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カーラ 黒い砦の闘い atクラハ[20210503]

※clubhouseでの発表内容をメモより起こしたモノです。音声の文字起こしではありません。

インド公開 2018年8月 日本ではIMW2019で公開
監督 パー・ランジット
出演 ラジニカーント、ナーナー・パーテーカル、フマー・クレーシー、イーシュワリ・ラーオ、サムドラカニ

 舞台は現代のムンバイ最大スラム”ダラヴィ”。ムンバイ市はスラムを一掃して清潔な新しい街をつくるという「ピュア・ムンバイ計画」を進めようとしていました。一方で先祖代々スラムに住む人々は、自分たちが作り上げてきた街が市によって二束三文で買いたたかれて、さらには追い出されるという危機感からピュア・ムンバイ計画に抵抗していました。そのスラムのリーダーがカーラ(ラジニカーント)です。これは政治の権力者と被支配者層との戦いの映画、ここでは3つのポイントに絞って紹介します。

ポイント1:カーラの息子たち
 カーラには4人の息子がおりそのうちの二人が重要な役割を果たします。一人目は長男セルヴァム、カーラの妻セルヴィから名づけられた愛される息子です。武闘派のセルヴァムはカーラの頼れる右腕として育ち、何度もカーラのピンチを救います。そしてもう一人は次男レーニン、理論派でとても純粋な青年です。このレーニンというインドでは耳慣れない名前はあのウラジミール・レーニン、革命家になってほしいという父カーラの願いが込められ名前でした。レーニンは期待通りスラム改革運動のリーダーとして活動します。ただあまりに純粋な人だったのでムンバイ市の掲げるピュア・ムンバイ計画の裏を疑うことなく賛同し市へ協力を申し出ます。その次男の存在を知った政治家ハリは当然レーニンを利用します。これによりカーラの家族の中にも市vsスラムという対立構造が生まれます。

ポイント2:黒幕の政治家ハリ
 映画の前半はハリの部下ヴィシュヌがいますがこれは実際はただの小物でしたのでカーラとセルヴァムに文字通り片付けられてしまいます。そこに満を持して黒幕ハリが登場。役作りとはいえ、とにかく悪どい顔をしており、腹黒政治家であることが一目瞭然です。カーラとハリは実は因縁があり50年来の知り合いなのですが、この期に及んで皆の前で猿芝居をうつ白々しさ…カーラが「はじめまして、ハリさん」と言えばハリも「会えて嬉しいよ、カーラ」と応じますが、ハリはカーラの妻が出す水も受け取りません。ハリは自分をラーマーヤナのラーマ王子になぞらえ『カーラは魔王ラーヴァナだから自分がラーヴァナを殺さなければ!』と高笑いをしながら宣言します。その顔はむしろお前がラーヴァナだよな、と。

ポイント3:白・黒・青の色の持つ意味
 インドでは色に意味が込められておりそれを知っていることがこの映画を理解するうえで重要なポイントになります。
…上位カースト、白い肌、清廉潔白や正義などの意味を持ちますがこの映画では「支配者」の色です。政治家はみなすべて白いシャツに白いパンツを身に着けており、乗る車も真っ白、特にこの映画では家屋敷や家具に至ってもすべて真っ白に徹底されています。
…下位カースト、アウトカーストの色。黒い肌の色に象徴される被支配者層の色です。カーラはこの黒に誇りをもっており彼は大事な時は常に黒いシャツ、黒いドーティを身に着けています。そしてパーティでは黒のクルタに真っ青なシャツを合わせています。
…『アンベードカル・ブルー』アウトカーストの人々”ダリット”開放のイメージカラーです。最後の市とスラムとの闘いで青い粉が画面いっぱいに広がり「ジャイ・ビーム!」と叫ぶシーンがあります。美しく象徴的なシーンです。

この映画は政治メッセージをふんだんに盛り込みながら、同時に期待を超えるラジニ様ことラジニカーント歌舞伎を存分に楽しめるエンタメとしても最高の作品になっています。

★発表後
日本とインドの架け橋のSAVE INDIAイベントでの発表でしたので、たくさんの方に聞いていただきまたスピーカーにも挙がっていただきました(^^)。タンジさん、アンジャリさん、Terumiさんありがとうございました♪現地での公開日の朝は爆竹で大騒ぎだったとのこと!(ラジニ様が政界入りを発表した後の第1作目だったので、期待がふくらんでさらに盛り上がったのかもしれませんね~)そしてドーティ&ルンギのチラリズムは大事な萌えポイントなことが共有できました(ほんとこれ大事、力説)。そしてこの作品で忘れていけないのは美しい音楽。スラムで縦横無尽に歌われる力強いラップや切ない大人の恋。インド映画では男性俳優がどんな年齢でもつねにヒロインが20代というやや怪しい組み合わせになり勝ちですが、この作品はお互いの若いころの思い出を振り返る切ない大人の恋…これも魅力なのです。そしてこれが本筋にもがっちり絡むのですね、よき。

♪これが大人の恋。戦うときもそして恋にも雨が降る映画だった。


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