メディアの話その9。利己的な遺伝子と。
人間にとって、最重要なメディアは何か?
今やインターネットか。
違う。人類が生き延びるかぎり、AIに世界を乗っ取られ、ターミネーター的世界が訪れないかぎり、人類にとって、いちばん重要なメディアは決まっている。
遺伝子だ。
人類、というと語弊がありますね。あらゆる生物にとっていちばん重要なメディア、情報の媒介、それは遺伝子である。比喩でもなんでもなく、むしろもっとも直接的な意味として。
遺伝子が、生き物にとっていちばん重要なメディアであり、生き物の身体的特徴や性格は、遺伝子というメディアのいわばコンテンツである。人類は文明初期からその事実に気づいていた。
だから農業や牧畜業が発達したわけである。
大きくて甘い果物、たわわに穂をゆらす米や麦、たっぷりのミルクを出す牛、異様に足が短く、水鳥を狩るのに向いた犬。体長の数倍の長さの尾羽を持つ鶏。
これらは、自然界には存在しない。
人類が、個体同士の特性を見抜いて掛け合わせ続けてできた「品種」。
自然界でのDarwinism的な進化では、生き延びられない過剰な性質を持った農産品、家畜、ペットは、人類がつくりあげた。
遺伝子の存在はもちろん知られていない時代。けれども、形態や性質は、どうやら親から子に伝えられるようだぞ、と人類は見抜き、少しでも甘い果実同士を、少しでも大きな種をつける穀物同士を、少しでもミルクがたくさん出る牛同士を、かけあわせていった。
経験則的に、人類は遺伝子的なるメディアの存在に気づいていた。
それを法則としてあらわにしたのがメンデルだ。
メンデルの法則。
ほぼ同時期に、生き物の進化の法則を見抜いたのがダーウィンだ。
自然選択説。
ただし、初期の自然選択説は、生き物の進化の単位がなんなのか、議論が分かれていた。社会なのか、群れなのか、個体なのか。
いや違う。進化の単位、生き物のかたち、性質というもっとも重要な情報を引きつぐための進化のためのメディアは、遺伝子だ。
ネオダーウィニズムの誕生。
そのネオダーウィニズムをもっともクールに解説した書、
それが、リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」だ。
そう、「利己的な遺伝子」は、遺伝子というのがメディアである、ということがわかる本でもある。
その「利己的な遺伝子」発刊40周年記念増補版がこの2月に出る。
もういちどちゃんと読んでみよう。
https://www.amazon.co.jp/dp/431401153X/
続きます。
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