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ピンク atクラハ[20210418]

※clubhouseでの発表内容をメモより起こしたモノです。音声の文字起こしではありません。

インド公開 2016年9月 日本ではNetflix、Amazonプライム等で視聴可
監督 アニラダ・ロイ・チョードゥリー
主演 タープシー・パンヌー、キルティ・クルハリ、アンドレア・タリアン、アミターブ・バッチャン

 これはインドでは大きな社会問題となっている女性へのレイプ、これを取り上げた作品です。

 インドの都市部で三人の若い女性がルームシェアをして暮らしていました。それぞれ実家から独り立ちし自分の稼ぎで暮らす、これからの女性を象徴する三人です。ある晩、三人はとあるきっかけで知り合った男性たちと意気投合して飲みに行きます。しかし男性たちには下心があり、行った先の彼らのコテージでレイプされそうになります。レイプは未遂に終わりましたが、抵抗する際に部屋にあった酒瓶で顔を殴り、失明するかもしれないほどの大怪我を負わせてしまいました。レイプ未遂、そして怪我をさせてしまったというその恐ろしさに三人は逃げ帰ってきます。
 男性たちには事件が事件なだけに後ろめたさがあり公にはできません。が、一方で「女に抵抗された」「女にやられた」という男のメンツがこのままにしておくのを我慢できません。彼女達を街から追い出すためにつけ回し、再びレイプまがいの脅迫や勤務先へ猥褻画像を送りつけるなど様々な嫌がらせをします。彼女たちは意を決して警察へ訴えましたが、なんと逆に殺人未遂の罪で捕まってしまったのです。男性側の被害者は政治家の甥とその友人たちでした。彼らは立場を利用して裏から手を回し警察を買収していたのです。

 彼女らの危機にひとりの老弁護士が立ち上がります。すでに現役を退いてから随分の時間が経っており、彼自身の自分の身体も薬でようやく保っているような状態でした。また妻も入院中でいつ亡くなるか分からない看取り介護をしていました。しかし近所に住んで時折三人の様子を見ていた彼は三人の様子の変化をずっと気にしていたのです。

 裁判は彼女らには徹底的に不利に展開します。証拠は男性側に買収された証人や警察からの証言や提出品、解釈によってどうとでもとれるようなセキュリティ映像等ですが、そこに男性側の弁護士がこじつけのような解釈を並べて彼女らの罪をでっちあげていきます。”彼女らはもともと売春目的で彼らに近づいた、男性が売春に応じないと知ると今度は強制猥褻で訴えると脅した、それでも男性が応じないから怒って瓶で殴った”というような言い分です。老弁護士はそのでっちあげの証言をひとつひとつ矛盾を解きながら紐解いていきます。老弁護士がそこまでやる動機はただひとつ、本来あるべきもの『女性の人間としての尊厳』を改めて証明しないといけないという信念でした。男性側弁護士も状況証拠だけなので決定証拠にはなりません。なぜそこまでそこまで悪しざまに罪をでっちあげることができるのでしょうか。じつは彼には彼女達が売春目的で近づいたという確信があったのです。ここでまたインドという社会の現実の側面、一人の働き手に家族すべての生活がぶら下がるアンバランスな構造、雇用問題や経済格差が浮き彫りになります。

最終弁論で老弁護士は大事な言葉を繰り返します。

 「No means No.」(”ノー”は”ノー”だ)

この言わんとするところはこれまでの話で充分に想像できると思います。しかし映画本編をみるとそこに含まれる意味の重さが違ってきます。是非、本編を見てこの重さを心で感じていただきたいと思います。

★発表後
 三人の女性はプロダンサーのミナール、会社員のファラク、別の会社の会社員のアンドレアです。上記のメインはレイプ未遂の被害者ミナールを中心に説明しています。彼女はプロダンサーでありやや奔放なイメージを持たせてあたかも女性側の非があるのだ、といったものの象徴です。また売春目的の確信を与えたのはファラク、彼女は弟の手術費用を稼がなければいけないためにお金に困っていました。そして上述では触れなかったのですが、少数民族の問題についてもこの作品は取り上げています、と補足いただきました。アンドレアは少数民族の出身です。それを証言台で告げると裁判所内で少し小ばかにしたような雰囲気になる、またなぜか彼女だけが出身地を執拗に聞かれる、という細かいけれど現実をついた演出なのだということですね。

 さらに、ちょうどこのときはテルグ映画界のPOWER STARパワン・カリヤンさんによるリメイク版Vakeel Saabが公開されたばかりでした。んんん~、後半は興奮しながらこの話ばかりしていた気がするwww。Vakeel Saabについてここでも少しだけ。
 PINKは三人の女性が主役で老弁護士アミターブバッチャンが〆るという構造ですが、Vakeel Saabは明らかにパワン・カリヤン映画♡でした。テルグ映画が誇る殴る殴る&殴るの楽しい暴動映画です。なんというか前半は完全に剛腕弁護士(物理)だったので(これはほんとにPINKなんだろうか…このままロクに弁護せずにグーで殴って事件を収束させるのでは…)と不安になったほどでしたが、後半は打って変わっての法廷シーンでそれは見事でした(テルグ語+英語字幕なので雰囲気で察しているだけですがw)。パワンさんはしばらく政治活動をしており彼の主張とこの映画の主張が合っていたとのことでナルホドです。この映画自体もテルグ版の前にマラヤーラム版があり、よい作品だから何度もリメイクされたのでしょうね。なおテルグ版の男性側弁護士はゲスい演技で定評のあるプラカーシュ・ラージさん、これがまたいいんですね~w

それとnote.をつけ始めたのはこの回の時に「記録に残しては?」という提案を頂いたからです(^^)、ありがとうございました!
 

♪PINK のKaari Kaari


♪こちらはVakeel Saabの​ Maguva Maguva、こちらも美しい曲です。


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