メディアの話その135 デジタル狩猟採集民

アフリカやニューギニアが

文明化のチャンスを逸したのは、

大規模農業を発展させるチャンスが

「地理的に」なかったからだ。

ジャレッドダイアモンドはそう言った。

だから、狩猟採集のフェーズに文明が止まった。

一方、ヨーロッパでは、中国では、

そして、大規模農業が

貧富の差を産み、国家を産み、

巨大組織を産み、

その構造は、そのまま産業の発明と

大企業の出現へとつながった。

21世紀、産業文明がピークに達し、

インターネットとケータイが普及し、

情報のやりとりに国境がなくなった。

するとどうだろう。

先進国の経営者や経営学者や気の利いたコンサルタントは、

誰もが、

「小集団をつくってリーダーシップを鍛えよ」と

言い始めた。

これすなわち、巨大ピラミッド型の

大企業組織では、明日が読めない、変化が多い、

人の移動が多い、いまの市場環境に

対応できないよね、ということである。

明日が読めない?変化が多い?人の移動が多い?

それって、

狩猟採集社会じゃないの?

そう思って、今の経営者やコンサルタントの発言を見る。

小集団で臨機応変なチームをつくり、

個々がリーダーシップを鍛え、変化対応せよ。

狩猟採集民になれ。

要するにそう言っている。

大規模農業が生まれて

国家が生まれて

5000年。

産業革命が起きて

大企業が生まれて

150年。

インターネットが普及して25年。

なんと人類の営みは

ぐるっと大きなスパイラルを描いて、

元に戻ってしまったかのようだ。

アフリカから戻って、

ダイアモンドの最新作「昨日までの世界」に

描かれた、ニューギニアの伝統社会に、

実は現代人が学ぶことは具体的に数多い、ということを知り、

我が師、岸由二慶応大学教授の

2013年の退官記念講演で、

岸さんの、

「地べたを這いつくばって、大地を愛で、大地に生きる

狩猟採集民の身体と感覚」と、

そんな地べたを宇宙から眺める

「宇宙人の視点と知性」との

両方が必要な時代、という話を聞き、

ああ、我々は、

大規模農業の地主でありながら、

狩猟採集民の名うての狩人でもあらねばならない

時代を生きているのだな、

と思うわけであります。


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