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スタジアムからの贈り物

関内駅の赤煉瓦を背に、数メートル歩くと野球場が見えてくる。ドーム球場が増え「ボールパーク」「フィールド」の名称が次々と輸入された令和。「スタジアム」の呼称はZOZOマリンとMAZDA、そして企業名ではなく地名が残っているのは「横浜スタジアム」だけになった。

企業名が入ると愛称が生まれない。横浜スタジアムは地名があるからこそ「ハマスタ」の愛称が生まれ、球場名から風を感じられる。

昼は赤煉瓦、夜はナイター照明。今の仕事場(新宿壱番街)が全面、赤レンガの壁なので前より親近感が増した。筒香の背番号25のユニホームが多い。果たして古巣に帰るのか。星に願いを。ハマのファンは背中で想いを語る。

16時40分に球場に入るとハマスタ名物のYの字の照明灯が灯った。曇り空から青空がのぞき、これから色が濃くなって夜空に変わる。

横浜スタジアムのフェンスは5メートル。ハマっ子のプライドの高さのように12球団イチの高身長。歴代のプロ野球の球場で最も打率が高く、得点が入りやすい。打者有利のヒッターズ・パーク。やたら二塁打が出やすい代わりに三塁打、ホームランが出にくい不思議な球場だ。

12球団でいちばんマイナスイオンを出すスターマン。勝敗がどうでもよくなる不思議なチカラがある。野球とマスコットの関係性もいずれ熟考したい。

東克樹のプロデュースグルメが欲しかったが行列すぎて並ぶ気がしない。球場メシは崎陽軒の『シューマイ焼きそば』850円。 焼売を乗せる必要性が無いのがこのグルメのいいところ。料理は美味けりゃ正義、野球は勝てば官軍。

試合に見惚れていると、青空は仕事を終えた。闇にうっとり。地上の星が光る。やはり屋外球場のナイターは時間を愛でるワインのような恍惚がある。

4月12日の観客は 31,864 人。金曜の17時45分プレイボール。満員御礼。ペナントが開幕したばかりで優勝争いもなく選手のエンジンもかかっていない4月でも熱を帯びている。寒空のなかで隣の女性はビールを3杯も買い、度会のファウルボールを掴もうとして爪を割った。球場にお金を落とし全力で愉しむ。カープ女子にはじまり、女性が野球観戦を大きく変えた。

野球ファンはスタジアムからの贈り物を受け取り、また野球場に帰ってくる。ハマの風に乗って。

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