京都行2

新幹線駅のアナウンスが憎らしい。
いっそバスに乗り遅れれば良かった。
小窓に表示される唐津行きの電車が来るまでのカウントダウンがバカバカしい。
明日博多には6時40分に到着する。早すぎる。
バイトを休む必要はなかった。


講堂のスピーカーは壊れてでもいたのだろうか。会場がザワつくなか、微かに始まりますという声が聞こえ、そぞろにオープンキャンパスは始まった。
我が幼き従弟は叔母の膝の上で紙を破いて遊んでいる。その行為が叔母や私をヒヤヒヤさせない程に講堂全体に漫然とした雰囲気が満ちていた。
ざわめきは止まず、開始時間を過ぎてもなお次から次へと遅れてやってきた人々が目の前を通り過ぎる中、先生らしき白髪の男性がステージに現れ建学の精神なるものを紹介し始める。
遠いスクリーンに投影されているプレゼンの文字が細い。"PAN MUNDI PER LINGUAS"?
叔母に確認するとPAXであった。
私と叔母の集中力と我が従弟の落ち着きメーターが徐々に目減りしていく。一計を案じ、折り紙を折ることにした。目の端では建学の精神の説明が続いている。
かくかくしかしか、叔母と講義の批評をしていると、前の席の人から指摘され少し静かにする。鶴を1匹折り上げてもなお建学の精神の説明は続いている。

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