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'96 atクラハ[20210711]

※clubhouseでの発表用メモを加筆修正したモノです。音声の文字起こしではありません。

鑑賞日:2019(IMW2019)、202106(JAIHO) 
製作 2018年 タミル
監督 C.プレームクマール
出演 ヴィジャイ・セードゥパティ、トリシャー・クリシュナン

 切ない恋を経験したすべての人、これから経験する全ての人に送る、心をえぐる初恋の物語です。

こちらは2019年のIMWで公開された作品、これを見た後は切なさに胸が引き裂かれそうになりました。トリビア解説はIMWさんのツイッターで行われています。ネタバレありませんので是非見てください。

https://twitter.com/i/events/1168469859794972677

★前半あらすじ(ネタバレちょいあり)

1996年に高校を卒業したクラスメートが20年ぶりに集う同窓会。旅行写真家のラームは、初恋の女性ジャーナキに再会して心が揺れる。宵の口から夜明けまでのチェンナイの街を舞台にした2人の対話。(IMW公式より)
https://imwjapan.com/2019/index.html

 カメラマンのラームはひょんなことから10年生(15歳)のころに住んでいた町に寄っていた。思い出の橋、何も変わっていない懐かしい校舎。嬉しさあまり旧友ムラリに連絡をとり、それがきっかけで20年ぶりの同窓会がひらかれることになった。そして三か月後に開かれた同窓会は期待以上に大盛況で続々とクラスメートが集まってきた。海外在住で出席できない旧友からはビデオメッセージが届き、誰もが久しぶりの再会に喜んでいた。

 この同窓会でラームは思わぬ再会をすることになる。初恋の人ジャーヌだった。彼女は結婚して今はシンガポールに住んでおり来れるはずがなかったのだ。
 一方ジャーヌはラーム以上に驚く。彼はある日に忽然と消え、それっきり生死も分からない状態だったからだ。

 二人にとっては22年ぶりの再会となった。

 ラームとジャーヌは小さなころからの幼馴染でラームはずっとジャーヌのことが大好きだった。それは15歳になっても変わらず、彼の眼にはジャーヌしか映っていない。同じ学校のクラスメートとしてまた一番の仲良しとしていつも一緒にいた。ある日、ジャーヌは熱を出して数日間学校を休んでしまう。心配で自宅にお見舞いに行こうにも彼は彼女の住まいを知らなかった。ジャーヌの姿を見ないまま週末を過ごすことになり何も手につかないラーム。そのさらに数日後、体調が戻り登校してきたジャーヌの姿をみて、彼は急に今までのように気軽に声をかけられなくなってしまう。恋だった。

 夏休み前の授業最後の日、友人達は気を利かせて彼らを二人だけにしてくれた。しかし学校からの帰り道は短く、あっという間にそれぞれの家の方向へ別れる橋へ着いてしまう。このままではほとんど話をしないで長い夏休みを迎えることになってしまう…いったんそれぞれの方向に帰りかけた二人だが振り返ると二人ともまだ橋の上に。ジャーヌが戻ってきて、悪戯っぽい笑顔を見せながら自分が持っていたペンのキャプを外し、彼に向ってそれを勢いよく振りインクをふりかけた。ラームの制服のシャツには点々とインクの染みがつき、嬉しそうなラームの顔にもインクが付いている。ジャーヌはそれを見ながら「私のこと忘れないでね」とラームに言った。

 それっきりジャーヌはラームに会っていない。
 それが15歳、22年前のこと。

★ここから本気のネタバレand感想領域

とにかくピュア!な恋:特にラーム!!ジャーヌが好きで「ジャーヌしか見えてない」と自ら説明してしまうくらい好きで。彼女に触られただけで失神してしまうくらい好きで、好きという気持ちも隠していない。けど好きすぎて全然話ができない!好きと一番大事なことを伝えたいけど伝えられない!ジャーヌが世界のすべてだったラーム。実はオープニングで37歳のラームが砂浜にする落書きも「ジャーヌとラーム」と二人の名前…ピュア、ピュアすぎる!15歳のラームも37歳のラームもほんとに全く何も変わっていません。37歳になってもジャーヌのを前にするとろくに口もきけないのです。

ジャーヌはその後:ラームはなぜ自分が姿を消したのか、そしてそのあとどう過ごしたかを分かっていますから、自分を納得させることもできます。でもジャーヌは何も知りません。何も分からないままラームが忽然と消えたことを受け入れないといけなかったわけです。結局彼女は家の事情もあり親のすすめる見合い相手と結婚をします。できるだけ婚期を延ばしたくて大学にも通いましたがラームが迎えに来ることはありません。どこにこにいるのか生きているのか死んでいるのかも分からない人を想って結婚を断るのは無理でした。ジャーヌもラームと一生を共にすると思っていたのは彼女の台詞で語られます。

「ヤムナー川にて」:ラームがジャーヌに唄ってほしいと何度もリクエストするこの歌はIMWさんの解説より下記の通りです。

映画『ダラパティ』挿入歌。『ダラパティ』はマニラトナム監督の1991年の作品。ヒンドゥー教叙事詩『マハーバーラタ』の悲運の英雄カルナの物語を現代に翻案したもの。ラジニカーント演じる主人公がショーバナ演じるヒロインとの仲を引き裂かれ、彼女は別の男に嫁がされるという悲恋のモチーフも含みます。挿入歌「ヤムナー川にて」クリシュナ神に恋焦がれる牛飼いの妻ラーダーの心を歌っています。(IMWさんのツイッターより抜粋)
https://twitter.com/i/events/1168469859794972677

 インド神話においてクリシュナとラーダーは結婚はしてはいないけれども理想の恋人同士ということになっています(ラーダー)。そしてこの歌の、ラーダーがクリシュナを想って探し求める歌詞は他の人と結婚をしてもなおラームを忘れていなかったジャーヌの気持ちに重なります。

 またラームもジャーヌに身を捧げます。ジャーヌに見つからないように隠れながら彼女を助け続けていたラーム、自分が引っ越した後もときどきこっそり戻ってきて、ジャーヌか学校でどのように過ごしていたか、大学に行って何を学んでいたか、初めてサリーを着たのはいつで何色だったか…そして彼女の結婚式に場にもいました。そこまでしても彼が姿を見せられなかったのは悲しいすれ違いがあったためです。
 ラームはジャーヌだけを想い37歳になった今でも独身を貫いています。このように一人の女性に自分の一生をすべてを捧げるというのはインドの男性の恋によく描かれる姿です(ダヌシュ主演のラーンジャナーなどもそうですね)。日本人から見ると初恋に捧げる切ない大人の恋物語に見えますが、インドではそれに加えて神話の神様たちの姿や自分たちの中にある物語を彷彿とさせる側面も持っているのではと思います。

特に好きなシーン:ジャーヌとラームが夫婦だと誤解したカメラ教室の生徒に、ジャーヌが二人の馴れ初めを語るところです。彼女が語る馴れ初めは事実とは違うけれども本当はこうありたかったという、これが彼女にとって真実なのかも。

★Songs

歌って踊る系の作品ではありません。ただ美しいテーマ曲、挿入歌、その歌詞で二人の切ない思いがあふれ出てきます。また劇中でジャーヌが歌うのはS.ジャーナキというインドで有名な歌手の懐かしい歌ばかり。おそらくそれもインドの人の心を強く揺さぶるのでしょう。

♪テーマ曲、映像もまた雄大で美しい。


♪忽然と消えたラーム、残されたジャーヌ。


♪再会したのに…


♪22年間を取り戻すのか



♪切ない思いが募る


♪ジャーヌが歌う「ヤムナー川にて」、慌てふためくラームがおかしいやら切ないやら


♪こちらが本家



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