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年金は大丈夫でしょうか

必ずしも若い方ばかりとは限りませんが、年金が破綻するから年金保険料を納めない人や、60歳からすぐもらうのだ主張する人がいらしゃいます。このような人に説明しても、なかなかわかってもらえないのは、年金制度が難しいためかもしれません。

年金積立金の運用成績が好調なので、最近はあまり耳にしなくなりましたが、運用で損失が出ると年金が破綻すると騒ぐ人もいらっしゃいます。年金積立金はGPIF(年金積立金独立行政法人)が、長期分散投資をしており、四半期ごとの成績は、そんなに重要ではありません。

強いて言えば、年金は賃金上昇率に基づいて引上げられるので、賃金上昇率を上回る利益率であればよいとも言えます。最近のように賃金上昇率がマイナスであれば、プラスであればよいこととなります。年金財政検証での年金積立金の運用利回りの予想数字が、誤解の元と思わますが、これは、あまり意味がありません。

そもそも、年金積立金から年金を支払っているわけではなく、年金保険料と税金で賄っています。年金は保険なのだから、年金保険料を滞納する人には、年金を支給しません。滞納する人が多くなれば、年金の支払額は少なくなるだけであり、年金財政は破綻しません。しかし、年金滞納者が生活保護になると、そのために多くの税金が費やされることにはなります。

現役世代の年金保険料と税金で年金を賄うことを賦課方式と言います。自ら納めた年金保険料の積立金から支払う積立方式ではありません。積立方式は、その時点の経済状況や物価に積立金が大きく影響を受けるため、諸外国でも賦課方式が採用されています。

なお、全国民に一定額の最低年金を支払う制度や、ベーシックインカムの議論もありますが、現在の日本では給与所得に比べて、自営業者の事業所得の把握や、資産所得の把握が十分でないので、不公平を拡大させることとなるとの懸念が大きいとされています。

保険料を滞納すると、その分の国庫負担金(税金)が支払われませんので、その人は得られるべき年金を受給できないという不利益を受けることとなります。万一、納付できない場合は、免除や猶予の制度を利用することが大事です。

また、重要なことは、年金の支給額は毎年変わるということです。年金財政の安定化のため、給付水準を固定していません。マクロ経済スライドという難しい制度があります。これにより、将来世代の負担が重くならないようにしています。

まず、最初の段階で、賃金上昇率や、物価上昇率により、年金額が変動します。新規裁定者は賃金上昇率、既裁定者は物価上昇率という原則があるのですが、令和3年度の見直しからは、賃金上昇率が物価上昇率より低い場合は、賃金上昇率が適用となります。いくら物価が上昇しても、賃金が上昇しないと、年金が増えません。令和4年度の場合、物価上昇率はマイナス0.2%、賃金上昇率はマイナス0.2%のため、0.4%のマイナス改定となります。

次の段階で、平均余命の伸び率や、被保険者の減少率が加味されます。特に平均余命率は0.3%と定めているので、必ずマイナス要因となります。被保険者数はパートの社会保険加入が進んでいるので、これは今のところプラスとなっています。令和4年度の場合、被保険者数が0.1%の増加なので、マイナス0.2%となりました。

最初の段階の調整でマイナス改定となる場合は、次の段階の調整でのマイナスは翌年に繰り越されることとなり、令和4年度は適用されないこととなります。その結果、令和4年度は0.4%のマイナス改定となりました。

マクロ経済スライドの仕組みから、賃金が上昇しないと年金が増えないうえ、平均余命の伸びなどからマイナスとなりやすいことから、年金が徐々に減っていくことに注目してしまうと、若い方にも誤ったメッセージとして伝わってしまう場合があります。本当のところは、年金保険料を上げることを避け、将来世代の負担が重くならないようにする仕組みなのです。

年金は終身で受給できるものであり、経済変動により改定されるという利点があることを理解してほしいところです。年金の不足分を自ら備えることは、とても重要なことですが、まずは年金を基本にして、そのうえ何をするかが大事と思われます。


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