「好きなことを諦めたくない」公務員でなく「山仕事」を選択した塩谷さんインタビュー
株式会社山屋は、山仕事全般を行う会社です。今年の1月に山屋の代表である秋本真宏さんが「365日山に登って働きたい」という思いを持って設立しました。
山屋が行う山仕事には、予測のつかない自然の中でも信頼できるチームメンバーが欠かせません。今回は、山屋の設立前から代表・秋本真宏さんと一緒に仕事をしている塩谷晃司さん(27)を山屋の広報担当がインタビューしています。塩谷さんがなぜ山屋と一緒に働いているのか、そして山仕事への思いを知ることができました。
山の仕事がしたかった
ー塩谷さんは山屋と一緒にどのような仕事をされているのでしょうか?
荷物を持って山を歩く「歩荷(ぼっか)」の仕事をよくしています。テレビのロケの荷物や資材を運ぶことが多いです。あとは資格を持っているのでツアーガイドや地質や生物の調査をしています。
ー力仕事が多いのですね。今は個人事業主として働かれているのですよね?
はい、個人事業主です。山仕事は山屋以外からもいただくことがあります。
ー以前から山で働いていたのですか?
大学卒業する最後の年から山小屋で2年間働いていました。ヒマラヤに登ることをきっかけに山小屋を辞めて、今は山仕事全般をしています。
ー山小屋でも働いていたんですね。山仕事以外は考えていなかったのですか?
実は、公務員になろうと思っていた時期もありました。山小屋で働くのを辞めたのは、プライベートで山を登る時間が取れなかったというのもあるんです。山小屋で働くためにはずっと同じ山にいなくてはいけないので、自分の技術を高めるためのトレーニングができなくて。
それだったら平日普通の会社で働いて、休みの日に山に登るのがよいのではないかと思ったんです。で、公務員だったら土日は休めるのでいいのではないかと考えていました。
ー公務員を目指していたのですね!でも塩谷さんは結局山仕事をすることになりますよね。それってなぜなのでしょうか?
どうしても引っかかる部分があったんです。プライベートで山に登るのがもちろん好きだったのですが、働く場所も山にしたかったんです。そう考えている時期に現在山屋の代表をしている秋本さんに声をかけてもらって、山小屋で住み込みで働くのではなく全国の山を移動して山仕事をして1年間過ごしてみました。
ープライベートも仕事も山が良かったのですね。山仕事をしてみていかがでしたか?
山小屋を辞めた最初の1年間、意外と忙しかったんです。そこで、「山仕事だけでも生活できるのかも」と思い始めました。
ヒマラヤに登るために大学も休学
ー塩谷さんはいつから山が好きなのですか?
小学生の頃からボーイスカウトをやっていて自然には慣れ親しんでいました。山を本当に好きになったのはボーイスカウトのイベントで山の上で初日の出を見たときです。朝日が浮かび上がってくる瞬間感動して、「もっと自分も山登りしたい」と思ったんです。
ー小学生の時から!そこからずっと山登りをされてきたのですか?
はい。群馬県高崎市に住んでいたのですが、高校に上がると同時に長野県松本市に引っ越しして山岳部に所属しました。大学も山岳部が有名な信州大学に進んで、厳しい山に挑戦していきました。ペルーに1回、ヒマラヤには2回行っています。大学時代、ヒマラヤにはに登るために休学していたこともあります。
山の概念が広がった山屋での仕事
ー塩谷さんは本当に山が好きなのですね。山屋の代表・秋本さんとの出会いはいつなのですか?
信州大学に通っていたときです。自分が大学1年生、秋本さんが大学4年生でした。大学の授業で簡単な沢登りをすることになっており、そのサポートで自分が付いていったのが初めての出会いです。
ー授業で沢登り...!さすが信州大学ですね。
はい。大学での関わりはそれくらいだったのですが、自分が山小屋を辞めてヒマラヤ遠征から返ってきたときに秋本さんに声をかけてもらいました。久しぶりに会った秋本さんがとても生き生きとされていて憧れたのを覚えています。
ー山屋と一緒に働いていてよかったと感じることはありますか?
秋本さんの指示が的確で不安にならないのが良いです。個人事業主なので働く条件とかも気になるのですが、そこもしっかりしていて。仕事がしやすくて信頼できます。
ー確かに働く環境は大切ですよね。山屋と働いて変わったことはありますか?
山の概念が広がりました。今までは高い山に挑戦することが登山だと思っていたのですが、全国の大小様々な山を知ることで、難しさや厳しさを求めるだけが登山ではないと考えるようになったのです。
街と密接に繋がっている里山も、色々な自然が絡み合って山になっているのだと改めて気が付きました。
ーこれからどのように山仕事をしていきたいですか?
仕事で登る山もプライベートで登る山もどちらも大切に、両立していきたいです。仕事のウェイトが増えていく中でも自分の実力をあげていく登山も諦めたくないと考えています。また、仕事も1つの業務に絞らず色んなことをやって幅を広げていきたいです。プライベートの登山の中で得たクライミング技術が仕事に活かせたり、山の中で教えてもらった植物をガイドできるようになったりして。仕事で登る山とプライベートで登る山の知識が繋がっていくのが楽しいので、これからも山で毎日を充実させていきたいです。
※記事内に挿入している写真は塩谷さんが実際に撮影したものです。