キリンは脚が長い
昔からよく絵を描いていた。
はじめは自由帳、やがてペンタブを購入し今ではiPadでイラストを描いている。ただ「イラストが得意」とか「描くのが好き」とかそんなことは思っておらず、物心つく頃から当たり前のように描いていた。これは多分姉の影響が大きい。食事や睡眠ほどではないが、「ハンバーグを食べたくなる」「服を買いたい」くらいのなんでもない欲求のなかに「絵を描きたくなる」というのが存在している。
前述したが絵が得意なわけではない。特技を聞かれてもイラストは出てこないかなと思うし、趣味を聞かれてもイラストではない。もちろん仕事になんてできるはずもない。なんで絵を描き続けているのだろう。
絵を描いているとき、ほとんど何も考えていない。どんな構図にするかもどんな配色にするかも考えずただペンを走らせているように思う。自分が気持ちよくなるように線を引くだけの作業のような感じ。これを言語化するのは難しいが、例えるならテトリスとかは近い。隙間が空いていると気持ち悪いし綺麗に埋まると気持ちいい。あるべき場所にあるべき線を引くと気持ちがいい。これをひたすらやっている。
続けている理由は特にないが、続けるようになったきっかけはあったかもしれない。子供の頃に褒められたことだと思う。描いたのはキリンだった。小学生低学年、キリンを書けば首が長くツノがあり、まだら模様に黄色い身体。大体そんな感じになる。が、実際のキリンは首よりもむしろ脚が長く、ツノの先は丸くないし短い。まだらのような模様はどちらかというと黄色の網模様が浮かび上がるように整頓されているし、身体も別にそこまで黄色くはない。これを理解するのが周りよりもすこしだけ早かった。それを褒められたことが絵を続けるようになったきっかけだと思う。
大人になると自分よりも絵が上手い人なんて無限に居ることに気づくので少しづつ特技と呼べなくなってしまった。しかし、それでもまだ続いている。ほとんど「癖」みたいになっている。こんな癖ならいくらでもあってほしい。そんな希望は無視されるように「前髪を触る」みたいなどうでもいい癖ばかりが残っていくところが、いかにも「人間」って感じだ。愚か愚か。