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23-24 CL決勝 ボルシアドルトムント対レアルマドリード

  ドイツの偉大な二人の選手、マルコロイスとトニクロースの両名が形は違えどそれぞれのクラブを去ることが明言されていた中でのCL決勝。
いうまでもなく見応えたっぷりな試合を振り返ります。

・配置

・レアルはチュアメニ、アラバが負傷のため欠場(ベンチには入った)
・ドルトムントは、ベンセバイニが負傷のため欠場

・前半

ドルトムント、レアル共に予想通りのスタメンと配置。
ドルトムントは、攻撃時は両ウイングが幅をとり、エムレ・ジャンが最終ラインの間に落ちビルドアップを支える。マートセン果敢にレアルディフェンスラインの裏を取る動きを見せ、縦に速い攻撃の意識をチームで共有。レアルがセットして守備をする際は、守備時はコンパクトに4-1-4-1のブロックを形成し、クロースがザビッツァーの対面でボールを受けた際はザビッツァーが当たりに行く守備体系で、ボールをサイドに誘導する。ゾーン1では、ロブパスをスイッチにハイプレスを行う姿勢を見せる。
レアルは、守備時は4-4-2でブロックを形成しゾーン1ではプレスに行きミスを誘う。攻撃時はベリンガムやバルベルデが中にポジションを取りクロースが最終ラインに落ち、カルバハルが右サイドで幅を取る。左重心ながら右サイドを効果的に使う今シーズンのレアルの攻めの基本形で前半を戦う。

持ち味を存分に活かすドルトムント

緊張間のある大一番。試合開始から10分間は両チームにシュートが生まれない静かな立ち上がりとなったが、レアルが今シーズンの特徴を活かした攻撃によりチャンスメイクを行う。10分を経過したあたりで左重心のビルドアップから右へサイドチェンジ。カルバハル、ベリンガム、バルベルデがボールに絡み、最後はバルベルデが無理気味な体勢ながらもこの試合のファーストシュートを放つ。
ドルトムントは、最終ラインのシュロッターベックとフンメルスがどちらも高精度なロングボールを蹴れることが前半で有効に働いていた。
ファーストシュートが生まれた直後、ピッチ中央付近で内側に絞ったマートセンとザビッツァー、センターバック2枚とジャンで3-2の形を作りショートパスを繋ぎレアルの足を止め、シュロッターベックからヒュルクルクの裏へロングボール。
ヒュルクルクが裏へ走ったことで相手のブロックの間にスペースができ、そのスペースをブラントが活かしシュート。ボールは枠には飛ばなかったがヒュルクルクがレアルのセンターバック2枚の間で駆け引き行い、可能性のある攻撃を引き出す。

的確にレアル守備陣の選手間を狙うドルトムント

裏抜けはハーフスペース、裏に出せそうなら積極的に狙っていく。このシンプルな狙いが効いていた。
20分には左サイドの自陣からフンメルスが持ち運び、右の大外からカルバハルの前に入ったアディエミへスルーパス。裏抜け一発で抜け出し、アディエミはクルトワとの1対1に。
アディエミはクルトワを抜こうをしたが、クルトワも必死に腕を伸ばしアディエミのボールコントロールを乱す。ドルトムントが決定機を迎えたが、レアルもクルトワの貢献により何とか先制点を与えない。
直後、レアルがダイレクトパスを繋ぎヴィニシウスが逆サイドのカルバハルへクロスを上げるが、マートセンがクリア。そのボールをマイボールにしたドルトムントがサイドを変えながらロングカウンター。
右に張っていたサンチョからハーフスペースを抜けたザビッツァーへボールが出るとここもシンプルなグラウンダーの折り返し。アディエミへは惜しくも届かなかったが、そのボールのこぼれ球を拾って自陣から持ち運ぶカマヴィンガに対してマートセンがチェックに行きボール奪取。ゴールに向かうドリブルでリュデイガーを引き出し、その背後のスペースを使ったヒュルクルクへパス。クルトワが出てくるのを周辺視野で捉えスライディングしながらのシュート。クルトワは触れなかったがボールはポストへ当たりゴールとはならず。文字通り怒涛の攻撃をみせ、試合のインテンシティを掴む。
レアルも、ヴィニシウスがリエルソンに対して質的優位を常に保ち、リエルソンを剥がしクロスをあげるも、ジャンも含めた守備陣がクロスを弾きシュートまで至らない。
その直後もアディエミがロングスプリントを活かしてカルバハルをスピードで追い抜き、ブラントからのボールを受けシュートを放つ。

ドルトムントは、センターバック2枚のパス能力の高さ、ヒュルクルクの相手の背後を取る上手さ、アディエミのスプリント能力と、自分たちの持っている特徴を最大限に発揮する。
ロングカウンターの際もレアルからのさらなるカウンターを打たれないように守備の枚数を管理し、カウンターを抑制。ディフェンスラインも、レアルはゾーン2で駆け引きをする前線の選手がいないため、あまり下げることなく前向きの守備対応が出来ていたた。

怒涛の攻撃も無得点に終わってしまったが、ドルトムントが試合の主導権を握ったまま前半が終了する。

・後半

両チームメンバー交代はないものの、前半押されていたレアルが細かい修正を行う。
今までドルトムントのライン間でポジションを取ることが多かったロドリゴをなるべく前線に張らせ、ドルトムントのディフェンスラインを下げさせて前半は使えていなかった中のスペースを使う意識を高める。
ゾーン1でのプレスは前半から継続して行うが、セットする守備の局面では4-4-2のブロックから4-5-1へブロックを変え中央の人数を増やし、前半に再三浴びた中央からの縦の速い攻撃を封じる。

サイドへのケアも含め、速攻を封じた守備配置変更が効果的に作用した。

アンチェロッティレアルの細かな修正力

この2つの修正により、ドルトムントからの速い攻撃を封じることに成功したレアル。ドルトムントはロングボールで裏を狙う回数が増えるが、4-5-1でブロックを組んだことによりサイドのケアが速くなり、前半に比べて縦の有効な攻撃が減ってしまった。
しかし、ドルトムントは前半同様に狙いを変えない。62分にはスローインでレアルのプレスを掻い潜る。一瞬戻るのが遅れたレアルの2列目が戻らないうちにリエルソンからサンチョ、ブラントと経由しアディエミがファーでフリーになったヒュルクルクへ完璧なクロス。これをクルトワがビッグセーブし、先制点を許さない。
レアルの守備変更で前半よりスローペースになった試合の中、アディエミに疲れが見え始め、前半に猛威を振るったスプリント能力が落ちるとともに徐々にレアルの攻撃が刺さり始める。
ヴィニシウスは前半からリエルソンに対して質的優位を持ち続け、ここを起点にチャンスを作る場面が増える。ヴィニシウスがリエルソンに対して仕掛けをみせるとともにベリンガムがフンメルスとシュロッターベックの間を抜ける動きを見せそこにヴィニシウスからのパス。パスは惜しくもクリアされるも、前半はほとんど見られなかったドルトムントディフェンスラインの裏をつく動きでドルトムント守備陣が後ろ向きに守備せざるを得ない状況も生まれ始める。
72分にはハーフウェイライン付近から左サイドでドリブルを開始したヴィニシウスがフンメルスを緩急を使った裏街道で躱し、高い位置から戻ってきたリエルソンをゴールライン際でボールを止めヒールで股抜きをする美技を見せコーナーキックを獲得。
直後のコーナーは弾かれるものの連続でコーナーキックを獲得。クロースがニアに正確なボールを供給し、マークを外したカルバハルが上手く合わせてゴールへ流し込んだ。
この貴重な75分での先制点が、ドルトムントに大きくのしかかりバランスを失ってしまう。残り時間が少ないため前がかりでいかなければならないが、レアルはプレスをいなしながらゴールへ向かい、追加点を狙う。
80分にはジャン、ブラントに代えてアラー、マレンを投入するがその2分後、マートセンの自陣での横パスがズレてしまいベリンガムにカットされてしまう。ベリンガムがフリーのヴィニシウスへパスを出し、ヴィニシウスが左足でゴールに流し込み大きな追加点。
試合序盤から仕掛けていたゾーン1を終盤でも継続したレアルのプレスが貴重な追加点につながった。
86分にはマレンのクロスからヒュルクルクがゴールネットを揺らすが、オフサイドにより得点ににはならず。
最後までドルトムントは戦ったが、試合巧者のレアルが交代枠も含め上手く使いながら時間を進め試合終了。

・総括

アンチェロッティの修正能力の高さが遺憾なく発揮された試合であり、ドルトムントとしては前半の内容がよかっただけに非常に悔しい敗戦となった。
ドルトムントとしては、カルバハルに対してアディエミがスプリントで勝っていた時間帯に点をとりたかった。
ヴィニシウスと1対1で互角に張り合えるサイドバックはいないのではないかというくらいこの試合も圧倒的な突破力だった。(デュエル勝利数14はこの試合1番の成績で次点はベリンガム他4名の7)
引退を宣言しているクロースだが、フリーキック2本はいずれも枠内に飛ばし先制点はクロースの正確なボールにより生み出された。パス成功数91本、パス成功率97%と両チームトップのパス成功数を誇った。トップフォームどころではなく、間違いなく今シーズンのレアルの攻撃の肝だったため引退がもったいないと思ってしまう。
前半から後半ロスタイムまで一瞬も目を離せないCLの決勝にふさわしい試合だった。

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