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キャリア・チェンジ


 ◆気配り

 エヴァンは外を歩く時、一心に前方を見て、ぐいぐいと前進する。これが室内になると、歩きながらしきりに私を振り返る。毎日のことなので、気にはしていなかった。
 この春、盲導犬チャリティの詩吟リサイタルが徳島市内で開かれた。そこで、エヴァンが私と歩く様子が愛らしいと、話題になった。どうやら、エヴァンの歩き方に特徴があるようだ。

 朝食が終わると、ふだんは治療院で過ごす。移動する時の様子が、まるで「こっちだよ」と声かけしてくれているみたいなのである。夕食やトイレ、外出などで治療院から出てくる時も同じ。やはり「こっちだよ」と、目的の方向に先導する。こんな気配りを、どこで覚えたのだろう。

 ◆盲導犬への険しき道

 エヴァンは2018年5月25日、大阪府南河内郡赤坂千早村で生まれた。ゴールデン・レトリバーとラブラドール・レトリバーのミックス。訓練士によれば、ラブラドールの血が四分の三らしい。長毛種のゴールデンと違って、毛は短く、「ほぼラブ」と見てよい。
 生まれて程なく、大阪市内のパピーウォーカーに預けられた。家族の温かい愛情に包まれて、トイレなどの基本をしつけられ、一年後、訓練所に帰還した。ここで、訓練士から一年間みっちりトレーニングを受け、2020年6月、我が家にやってきた。

 エヴァンは六頭きょうだいである。うち四頭が盲導犬として活躍しており、弟が一頭、同じ徳島県内に暮らしている。

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