見出し画像

もしも法律がなくなったら

登場人物

古比こび太

  • 冴えない三流プログラマー

タダ飯くらえもん

  • 2世紀からタイムスリップしてきたイリオモテヤマネコ型ロボット

  • こび太の家に居候している

ある日の夕方

こび太「うわぁ〜ん!」
こび太「くらえも〜ん!」

くらえもん「どうしたんだい、こび太くん?」

こび太「今日も部長にキモいって罵られたんだ!」
こび太「酷いよ〜、いじめだよ〜、パワハラだよ〜!」

くらえもん「うーん・・・」
くらえもん「こび太くんにも原因があるんじゃない?」
くらえもん「君がいつも媚を売りすぎるから、キモいって言われるんだよ」

こび太「いくら僕の言動がキモかったとしても、それでもいじめる方が悪いじゃないか〜!」
こび太「それが人間ってもんだろ〜!」

くらえもん「そうだけどさぁ」
くらえもん「たまには男らしく、ぶん殴ってやればどうだい?」

こび太「この令和の時代に、男らしくとか古すぎるよ〜!」
こび太「それに、殴ったりしたら暴行罪だか傷害罪だかで、僕が捕まっちゃうじゃないか〜!」

くらえもん「じゃあ、どうしろっていうんだい」

こび太「・・・そうだ!」

こび太、思いつく

こび太「くらえもん!」
こび太「いつもみたいに、2世紀の黒魔術で僕を助けてよ!」

くらえもん「いったい何をしろって言うんだい?」

こび太「法律のない世界にしてほしいんだ!」
こび太「そしたら、部長のやつをぶん殴ってやれるから!」

くらえもん「法律のない世界だって?」

こび太「そうだよ!そんな黒魔術ないの!?」

くらえもん「あるにはあるけど・・・やめておいた方がいいと思うよ」

こび太「いいから、くらえもん!」
こび太「早くして!」

くらえもん「仕方ないなぁ・・・」
くらえもん「危険な魔術だから、くれぐれも気をつけてね」
くらえもん「それじゃあ、呪文を唱えるよ」
くらえもん「レーナクナ、ツリーホ!

法律が消滅した世界

こび太「これで世界から法律がなくなったの?」
こび太「何も変わったように感じないけど・・・」

くらえもん「すべての法律がなくなったはずだよ」

こび太「よーし、明日はパワハラ部長をぶん殴ってやるぞ〜!」

翌日、夕方

こび太「うわぁ〜ん!」
こび太「くらえも〜ん!」

くらえもん「どうしたんだい、こび太くん?」
くらえもん「パワハラ部長を殴ってやるんじゃなかったのかい?」

こび太「むしろ、返り討ちにされてボコボコにされたよ〜!」

くらえもん「そうか、法律がなくなったからね」
くらえもん「向こうだって容赦なく暴力をふるってくるんだね」

こび太「それどころか、世の中が無法地帯と化してるよ〜!」

くらえもん「じっさい、無法だからね」

こび太「元に戻してよ、くらえもん!」

くらえもん「・・・実は・・・」
くらえもん「元に戻す魔術は、ないんだ・・・」

こび太「そ、そんなぁ!?」
こび太「明日から、どうしよう・・・」

またその翌日、夕方

こび太「ただいま〜!」
こび太「ふふふ・・・ねぇ、聞いてよ!くらえもん!」

くらえもん「なんだか嬉しそうだね」
くらえもん「世の中が無法地帯と化したっていうのに」
くらえもん「何かいいことでもあったのかい?」

こび太「実はね?」
こび太「昨日は会社も無法状態だったんだけど」
こび太「だんだんと秩序が生まれ始めたんだ!」

くらえもん「へぇ〜、どんなふうに?」

こび太「えっとね───」

【回想シーン】会社での様子

山田「なぁ、こび太!佐藤!」
山田「ちょっと集まってくれよ」

佐藤「なんだよ」

こび太「どうしたの?」

山田「最近、世の中が無法地帯になっちまっただろ?」

佐藤「ああ、そうだな」

こび太「犯罪が急増してて、最悪だよね」
こび太「(僕のせいだけど)」

山田「だからさぁ、この3人の中だけは」
山田「盗みも暴力も無しってことにしないか?」
山田「そういう、取り決めをしたいんだ」

佐藤「おー、いいぜ」
佐藤「でも、もしやっちまったらどうするんだよ」
佐藤「例えば、こび太が山田のものを盗んだりしたらさ」
佐藤「法律や司法という抑止力もないんだぜ?」

山田「うーん、こび太が俺のものを盗んだら、かぁ」
山田「そんときは佐藤、お前がこび太に罰を与えてくれよ」
山田「何か事件が起こったら、第三者が罰を与えることにしようぜ」
山田「そうしたら、犯罪行為に対する抑止力になるだろ?」

佐藤「そうだな」
佐藤「さっそく今日からやっていこうぜ!」

こび太「うん!」

ナイスアイディア?

こび太「───ってことがあったんだよ!」
こび太「へへ、僕らって頭いいだろ?」

くらえもん「本当に愚かだね」

こび太「えっ!?」
こび太「なんでだよ」

くらえもん「それって、もう法律みたいなものじゃないか」
くらえもん「3人で小さな国を作って、ルールを作って」
くらえもん「それが破られないように、罰を定めて」

こび太「そう言われてみると、確かに・・・」

くらえもん「まったくバカバカしいよ」
くらえもん「僕の魔術で法律をなくさせて」
くらえもん「次の日には困り果てて、元に戻せと頼んできて」
くらえもん「そして、法律を再発明して悦に入って」
くらえもん「そんなことなら、最初から無くさなきゃよかったんだよ」

こび太「うん、その通りだね」
こび太「ごめんよ、くらえもん」

くらえもん「どこの国にも法律があるだろ?」
くらえもん「未開発地域の小さな村にだって『掟』みたいなものがある」
くらえもん「それは、人間の心が法を求めるからだよ」

こび太「そうかぁ」
こび太「別々の場所で発展した文化なのに、どこの国にも法があるってことは」
こび太「人の心が求めたってことなのかもね」

くらえもん「法だけじゃない」
くらえもん「お金だって、宗教だって」
くらえもん「必要だからこそ、どこの国にも生まれたんだと思うよ」
くらえもん「だから、適当な思いつきで壊していいものじゃないんだよ」

こび太「わかったよ、くらえもん」
こび太「これに懲りて、世界に対して非可逆的な変更を及ぼす行為は自重するよ・・・」

まとめ

  • 法律がなくなったら、無法地帯になった(小泉進次郎構文)

  • なんだかんだで、また法律みたいなのが生まれた

〜おしまい〜


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?