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弁理士試験の論文の攻略法を論文必須に1発合格した弁理士が教えます

1.弁理士試験の論文必須の攻略法は1つだけ

弁理士試験の論文必須を攻略するために必要なのは1つだけです。

それは「答案の書き方」です。

短答試験は最初の難関であり、短答試験をクリアした方であれば、論文必須試験でどのような回答をすべきかよいかは大体検討はつくと思います。

しかし、それでも回答すべき内容が分かっていても何回も受からない方が多いです。

理由としては答案の書き方が不十分であることが原因であると筆者は思います。

答案の書き方のコツは、「採点者が採点を楽にして上げる答案の構成を考える」ということです。

これはどういうことか。以下、詳しく解説します。


まず、論文試験の採点者は知的財産の権威のある専門家(弁護士・弁理士)です。(聞いた話。)

権威ある大御所の専門家の方々は最前線でご活躍されている方であり、当然忙しく採点に時間をかけてばかりいられません。

しかも短答である程度しぼられるとはいえ、受験生の数は何百人といるわけです。それを複数の採点者で分けたとしても何十人と採点しないといけず大変です。

そうすると、お忙しい採点者は答案を一語一句丁寧に見てもらえるでしょうか?

筆者の推測ですが、そこまで丁寧に見ないと思います。

また、これも推測ですが、おそらく、模範解答が用意されており、その模範解答に記載されたキーワード(論点)と、答案を照らし合わしながら、キーワード(論点)がきちんと書いてあるかどうかを確認しながら採点するのではないかと思います。

これは言い換えると、採点者は細かいところまでは見ないと考えられ、答案の構成がうまく書いていれば、多少おかしなことを書いても減点の対象になりにくいと思います。

一方で、答案の構成が上手くなかった場合(冗長に無駄なことまで書いている場合など)、採点者はキーワードがどこに書いているか見つけることができず、じっくりと丁寧に読む必要がでてきます。

そこで、じっくりと読み直してみると、「おや?おかしなことが書いてあるぞ」「あ、ここも」といった具合で、不具合を発見してどんどん減点の対象となり、不合格となるのではと思います。

一方で、読み手である採点者に「私はちゃんとキーワード(論点)をおさえていますよ」と読みやすいように答案を構成すると、採点者も「よし」「よし」「OK!」と言う具合でポンポン採点していき、採点者は丁寧に読まなくなり、(仮におかしなことを部分的に書いたりしても)減点を回避できます(あくまで筆者の推測です。)

筆者は、以上のような理由により、回答すべき内容がわかっているんだけど、何年かかっても合格できないのではないかと思います。

つまり、ただ「問題を解く」のではなく、採点者が、「採点が楽になる答案の書き方」をすることが論文必須の合格への近道と思います。

この考え方を知るだけで合格への近道はぐんと近づくと筆者は考えます。

お忙しい採点者のために、採点が楽になるような答案を書きましょう!

また、論文試験の必須問題は難問・奇問は出にくく、短答に合格できるレベルであれば回答内容は理解できるはずです。

差が出るのは、「問題の解き方」ではなく、「答案の構成」「答案の書き方」と思います。


では、その「答案の書き方」はどうやって身につけるのか。

それは、弁理士の予備校の通信講座からプロの講師に学ぶことをおすすめします。

独学では答案の書き方を身につけるのは難しいです。参考:「弁理士試験に独学で合格できるのか|一発合格した弁理士が答えます

予備校のプロの講師からみにつけた受験生と独学でみにつけた受験生ではやはり差が開きます。


そこで筆者は弁理士の予備校の通信講座をおすすめします。

通信講座のおすすめは「【2020年最新】弁理士試験の予備校・通信講座を合格者が比較【格安あり】」の記事をご参考に。


ただし、これで本内容はおしまいとすると味気ないですし、以下では筆者の答案の書き方を紹介します。

2.弁理士試験の論文必須の答案の書き方の具体例

具体例を交えて以下の順序で答案の書き方を紹介します。

  • ①論文の必須問題のパターン

  • ②何が問われているのか確認

  • ③答案の構成

①論文の必須問題のパターンは3つ

まず、論文の必須問題と言うのは実は3つしかパターンがありません。

  • ①事例問題。事例に対して対応すべきことは?理由と根拠条文。

  • ②事例問題。事例に対して対応は正しいかどうか?理由と根拠条文。

  • ③根拠条文の趣旨。

いずれにおいてもまず何が問われているのか、しっかりと確認します。

そして答案の書き方の基本は「結論・理由・根拠条文」の3つの型です。つまりまず結論を書いて、その理由を根拠条文を添えて書いていくことが基本です。

この型から逸脱して最初から冗長にダラダラと書いていると、キーワードがどこなのか採点者は丁寧に読んでしまいます。

そしてボロが見られて減点が増えていきます。

以下、さらに具体的に過去問の実例を踏まえて答案の書き方を解説します。

3.弁理士試験の論文必須の事例問題へのあてはめ

 2019年度弁理士試験特許法第1問

【問題Ⅰ】
1 日本国内に居住する甲は、明細書に(1)形状aを有するタイヤを備える自転車(以下「発明A」という。以下同様。)、(2)形状bを有するタイヤを備える自転車(発明B)、が記載され、発明Aの具体的な態様として、形状a1を有するタイヤを備える自転車(発明A1)と形状a2を有するタイヤを備える自転車(発明A2)を記載した特許出願Xをした。
 ここで、形状a1、形状a2及び形状bは互いに同時には採ることができない形状であり、発明A、発明A1、及び、発明A2は単一性の要件を満たす一群の発明に該当するが、発明A及び発明Bについては該当しない。
 以上を前提に、以下の各設問に答えよ。ただし、各設問に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。
(1) 特許出願Xの審査において、甲は、特許請求の範囲の記載を「形状aを有するタイヤを備える自転車。」としたところ、当該発明は、刊行物αに記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第 29 条第2項の規定により特許を受けることができない(進歩性を有しない)との理由で拒絶をすべき旨の査定を受けた。 タイヤの形状について、形状a1、又は、形状bとすれば上記拒絶理由が回避できる場合、甲は、拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲をどのように補正するのが適当か。適当と考える補正後の特許請求の範囲の記載を示すとともに、当該補正の内容が補正要件を満たすと考える理由を、特許法上の規定に言及しつつ説明せよ。

(2) 甲は、特許出願Xについて、拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正を行い、その1年後に、特許をすべき旨の査定の謄本の送達を受けた。しかし、その後の事情により、形状bを有する自転車用タイヤについても製造販売をすることとなり、この自転車用タイヤそのものについても特許を受けることを望んでいる。そこで、甲は、友人乙に相談したところ、「特許をすべき旨の査定の謄本の送達後であっても分割ができるので、特許出願Xに基づいて『形状bを有する自転車用タイヤ』について新たな特許出願ができる。」と説明された。乙の判断が正しいか否か、及び、その理由について、根拠となる特許法上の規定と、その趣旨に言及しつつ説明せよ。引用元:https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/document/2019ronbun-hissu/shiken_jitsuyou.pdf※マーカーは筆者の追記。

 まず問題文を図解で書き直します。

まず何が問われているか確認しましょう。(②の何が問われているか。)

(1)について問われているのは3点です。

  • ①拒絶査定不服審判の請求と同時にする補正をどうすべきか。

  • ②補正の内容が補正要件を満たすと考えられる理由

  • ③特許法上の規定に言及

 ①~③を踏まえて、結論➤理由と根拠条文の型にあてはめていきます。


 ここである程度勉強してきた方なら補正で発明Aを発明A1に厳縮すればよいことは分かると思います。

 ただし、理由②も問われているので補正要件を全て挙げなければいけません。

 つまり、特許法第17条の2第3項~第6項に規定する要件を全て充足しているかどうかを書いておく必要があります。

 答えは簡単ですが、その理由を根拠条文とともに漏れなく書かないといけず、そこが難しいです。

 書き方によって審査官に上手く伝えることができなければせっかくわかっていても落ちてしまいます。

 だらだら書くのではなく、バンバンと採点者にポイントが明確になるように書いていきます。ここがポイントです。

 書くとすれば、結論、理由、根拠条文です。理由(補正要件)は箇条書きでOKです。

 箇条書きの方が採点者も読みやすくポンポン採点しやすいです。

 解答は以下のような感じです。

【結論】

「形状a1を有するタイヤを備える自転車」に補正する(17条の2第1項第4号)。

【理由】

上記補正が認められるためには、17条の2第3項~第6項に規定する要件を満たす必要がある。以下に要件の適否を検討する。

(1)17条の2第3項

「形状a1を有するタイヤを備える自転車」は願書に最初に添付した明細書等に記載されているため要件を満たす。

(2)17条の2第4項

発明Aと発明A1は発明の単一性を有するためいわゆるシフト補正に該当せず要件を満たす。

(3)17条の2第5項

発明A1は発明Aの下位概念に相当し、同条第2号に該当するため要件を満たす。

(4)17条の2第6項

タイヤの形状をa1に特定することにより拒絶理由を回避できるためいわゆる独立特許要件を満たす。

 こんな感じで結論を前にバシッと書いておき、理由を箇条書きで書いておけば、論点(キーワード)も明確になり、採点者もとても採点しやすくなります。

 条文に沿ってだらだらと書いてしまうと採点者から「この人だいじょうぶか!?」と怪しがられるでしょう。

 もちろん論点を落としたくないという気持ちで長々と書くのは分かります。

 しかし、それをやっていると一向に受からないと思います。

 あとは演習を積んでいき、答案の書き方をより洗練されたものとしましょう。

続いて2問目に移ります。(読み飛ばしてもかまいません。)

 ・問われていること

  • ①乙の判断は正しいのか?

  • ②その理由

  • ③根拠条文

  • ④条文の趣旨

 多少実務をしていれば、拒絶査定不服審判請求した後の特許査定では分割出願ができないのはわかるかと思います。

 答えは頭の中でひらめきます。しかし、問われていることはそれだけではありません。

 なぜ分割出願できないのか。その根拠条文とその条文の趣旨まで書かないといけません。

 問われていることにきちんと答えないと「100%落ちます」。

 解答は以下のような感じです。

【結論】

乙の判断は誤り。

【理由】

特許出願の分割は特許をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から30日以内であれば可能であり(44条1項2号)、一見すると乙の判断は正しいように思える。

ところが、甲は拒絶査定不服審判と同時に明細書等の補正をしており、前置審査に付された上で(162条)特許査定を受けている。

そうすると、甲の出願は44条1項2号かっこ書きの規定に該当するため、甲は特許査定後に分割出願をすることができない。

【趣旨】

特許法では実効的な権利取得の支援及び手続の無駄の解消を図るため、特許査定後の分割を認めている(44条1項2号)。

しかし、分割時期を先延ばしにする目的で審査請求するという制度の濫用を防止したり、審判請求前に分割する機会に十分あったと考えられるために、審判請求後の特許査定については分割を認めていない(同号かっこ書き)。

以下、補足です。

今回の問題は分割要件の例外規定にあてはまるものなので、原則⇒例外の順序で書くと採点者から好評を得られますよ。

まずは、原則にあてはめてみて一見あてはめるようにおどけるんですよね。そこからこれは例外ですよと話をもっていく。原則⇒例外でおどけてみせる。そうすると原則についてもしっかりと理解しているなと採点者からいい印象をもたれます。この書き方はおすすめですよ 

 以上のとおり、弁理士試験の論文の攻略法を紹介しました。

 論文試験では、答案の書き方がとても重要です。

筆者の答案の書き方を紹介しましたが、より実践的にはプロの講師から学ぶことをおすすめします。

 通信講座のおすすめは「【2020年最新】弁理士試験の予備校・通信講座を合格者が比較【格安あり】」の記事をご参考に。


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