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僧職系登山男子による山道具紹介「袈裟。」

Youtubeで山道具紹介を配信しました。


けいしさんというフォロワーのYouTuberさんが山道具レビューを配信していて、それを見てやってみようと思ったのがきっかけです。

ただ、僧職系登山男子目線のものにしようと考え、
僧職系、僧侶にとって最も大切なものの一つ「袈裟」を取り上げることにしました。

そもそも「袈裟」とは?

梵語の「カシャーヤ」という言葉から「袈裟」と音訳された言葉です。
元々の言葉は「壊色(えじき)」と言って、濁った色という意味です。
インドで仏教が生まれたときには、お坊さんが持っていい物が決められていました。
着るものも三種類だけでした。
これが、日本に入ってくる過程の中で、さすがにそれだけでは寒い冬を越せないので、今のような形へと変わってきました。
本来お釈迦さまが定めた衣服は「袈裟」という形で、装飾的礼服のような位置づけとなりました。

お坊さんに許された衣服は、袈裟だけでしたから、
そこには不思議な力が宿ると信じられてきました。
袈裟のことを「福田衣」ともいいます。
袈裟の功徳が書かれたお経には「春の苗の如くに福を生ずる田である」と書かれています。動画にも紹介しましたとおり、寒熱および毒虫を遠ざけるなどの功徳があります。登山だけでなく広く昔から現代に至るまで、様々な良くないことから守ってもらえ、そしてたくさんの幸せを産むものであると信じられてきました。

袈裟にも様々な種類があります

動画では、二種類を紹介しました。
こちらのnoteでは、少し詳しく解説していきたいと思います。(袈裟も宗派によって様々です。私は真言宗の僧侶ですので、真言宗の袈裟を紹介します。)

・如法衣
七条ともいいます。縦の条数が七本あるからそのように言います。
如法衣というのは、お釈迦さまの定めた決まりに則った衣という意味です。
普段の私ですと、法事やお葬式などに着用します。

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ちょっと写真ではわかりにくいですね。

下の写真は、私が袈裟の縫い方を習ったときのノートです。
書いてあるとおり、「却刺縫い(きゃくしぬい)」いう縫い方をします。
7本の縦のラインがお分かりになると思います。

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・紋白(五条)
紋の部分が白くなっていますので、紋白(もんじろ もんぱくとも読みます)と言います。紋は宗派の紋(=宗派の本山の紋)かお寺の紋を使います。ご覧いただいている袈裟の紋は「桐巴」。本山の金剛峯寺の紋です。
(余談ですが、今の金剛峯寺は元を青巌寺と言いまして、豊臣秀吉によって建立されたお寺です。そこで豊臣家の桐が寺紋となっています。葉の枚数が少ないのは豊臣家に遠慮をして少なくしたとの説。)
従って真言宗同士だと、袈裟を見るとどこが本山のお寺か、大体わかるんです。
どんなときに使うかというと、
年中行事の法会やお祭りの法会、厄除けなど、ハレの法会に着用する袈裟です。

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その他に、移動などの際に用いる略式の袈裟を紹介します。

・折五条、小野塚五条
動画で私が着用している袈裟が折五条です。
最もよく着用しています。
そして、こちらに紹介しますのが「小野塚五条」。
折五条は五条袈裟を折って首から掛けられるようにしたもの。
小野塚五条は五条袈裟を小さくしたものです。
登山には、小野塚五条を持っていっています。
理想を言えば最初から最後まで袈裟を付けて登るのがいいのかぁと思いますが、積雪期の登山では環境が厳しいので、仏さまに手を合わせるときだけ着用しています。
夏山になったら、小野塚五条を着けながら登ろうかと考えているところ。

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・半袈裟
最後にご紹介するのが「半袈裟」です。折五条の半分くらいのサイズで、主に一般の方が着用する袈裟になります。
仏具屋さんや四国八十八ヶ所や西国三十三ヶ所の巡礼用品を扱っているお店で取り扱っていると思います。
カラフルで、キレイな織柄、カワイイものやオシャレなものも多くありますので、興味をお持ちいただいた方はぜひ、調べてみてください。

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山道具としてもオススメです

山にもいろんな山があるわけですが、
私が紹介しているような山や、高野山のように山全体がお寺や霊場であるところ、あるいはお寺の一部となっている山も多くあります。
お坊さん・一般の方問わず、仏さまのところへは袈裟を着けてお参りするが本義です。
従いまして、仏さまのいらっしゃる山に登る際には袈裟をお持ちいただくこと、とってもオススメです。
お話しましたとおり、いろんなことから守ってもらえるものですし、
心が清らかになるものです。
より一層、「山と仏」を身近に感じられるのではないでしょうか。
そんなに重いものではありませんし、かさばるものでもありませんから、
ザックの雨蓋にでも入れていただき、
山頂で仏さまに手を合わせるときにでも、着けてもらえたらと思います。

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袈裟を着用する際の注意点

最後に、袈裟を着用する際にご注意いただきたいことについて、お話いたします。

1,お手洗いに行くときには、袈裟を外してから
袈裟は「仏さまそのもの」ですので、不浄の場所へ行くときには外します。

2,置くときには足の付かないところへ
どこに置いておいたらいいかとお尋ねいただくときには「お仏壇に」とお答えしています。お仏壇のない方もいらっしゃると思いますので、足の付かない少し高いところへ置いてください。

最後に

僧職系登山男子による山道具紹介。
いかがだったでしょうか。

アイゼンとかピッケル、ザックやテントの紹介も面白いかなぁと思ったのですが、私ならではの目線で山道具を紹介いたしました。

アイデア的にはいろいろありまして、
袈裟と一緒に持っていくことが多い「数珠」
皆さまからたくさんのコメントをいただきました「錫杖」
巡礼の旅には欠かせない「金剛杖」
などなど。

私目線でご紹介したい山道具(ほとんど仏具ではありますが)を皆さまにご紹介したいなと思っています。

法事やお寺にお参りになった際、お坊さんが袈裟を着けているところをご覧になると思います。
宗派によっても様々で、いろんなデザインや織柄があったりしますので、
ちょっと注目して見てみてもらえると、違った発見があると思います。

それでは、次の山でお会いしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

合掌

小雪童

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