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忘却し忘却されてゆくばかりの人生

苦手な事は数多あるが、その1つが「人の顔と名前を覚える事」だ。

よく分からないけど多分そういう事を司る脳のどこかが弱いんだろう。結構昔からその傾向にあった。
高校1年の時、夏休み明けに久し振りに顔を合わせたクラスメイトの女の子の名前が咄嗟に思い出せずに冷や汗をかいた。幸いその子とはめちゃくちゃ仲が良かった訳ではないので、名前を呼ぶような場面は無く、そうこうしている内に思い出して密かに胸を撫で下ろした。

大人になってもそんな調子で、新しいバイト先に行く度に苦心するのは先ず職場の人の顔と名前を一致させる事だった。
小売の仕事の時はそもそも人数自体が少なく直ぐ覚えられたが、製造系の職場は小さい会社でもそれなりに人数が居るので顔と名前を覚えるのに必死だった。

出産を機に仕事を辞めると新たに覚えなければならない場面は無くなったが、今度は今まで関わった人たちの名前がどんどん記憶から抜け落ちていっている事に気付いて愕然とする事がしょっちゅうある。
顔はまだはっきりと覚えているのに、会話した内容は覚えているのに、まるで墨で塗ったように、モザイクを掛けたように、その人の名前だけが思い出せない。
何年も経ち関わる事が無くなれば当然と言えば当然だし他の人がどの程度覚えているかは知らないが、あんなに必死で覚えた名前をそんなに完璧に忘れるかね?と自分に思う。

そして同時に、そうやって流れるような生き方を自分がしているんだなぁと少し悲しくもなる。自業自得なので仕方の無い事だけれど。職場を辞めても関係を持てる程のコミュニケーション能力や積極性が自分に無い事も、よく分かっているし、別に知り合いや友達が多ければ多いほどいいと思っている訳ではけしてないのだけど。
それに私の性格や特性云々を抜きにしても、距離や時間は確実に人を疎遠にする、とも思っている。

どんどん名前を忘れていく一方、時々「あの人元気かな」と一緒に働いていた人の事を思い出す事もある。きっと向こうは私の事など思い出しもしないだろうけど(なんて考えてる時点で自意識過剰なのだけど)、優しくしてくれた人、良くしてくれた人は、例え二度と会う事は無くても幸せでいて欲しいな、と思う。

そしてまた、そうやって流れるような生き方の中でもずっと仲良くしてくれる友達や関わってくれる人達の事を大事にしなければ、とも思う。

余談だけど、学校の同級生の名前って直近になればなるほど覚えてないのって私だけだろうか…?
小学校、中学校の同級生は今でもほぼ全員覚えてるのに、高校や大学の人は思い出せる人の方が少ない。これは関係性の問題かもしれないけど。

ちなみに旦那は今でも小学校の各学年の時のクラスメイトを出席番号順で思い出せるらしい。
…正直、ちょっと気持ち悪い。

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