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【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 10話

シンは地上に残る者と地下に向かう者とを選別し始めた。あれからアキモトに何度も電話をしたが一向に繋がる気配がなかったため、自分たちだけでも動こうと考えての判断をしていた。カイとゼロヨンも皆と合流していた。


「トガやエンなど優秀な者が地下にいるが、それでも人数は多いに越したことはない。ただ入れ違いでロンは地上に出てくる可能性もある。とりあえず私は地下に向かう。あとはオウとリツ、それとシュンも来てくれ。地上はカイ、イジュン、ステイル、ゼロヨンで対応してくれ。」

「わかった。とりあえず地上は任せてくれ。」

「ったくあと何人いるんだよ。ハクってやつみたいなのはもう勘弁だぜ。」

「あと何人いるかは定かではないが、おそらく幹部辺りは潰した可能性がある。それでもロンだけは別格だ。死人が出るかもしれない。」

「さすがのロンでも束になってかかれば倒せるんじゃないか?」

「やつは狡猾だ。それに隠し玉だって用意している可能性もある。」


それがマリのことであるとはこのときは誰も予想だにしていなかった。その後地上組と地下組に分かれて行動をする。シンたち地下組は秋葉原の駅に向かっていた。


「ところでシン。ロンのやつは地下で何をやらかす気なんだ?」

「わからない。だが地下に潜るとなれば何かの実験だろう。こうやって我々が動いていることを知っているからには、さっきも言ったように何か最終兵器みたいなものを用意していると思う。」

「それってさ、ロンもやばいって焦ってるってことなんじゃねぇか?」

「確かにそうかもしれないね。叩くなら今だってことだ。」


大晦日の秋葉原の駅前はカウントダウンを求め人が溢れていた。改札口も慌ただしく人が出入りしている。しかしその流れとは裏腹に、フードを被った男が一人改札口の前で動かないでいるのが見てとれた。シンたちはその男を無視して改札をくぐろうとしたとき声をかけられた。


「そんなボロボロの格好で中に入ったら警備員に止められてしまうぜ?」


シンたちは足を止めて男の話を聞き入れる。リツは拳を握る仕草を見せるも、シンにより制されてしまった。


「君はロンとどういう関係なんだ?」

「すごいな。いきなりそうきたか。ただの一般人のおせっかいだとは思わなかったのか?」

「そうだね。でも今の反応だとイエスということでよかったみたいだね。」

「ははっ。かまかけられたのか。あぁ、その通りだ。オレはロンと関係がある。」

「まさかこんな人の多い場所でやり合うつもりじゃないよね?場所を変えようか?」

「いや、もはや能力が世間にばれようがどうだっていいんだ。事は最終局面に近いんだからな。」


リツは咄嗟に男の腹を目掛けて殴りかかろうとする。しかし寸手のところで拳が止まってしまった。体を動かそうにも動かすことができない。これは一体・・・


「今君にかかっている重力は10倍だよ。」


シンはリツを抱えその場から離れた。同様にオウとシュンもその男から距離をとる。周囲では少しざわつきが起こっている。シンは徐に呟いた。


「重力使いか。」


男は急に腰にぶら下げていた刀を抜き、シンに向け襲いかかる。シンも刀を抜き応戦する。周囲では悲鳴が上がっていた。


「何でも切る能力と何でも切る能力とだったら、一体どっちが勝つんだろうな!」

「どういうことだ?」


シンの刀身に男の刃が食い込んでくる。


「まさか模倣の能力か?オレの能力をコピーしたのか?」

「さすがだよ、シン。この力インパクトがあるな!こんなにも切れ味が鋭いなんてな!」


同じ能力同士なら、あとは想いの強いほうに軍配が上がる。それだけこの男の殺意は強いということだ。するとシュンが男目掛けて高速のタックルをぶつけようとする。しかし、当たる直前で男は刀を放し、カウンターの要領でシュンの首筋に蹴りを入れた。


「がっ・・・」

「おいおいなんてザマだよ。男一人に何人がかりなんだよ。」

「・・・なんで対応できる。」

「そりゃこっちも高速で動いたからな。」

「シュン、そこをどくんだ!」


シンは男に刀を振り下ろす。しかし途中で攻撃を止めてしまった。


「あんたのオレに対する殺意を切った。」


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