見出し画像

【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 12話

シュンはリツに言われた通り高速移動を開始し男に攻撃を仕掛ける。男はそれを高速移動し避ける。今度は反対に男が仕掛ける。しかしシュンはそれを回避する。このやり取りが何度も続いた。リツはタイミングを図るように動かない。まさか体力や能力切れを狙っている?そんなことをしても無駄だ。男は体力も能力の総量にも自信があった。だがこのままでは埒があかない。男はシュンの攻撃を受けることにし、組手のような態勢に入った。


「シュン今だ!捕えろ!」


リツの合図と共にシュンは男の両腕を捕える。そしてリツは男の背後に忍び寄り、拳を上から振り下ろそうとする。


「無駄だよ。すぐに君の能力で止めて・・・能力が発動しない?」

「能力を使うなんて一言も言ってねぇぜ。」


リツの拳は男の背中に直撃する。男は思わず苦痛の表情を浮かべる。その直後、シュンの高速のラッシュが男を襲う。男は防御が間に合わず全て食らう形となり、その場から吹き飛ばされてしまった。男は仰向けに倒れた状態で動かない。リツは男に近づき呟いた。


「てめぇは条件反射的に能力をコピーしちまう。それにそいつより強力な私の能力をコピーされたらたまったもんじゃない。だから、そいつには囮になってもらった。そいつの能力だけを使わせることに専念させた。だけど、私は能力を使わない。てめぇは私たちを舐めすぎたんだよ。」

「ははっ、見抜かれていたか。さすがはリツといったところか。さてどうしようかねぇ。」


男はゆっくりと立ち上がり軽く体を伸ばしてみせる。涼しい顔をしているがダメージはあるはずだ。もう一度さっきの作戦でいく。


「リツ、もう一度だ。」

「覚醒領域。」


男はそう言うとリツの能力を使い二人に20倍の重量をかけた。足が地面にめり込むほどの重さ。当然二人は動けない。かろうじてリツが声を上げる。


「なぜだ・・・私は能力を使っていない・・・」

「張摩を広げたからね。一度コピーした能力であれば使いこなすことができる。それに・・・」


男は高速でシュンに体当たりする。シュンには重力がかかっているため、ダメージを外に逃すことができない。


「がぁっ・・・」

「あーぁ、見てるこっちがつれぇなぁ。どうだ、自分の能力にやられる気分は?」

「まさか・・・同時にも使えるのか・・・」


次に男はリツ目掛けて重力波を繰り出す。リツも目の前に重力で壁を作ろうとするが、自身に重力がかかっているせいで思うように出すことができない。リツはそのまま直撃を受ける形となった。リツは頭から血を流し、ついにはその場に膝をついてしまった。


「いいかげん倒れな。これ以上やると死ぬぜ?」

「そんだけの出力量・・・お前だって限界なんじゃないのか・・・ほら、手が震えているぜ・・・」


確かに男の手は震えていた。二人分の、それも1級レベルの力だ。消費も半端ない。


「そのまま倒れればいいものを。仕方ない、今楽にしてやる。」


男は腰に下げていた刀を抜きリツへと近づく。周りでは悲鳴が上がっている。


「これが何を意味するかお前ならわかっているよな?」

「この、猿真似野郎が・・・」


男はシンの力を使いリツを切ろうとしている。リツは抵抗するも動かない。万事急須か・・・するとどこからともなく風が吹き荒れる。それは懐かしく、どこか優しい風だった。男は風に煽られその場に立ち尽くす。


「ごめん、遅くなった!」

「ほんと、一体いつまで寝てやがる・・・」


リツはついに倒れてしまった。レンはリツに近づき介抱する。大丈夫、気を失っているだけだ。レンは能力を流し込み、リツの呼吸を整える。


「さすがだよ、ヒーロー。ナイスタイミングだ。」


男の声はレンには届いていなかった。レンは男に振り向くことなく朱雀を繰り出した。これまでのものとは比べ物にならない、とても洗練された姿だった。しかし、男も即座に朱雀をコピーする。2つの朱雀はぶつかり合い激しい衝撃が辺りを包んだ。すると男の被っていたフードが取れ、その素顔があらわになる。


「お前・・・タクなのか?」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?