80年代前半から
なんとなく読んでいたため、
「懐かしのアニメソング」のように覚えているのである。
ただし、実行しているひとは、ほぼいない。
理由は2つあって、
1つは面倒であるからであり、
もう1つは、これは本のねらいから外れてしまうのであるが、
「仕事ができたり、もてたり、友達が多かったり、頭がよかったり、
 フルマラソンが走れたり、というのと、服装には、相関関係がない」
ということを、年寄りは経験的に知っちゃっているからである。
なかには、
上記の条件をすべて充した洒落者で、
仕事ができて、
頭がよくて、
フルマラソンが走れて、
友達が1万人いて、
彼女が5000万人いる、
ってひともいるけれど、
そのひとの場合、
服装はただの「趣味」だったりする。
でも、毎年、こういう本が必ずでる。
ポイントは「欧米かよ」である。
「欧米のひと」自身が書いた本は、見たことがない。
毎年出るということは、市場がある、ということである。
つまり、読者がいる、ということである。
そういう読者をつかむこと。
これが、書籍のビジネスである。
書籍に限らず
世の中には、こういう市場が、いたるところにある。
それが面白い。

てな話でございます。

続きます。

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