【江談抄】4-107 都府楼は纔かに瓦の色を看る

【原文】
都府楼は纔かに瓦の色を看る 
観音寺はただ鐘の声を聴くのみ
             菅家

この詩は、鎮府における「門を出でず」の胸句なり。その時、儒者云はく、「この詩は文集の『香炉峰の雪は簾を撥げて看る』の句にはまさざまに作らる」と云々。

【現代語訳】
(左遷の身の私は官舎の門を出ることもなく)太宰府の都府楼はわずかに瓦の色を看るだけで、(その近所の)観音寺といえば、ただ鐘の音を聞くばかりである。 菅原道真

この詩は、太宰府で道真公がおつくりになった「門を出でず」という七言律詩の第二聯(れん)である。当時の儒学者が言うには、「この詩は(白居易の)白氏文集の『香爐峰の雪はすだれをはね上げて眺める(のが風情がある)』の句よりもすぐれているほどに作られている」のだとか。

【注】
・太宰府に左遷された道真は、都府楼があった太宰府政庁から1kmほど南にある官舎「南館」(現在の榎社境内)に住んでいたようです。
・『香炉峰の雪は簾を撥(かか)げて看る』は、枕草子で中宮定子と清少納言のやりとりの中に出てくることでも有名です。

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