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「ポジションサイズ」 ④ 利益を最大にするポジションサイズを求める “Optimal f”と”破産確率"

Kelly f

Kellyの公式をご存知でしょうか。簡潔にいうと、ギャンブルで使用される、資産を最大化する最適掛け率を求める公式です。Payoff ratio(利益と損失の比)が一定の場合、

 Kelly f = { (Payoff ratio +1 ) x 勝率 -1 } -1 / Payoff ratio
 投資額 = 口座資金 x Kelly f

の式で算出できます。ですが、実際のトレードでは利益も損失も異なり、厳密にいうとこの公式は使えません。ただ、Mark Minervini氏は、書籍を拝見すると、基本的にはPayoff ratio = 2 (利確:損切りが2:1)からKelly fを算出してポジションサイズを求めてトレードされているようです。

Optimal f

Optimal fとは、Ralph Vinceが提唱した「資産を最大化するためのposition size」を求めるための数値です。利益も損失も異なる環境での利益を最大化するための投資額は、Kelly fではなく、Optimal fを用います。自分のトレード成績の記録を元に、Excellを用いて計算し、今後の成績を予測します。破産確率の算出と合わせれば、最大利益の見通し、つまりリターンとリスクを把握することができます。具体的には、自分の今のトレードサイズで、資産は今後どのように増えていくか(つまり目的を達成するまでどのくらいのトレード回数が必要か)、破産の確率はどのくらいかを、他覚的に把握することができます。

Optimal fと破産確率の関係と考え方

左図がf値とトレード後の最終資金率(Terminal Wealth Relative)の関係、右図がf値と破産確率の関係。左図の曲線の頂点、つまりTWRが最大になるf値がOptimal fにあたる。右図はOptimal fでトレードした場合の破産確率を確認するのに便利である。また破産確率が10%未満となるf値も把握しておくべきである。

上図左は、あるトレード成績を元に、横軸にf値(f = 0–0.5)を設定し、縦軸にそれぞれのf値からトレード後の最終資金率(TWR, Terminal Wealth Relative)を算出し、水色dotで示したグラフです。TWRが最大になる時のf値のことをOptimal fと呼びます。左図ではTWR=1.219の場所のf値 f=0.14がOptimal f(青文字)にあたります。また破産確率とは、自分で設定した破産の条件(例:口座資金が1/3に減少することを破産と定義)になってしまう確率のことを指します。上図右は、それぞれのf値から破産確率を算出し、ピンク色dotで示したグラフです。上図右だと、Optimal f = 0.14の時の破産確率が48.6%(青文字)で、破産確率が10%未満となるf値を逆算した場合、そのf値はf = 0.04(緑文字)です。

これらからわかることは、「今までやってきたこのトレードを、Optimal fとなるf値を用いてトレードをしていった場合、資産は最大1.219倍になる可能性があったが、48.6%の確率で破産する可能性があった」、ということです。この調子でぶれずに同じようにトレードを続いていけば、今後のトレードも同様の成績になっていくだろうと、予測できるのです。これが、Optimal fと破産確率の算出の優れている点です。

参考: Ralph Vince「投資家のためのマネーマネジメント」「ラルフビンスの資金管理大全」

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