『誰でもない女』

2012年ドイツ・ノルウエー合作 (Amazonプライムにて鑑賞)

1990年が舞台、第二次大戦当時のナチスドイツの児童福祉施設生命の泉出身の女性が主人公。戦争の混乱の中、ノルウエーの母のもとに帰り着き、夫、娘、孫と家族四代で幸せに暮らしている。1990年10月3日に東西ドイツが統一

東西統一を機に戦争被害補償の活動が再開され彼女は証人としての協力を求められます。証言に伴い過去を紐解いていくなかで、見ている側は彼女の秘密は少しずつ想像が出来てきます。もちろん戦争と国家に深く関係する秘密であり1990年当時は彼女の秘密はまだ過去のものにはなっておらず成果を求められていたはず。彼女は国家からの執拗な脅しと家族への誠実な愛との板ばさみで苦しみます。

彼女の秘密のカラクリが完全にわかるのは映画のかなり終盤。彼女は家族への愛を取りますが、逆に家族は彼女の20年間にわたる"裏切り"行為で呆然自失となってしまいます。20年は長い。多分彼女はその20年を信じたい。しかし家族は足をすくわれたような、むしろこの20年はなんだったのか。その時の夫とのヒリヒリしたやりとり、母の拒絶などが痛いほど画面からから伝わってきていたたまれせんでした。

夫の愛は素晴らしいです。彼は彼女に夢中でした。だからこそ彼女の行為は許せない。なにも信じられない。でも娘と2人で話している時は彼は娘に諭します、彼女はきみのママだよ、と。

戦争の裏側の話であり家族の絆の話でもあります。

この話自体はフィクションかもしれませんが、脚本の元となった事実があります。おそらくそれは今でもドイツとノルウエーの国家間の課題として残っているのだと思います。最後の字幕に背景がかいてあります。そして2012年でこの作品を作ったということは当時の戦争や国家に翻弄された人達がまだいる、ということです。

#映画 #誰でもない女


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