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マルコのこと90


 ゴハンも食べるようになったし、オムツも気にしていれば外せるようになった。また歩けるようになったマルコは今日の夜は久しぶりの踊り場散歩だった。うちのマンションは古くかつ小さくて同じフロアには我が家を含めて3戸しかない。さらにそのうちの一戸は絵画教室なので住む人はいないし、そろそろ8年ぐらい住むけど隣人に会ったことがあるのは数えるほど。だから今日もゆっくり二人で散歩ができた。

 もう、太ったかもと勘違いすることはない。痩せた。触らなくてもわかる。触ったらもっとわかる。抱っこをすると驚くほど硬いお尻の骨を直接抱くことになる。痩せ細った背中の骨もますますごつごつとして痛いくらいだ。マルコは「抱っこはいや、歩く」と踊り場を歩いていた。階段の段差は高く踏み台は狭い。マルコが落っこちないようにと先回りしながら待っていると一段、二段と降りてくる。ニ段降りたところで首を延ばして空を見上げる。マルコの視点からは壁があって邪魔だけどいつもの場所からは3メートルばかり西にずれているので見える空が違う。空をもっとよく見たいだろと抱き上げたらまた「違う」と抗議された。自力で壁を登りたかったんだろう、というか登るつもりだったんだろうなと思った。ほんの5〜10分ほどだけどマルコは満足したのか玄関に戻る。真っ直ぐ歩くだけでも何もないところでバランスを失ってよろけてしまう。本当に細くて薄い体をただ見つめる。でも、歩けるようになってよかった。ほんとによかった。マルコは最後まで歩けそうだ。

 ここのところ、人間の気持ちのメンタルがすこしだけおかしい。今までは結局何もわからなかったから、治ることをするという判断基準をもとに行動していた。でもいまいちばん近い気持ちは、受け入れる、だと感じている。諦めるでもなく覚悟するでもなく。それらの前に最初に必要なことなんだ、きっと。ちょい気持ちがヘン。


モッチとマルコがセットの写真、ほんとにお気に入りだよ。

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