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NGK

鑑賞日 2021/4/25
於 アップリンク渋谷
出演 スーリヤ、サーイ・パッラヴィ、ラクルプリートシン

 一介の市民(この作品の場合、農家をやっているから農民?)が政治でのし上がる系の政治裏世界を描いたドラマ、ということでしょうか。主人公のスーリヤさんは他の作品でもみたことあるけど(これとか)、この映画で”おお~ほんとに演技派なんだ~!”と思いました。

★前半あらすじちょっとネタバレ

 NGKことナンダ・ゴーパーラン・クマランは有機農法で農業の改革を行おうと思っている。妻のギータはそんな夫を「土の匂いがする」と愛していた。同居する両親ともうまく行っており、クマランの有機農法の先行きの心配はあれど仲の良い家族だった。クマランは政治家のもとに有機農法を続けるための支援を求めに行くが、なかなかうまくいかない。しかしクマランが地元で人望厚い人物だという評価を聞いた議員はクマランを助け、その見返りとして自分の勢力を拡大するために地元から500人の支持者を集めてこいと求める。断れないと感じたクマランは議員の要望に従い、そのまま党員として党に所属することになった。

 党員となってからクマランは党内部の人間関係をいち早く察知し、議員のご機嫌伺いをしながら信頼を得て着実に党内の立場をあげていく。突然頭角を現したクマランは州首相に目をつけられ、そこで秘書官ヴァナーティと出会う。ヴァナーティはその実力に惚れ込みまた女性としても彼に惹かれていく。嫉妬うずまく政界ではクマランをよく思わないものも多く、彼には様々なピンチが訪れる。そのピンチを救ったのは彼の政界入りを後押しした親友パンディアンの死だった。親友の死を乗り越え、クマランは政治の世界で闘っていくことを決意する。

★ここから本気のネタバレand感想領域

 とか、いい感じであらすじをまとめてみたけど全然そんなかっこよくないのがこの映画のいいところ。両親、妻からは政治入りを猛反対されるけれども結局政治界に乗り込んでいくクマラン、妻がいるのにのし上がるためにはヴァナーティとは関係を持つ、そして親友の死を乗り越えというよりむしろ親友の死を利用し、という感じで。まあ親友は本当にいいヤツで、クマランのことを親身になって考えているんだけど…俺を殺して俺の死を利用しろ!ってクマランに自分を殺させるんだよね…でクマランはやっちゃう。マジかよ!!って思ってたけどやっちゃうし、しかもそこがピークじゃなくて展開がさらに激しくなっていく。

 また政治家たちもめちゃくちゃ悪い。表向きは勢力争いをしているけど裏では手を取り合っており、邪魔な奴は追い落とそうと画策する。部下や下とみなした人間には自分への誓約をもとめる。相手の尊厳を踏みにじることを敢えてやる。日本の政治家さんは悪気なくそういうことしそうだけど(褒めてない)、インドもしくはこの映画の政治家さんは悪意をもってやっている(褒めてる)。

 そうやって最初は誠実な顔をしていたクマランが政治の裏を知り、のしあがるためにだんだん悪い政治家の顔になっていくのがよいんですよね。議員へのごますり猿芝居もサル度が絶妙。トイレで襲われた時のスーリヤ無双はとても見応えがあったし、暴動がおこる場での立派な演説もどこか嘘くさい。誠実な青年が現実を知り、そのなかでだんだん悪に取り込まれていき、やがて悪の頂点に立つというクラシックな政治劇かなと思う。

 ただドラマや映画ではたとえ悪の頂点にたってもやはり心に誠意が残っていて最期に一つだけいいことをしたり、あるいは制裁を受けてやっと良心の呵責から解放されるというオチがありそうなんだけど、クマランの最後のシーンの表情は微妙だった。それを見る妻のギータの疑いのまなざしも。彼は本物のヴィランになったのかもしれない、とそんな匂わせ。そして出演シーンは少ないけどちょいちょいキツい突っ込みをするギータの方がいい政治家になりそうなんだよな、クマランを踏み台に政治家になってほしい。

★実は…
 このnote.を書くにあたって復習のためにいろんなインド映画のブログを検索したら全然想定外の解釈があってですね…、しかもそれが正解みたいでね…思い返せば納得感もあってね…(上記のnote.はそのブログを見る前のもの)それを読んだとたんにIDEがこの映画を選んだ理由が分かりましたわよ。実はクマランは寒くなるようなサイコキャラなんですという、でもあれは1回見ただけでは無理だわ…。でもこれで妻ギータことサイちゃんがずっと冷静な目で見ているのも、最後のまなざしも納得。おそらくこれが真実かと思うと勝手にリンクのせるのは気が引けるので”NGK”+”インド映画でちょっと休憩”で検索してみてください。

スーリヤさん実はハンサム度 ★★★★★
政治劇見応え有り度 ★★★★★
サイちゃん活躍度 ★?

♪ヴァナーティとのラブラブソング、最初はこの女ナニモノ?とか思ったけど実は結構いいひとだった。


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