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必要なことは、羊たちが教えてくれる

私は羊の旅というプロジェクトをしている。

様々な人に羊のオブジェを作っていただき、それらを集めて群れにして、秋〜来春にかけて各地を旅するアートプロジェクトだ。2022羊の旅は、私の住む富山県の美しく善い“人・場所・想い”を旅するというコンセプトの元、インスタグラムに写真と文章を掲載している。

今年の5月〜11月にかけて、ケーブルテレビ富山の新・プライドという番組が、2022羊の旅プロジェクトの取材をしてくださっていた。富山で生活している様々な人々に密着する、20分のドキュメンタリー番組だ。

田舎に行けば行くほど人口は少ない。
人口が少ない場所では、よりいっそう芸術家はマイノリティーになる。

現代アートなんて、絶対誰にもわかってもらえない。わかってもらえないから、出来るだけわかりやすく、それでもわからないからといって差別されないようなやり方をしよう!と思考をパイ生地のように重ねて、思いついたのがこの羊の旅プロジェクトだ。

だから根本的に「誰にもわかってもらえないんだろうな」と思っていた。

ディレクター/カメラマンのMさん、撮影助手のNさん。大変お忙しい中、プライベートで羊のオブジェを作りにきてくださった。

それは私にとって本当に嬉しい事だった。ただの取材だから、仕事だからというスタンスではありえない、相手の事をわかろうとするための心のこもった行動だった。

ワークショップに参加してくださった方はわかると思いますが、自分の羊を作るのは自分と向き合う事です。自分とは?という問いに速攻答えられる人なんて、なかなかいないでしょう?そして、一度も考えもせずにわかっている気になっている人の事を、私は絶対信用しない。

一度で良いから考えてって思う。自分の頭で考えた事が無い人に、他人の気持ちに共感することは出来ない。まして、理解なんて絶対に出来ない。

芸術は、自分の心と世界を繋げる事だと思っている。絵画でも音楽でも彫刻でも演劇でも、作品と呼ばれる全てのものが「自分とは?」を自分に問い続ける行為そのものだ。答えがでるかは置いといて、まず自分を見つめ直すこと。

そしてそれは、自分を大切にする事にも繋がってくる。

だから、芸術家が職業ではなくても、魂が芸術家だという人は沢山いる。私は農業をやっている芸術家も、教師をしている芸術家も知っている。芸術家とは、本質的な生き方の問題だ。

たった20分のドキュメンタリー番組を制作するための、膨大な取材時間。その膨大な時間をかけて、彼らは羊の旅をわかろうとしてくれた。真摯に。

ドキュメンタリーを制作するのは、相手を通して自分と向き合う事だ。
どのような構成で、どのようなナレーションで、どのような切り取り方をすれば伝わるかという、自分の頭で考え続けないといけない創作活動。

生き方にマニュアルがないように、ドキュメンタリーにもマニュアルはない。自分の受け取り方で、相手のありのままを伝えるしかない。だから、自分と向き合えない人に良質なドキュメンタリーは作れない。

「言葉でいくら説明しても、伝わらない人には絶対に伝わらないのだから、ありのままを見てもらうしかない。わかる人は絶対わかるし、伝わる人には伝わりますよ。」と、Mさんは言ってくれた。

羊の旅を本当に理解している人にしか、この言葉は言えないでしょう?すごくない?

だからもう、私は誰にもわかってもらえないと思うことをやめた。

わかろうとしてくれる人達がいる、わかった気にならず、ちゃんとわかろうと歩み寄ってくれる人たちがいる。きっとこれからも、そういう人に沢山会えるし、会うために羊の旅を続けていく。

未来に希望が持てました!

必要なことはいつも、羊たちが教えてくれるから。

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ケーブルテレビ富山9ch
新プライド
是非ご覧ください。 
「羊の旅プロジェクト主宰者 山と草木」(20分番組)
◇期間2022年12/17-23, 2023年1/7-13
◇時間
土~金 9:00/12:00/16:00/22:00
※日によって変更有ります




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