見出し画像

【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 1話

2つの剣が交わった瞬間、大気が破れる気配がした。大地が揺れ、木々が揺れ、空が歪み、まるで異空間にでも入り込んだようだった。


「ははっ、さすがやるな!オレの剣を止めたのはこれで2人目だ!」


シンは高揚し、自身の呼び名すら変わっていた。2人目と言ったのは1人目はおそらくカイだろう。カイの能力を持ってすればシンの能力を打ち消すことができる。しかしシンの能力とは一体?レンは一瞬考えたが、そんなことよりもシンの放つ刃を受け止めることで精一杯だった。


「なるほど、師はトガだな!あいつは剣術にも長けているからな。その剣の動きはまさにそうだ!」


確かにトガから剣捌き、とりわけ対シン用に剣が折れない受け方というものは学んだ。しかし実際には、シンの剣を受ければ受けるほど、黄龍は刃こぼれどころかシンの刃が食い込んでいく感じがある。頭身は徐々にボロボロになっていっている。限界だ。レンは一度距離を取り黄龍の周りに大気を集めていった。その大気は熱を帯び、ついには炎となりまとわりつく。


「その形、朱雀だな!さぁ、全力でぶつけてみろ!」


シンはなぜ朱雀のことを知っているのか一瞬疑問に思ったが、そんなことを気にしている余裕はなかった。炎の風は次第に不死鳥の姿へと形を変える。リツに放ったときよりも数段大きく、そして美しかった。


「食らえ!朱雀!」


朱雀はシン目掛けて飛んでいく。シンは剣を両手で高く上げる。まさか朱雀を一刀両断するつもりか?いや、たとえそれで切られたとしても、不死鳥は何度でも蘇る。しかしシンが剣を振り下ろすと、朱雀は見事に真っ二つにされてしまった。さらにシンはその勢いで横一線の刃を浴びせる。朱雀はあっという間に4つに分かれてしまった。だが問題はない。不死鳥は何度でも蘇る。そのはずだったが・・・


「え、蘇らない・・・?」


朱雀はバラバラにされた後、そのまま風となって消えてしまった。シンは剣にまとわりついている炎の風を払い、鞘に収めた。


「なぜだという顔をしているね。そちらが剣術を使ってみせたように、こちらも剣術で対応したまでの話さ。」


シンは剣術と言ったが、それであれほどの朱雀が消失してしまうものだろうか。おそらくシンの持つ能力に関係していると思うが、今のレンには何も思いつかなかった。


「朱雀か。いい技だな。まさに伝説の神獣、四神が一柱の呼び名に相応しい技だ。だがね、私にも一柱の名に相応しい技があるのだよ。」


そう言うとシンは両脚を広げ、居合いのような構えをとった。その気迫だけで今にも気を失いそうだったが、レンはボロボロになった黄龍を構え正気を保とうとした。


「この刀の名は白光といってね、その名に恥じない技を考えた。君の朱雀同様、四神が一柱である白虎だ。これを君にぶつける。」


白虎。西方を守護する白い虎。どんな技なのか想像はつかないが、直感で危険だと察知したレンはもう一度朱雀を顕現させた。


「頼むから死ぬなよ。」


そう言うとシンは白虎と叫び抜刀した。頭身が全く見えない速さの居合いの後、白い虎の姿が幻影のように現れた。レンはそれに対抗するかのように朱雀を繰り出す。白虎の幻影とは違い、朱雀ははっきりと顕現している。2神はぶつかり、激しい音と衝撃波が辺りを襲う。それはシンとの剣を交えたときよりも数段大きい。だがしかし、今回は朱雀に軍配が上がった。白虎の幻影を飲み込み、そのままシンに向かい飛翔する。


「いけ!朱雀!」


白虎の幻影を飲み込むことでまるでその力を吸収したかのごとく、朱雀は大きく、そして速度も上がっていた。しかし、シンにぶつかる数m手前で朱雀は身動きがとれなくなった。レンは何が起きているかわからない顔をしていたが、朱雀の正面をよく見てみるとある物体がその動きを遮っていた。それは虎の腕のような形をしていた。5本の爪が生えたその大きな掌はさらに握り締めるような動きをする。朱雀は遮られているだけでなく、苦しそうにも見えた。


「朱雀!」

「これは驚いたな。握り締めているにも関わらず、まだ存在し続けてようとしているのか?」

「これがシンさんの能力なのですか・・・?」

「それは違うよ、レンくん。私は炎や水、それに風といった能力は扱えない。この技はいわば剣術や体術といった武術を極めた者にしか扱えない。トガからそう教わらなかったのか?」


レンは激しい風圧と衝撃波の中、トガとの修行の日々を思い出していた。


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?