mast随一の意識低い系が博士課程に進んじゃった話

この記事はmast Advent Calendar 2021 #mastAdC の2日目の記事です.
1日目がいないので,現役mast生じゃないのにトップバッターになってしまいました.なんかすみません.

この記事では,意識低い系の私が博士課程に進んだ経緯と,博士課程ってこんな感じだよ,という私なりの感想の話をしてみたいと思います.

一つ最初に断りを入れておくと,
きっと読者であろうmast生の皆さんは,博士課程なんて考えてないよ!
という方がほとんど
だと思います.

本記事は決して皆さんを啓発してD進する人を増やしたい,とかいう高尚な記事ではありません.

ただ,皆さんは博士課程学生を観測する機会がなかなかないと思います.
そんなレアポケモンのような博士課程学生がどんな生態なのか
どんな人間がどのようにして博士課程に進学したのか,
一つの例として知ってもらいたいというのが本記事の目的です.

長文の自分語りを多く含む記事なので,苦手な方は申し訳ございません.
また,個人の見解を大いに含んでいます.ご了承ください.

お前は誰?

(元)mast15で,現在情報学学位プログラムD1のyamatchと申します.2017年に情報メディア創成学類に3年次編入で入学し,2018年度に情報メディア創成学類を卒業し,そのままストレートに大学院まで進みました.
研究分野は音楽情報処理で,卒研のころからずっと歌のことをコンピュータで分析する研究をしています.
(卒研:メロディの歌いにくさの分析,院:歌手の歌い方の分析)
mastの音・音楽を研究しているあの研究室所属です.

バンドのボーカル,混声合唱(テノール)をしていたので,自分の経験を活かして研究に励んでいます.

音楽情報処理がどんな研究分野なのかはこちらを見ていただけるとだいたいわかるかと思います.↓

歌が好きで,その謎を解き明かしたいという熱意だけはあるオタクです.

過去には,2017, 2018年のmast Advent calendarを書いていました.
それぞれAWSを45万円分不正利用された話,自転車2台とスマホを盗まれたり思わぬ病気や負傷に見舞われた話で,なにかとついてないやつです.

私は根っからの怠け者で,常に「どうやったら楽をできるか」ばかり考えている人間です.
特に編入前は「大学とは遊んで大卒の資格を取るためだけの場所」だと考えていて,労力をかけずに単位をとるという戦略のもと,筑波でいう評価オールCを狙うような学生生活を実行し,GPA1台を切るというとても意識の低い学生でした.
筑波に入ってからも,興味のないことをやらなくてはいけない場面に遭遇した時,いかに楽をして切り抜けるかということばかりを考えていた気がします.

それでも好きなことだけはちゃんと取り組めるのか,なんとか音響・音楽系の研究室に配属し,わがままを言って自分の好きな歌唱を研究テーマにし,それだけは割と真面目にやって,大学院まで進学しました.

何でD進なんかしちゃったの?

要約すると大きな理由は,
・就活をやるうちに考えが変わった
・修士で成果が出ないまま研究を終えるのが悔しかった
・最高の環境を用意してもらった
の3つです.

なお,私がD進を正式に決めたのはM2の7月です.
他の人に比べてめっっっっっっっっちゃ遅いです.

一つことわっておくと,本当の本当にM1の2月くらいまで人生で一度も,1mmもD進を考えていませんでした.

経緯

M1に上がってすぐのころ,ひょんな事がきっかけで先生に産総研の研究者の方と繋げていただき,2019年8月~9月に産総研の1ヶ月の研究実習へ参加することになりました.これまでとは全く違う分野かつ,使う技術も異なるテーマに取り組むことになり,四苦八苦しました.
他の実習生はみんなつよいラボ出身の人ばかりで,とにかく他の人の進捗の出し具合に負けないよう,必死に食らいつきながら自分の研究を進めていきました.

ちょうど同じ時期に卒研の成果を学会で発表する機会がありました.
学会の懇親会でコミュ障を発揮し飲むことしかやることがなくなり
ドイツビールを飲みまくって泥酔し記憶を無くし,気がついたらホテルのベッドの上に横たわっていていました.

ポケットからは記憶にない,居酒屋で浜松餃子32個を食べたレシートと,
スマホを見たらなんと驚愕,
ラボのslackに「受賞できたらD進する」という,記憶にない自分からの投稿がありました.

懇親会の会場だった浜松・地ビールの店マインシュロス http://www.meinschloss.jp/より

そして実際に何の間違いか賞をとってしまいました.この頃からラボメン,先生,産総研のメンターの方からですらD進を仄めかすような発言を頻繁に受けるようになりました.ただ,当時D進など考えていなかった私はそれを適当に全てスルーしていました.

当時,ことあるごとに押されたslack絵文字

結論から言えば,この研究実習でやってたことは失敗に終わりました.共同研究はそこからも細々と続いたのですが,そこからM2の終わり頃までなかなか成果の出ない低迷期に突入しました.


夏が終わると,時期としては就活シーズンに入っていきます.私はなんとなく「今までやってきたことが活かせるところ」を軸に就活を進めていました.音や音楽,または統計・機械学習がからむ技術職を軸に,選考を受けてやっていました.

就活を続けていった6月ごろ,最終的に機械学習エンジニアとしての内定をいただくことができました.
しかし,内定をもらった直後に, 「研究っぽいことやるけど,これお金抜きに考えたら自分の興味のある題材をやった方が得るものが多いのではないか?つまり,D進アリじゃね?」という考えが自分の中で湧くようになってきました.
これは,当時研究がうまくいかず,消化不良になっておりこのまま終わることへの悔いもあってのことでした.
内定をいただいた企業も本当に魅力的で,自分の中で選択をかなり迷っていましたが,いろんな人に悩みを打ち明け意見をもらい,最終的に内定を辞退してD進を決意しました.
キャリアのためとは言え結果的には身勝手な理由で振り回した形になり,内定をいただいた企業には本当に申し訳ない思いでいっぱいでした.にもかかわらず応援のお言葉をいただけて,身が引き締まったのでした.

D進を決意するや否や,先生が韓国・KAISTの研究者の方(私の分野では一流の有名な方)と繋げていただき,共同研究がスタートすることになりました.

産総研とKAIST,両方との共同研究をするということで,
これ以上に恵まれた環境はない,という状況になりました.
これだったらD進しても成果はある程度約束されるだろうと,(結局は自分次第なのに)謎の自信に満ち溢れました.

そうは言いましたが,その後個人の事情で色々とあって,M2の8月~11月までうつ病・心身症のような症状に悩まされていました.結局研究の進捗は出ないどころか,運転中に集中を欠いて事故(自損)を起こしたり,IDEを立ち上げた瞬間冷や汗が止まらなくなって目の前が暗くなり,気づいたら近所のドラッグストアでお菓子をたっぷり買い込んでいたという出来事もあって,D進どころではなくなっていました.本気であの頃は進学をやめるどころかドロップアウトしようとまで考えていました.この頃,GoToイートを利用してほぼ毎日学類時代の同期で食事をしていました.それがリフレッシュになっており,なんとか精神を保っていました.誘ってくれたGoToイート民の同期の皆には感謝してもしきれません.あれがなかったら本当に今生きていなかったかもしれません.

大学院という場所

こんな略歴で修士課程2年,博士課程を半年ちょいと過ごしました.
その感想について書いてみます.

修士課程:ぶっちゃけ学類とそんなに変わらん


実は学類生向け大学院説明会で登壇したこともあるので,そちらの資料も併せて見ていただければ幸いです.

まず大学院自体がどういう場所なのかというと,「研究するところ」という一言に尽きるかと思います.
…が,近年はそうとも言えないというか,恐れずに表現すると,修士課程に関してはむしろ「技術系の職種専門の就職予備校」という毛色に近い場所となっていると思います.

修士課程は概ね,研究にウェイトがより置かれた,学類の延長戦という感想を2年間過ごしてみて持ちました.
というのは,座学の講義の単位が修了のために必要で,10~15科目程度を受ける必要があります.その上に,(修士卒で社会に出る場合)就活をするのは学類の時と変わらないです.学類よりは技術系の職種への門戸が開き,比較的内定をもらいやすいかと思います.

また,修士修了の要件には査読あり学会発表がないです.(そういうルールがもしあるとしたら,研究室のローカルルールです)つまり,(うまくいかなくても)研究して修士論文を書きさえすれば修士号はもらえます.

ただ,スキマ時間を使って研究していく必要があるので,忙しさは学類の時より段違いになるでしょう.
(サボることもできるにはできるが後で地獄を見る)

博士課程:本当に研究をガチるとこだった

一方,博士課程は入ってみて,本当に研究するためのところという感想を持ちました.
まず,こちらが情報学学位プログラムのシラバスです.

https://informatics.tsukuba.ac.jp/education/course-registration-doctor/ より

見ての通り,講義に関しては,
情報学セミナーという,学期中2回進捗報告をするだけの必修講義のほか,インターンシップ,研究指導,PBLのうち2つだけを受ければそれでよく,あとは博士論文の審査のみです.あとは研究をやっていれば自動的に(?)認定される科目です.

つまり,座学は基本なく,いかに研究を進めるか・研究開発や指導の経験を積むかのメタスキルを学ぶものと,自分の研究を発表し意見をもらい改善するもののみがカリキュラムとして組み込まれています.
時間割もだいぶ空きがあり,基本的に何もなければ研究を進めるという具合になります.

加えて修了するためには,2本の査読付き論文が採択されて,かつ博士論文を執筆して公聴会までクリアする必要があります.
つまり,必然的に研究で成果を出すということがノルマとなっています.

そんな自由な時間でどんなことをしているのか

そんなわけで,時間をどう使うかはマジで自由.
特に,少なくとも私の研究室では最低限顔を出しさえすれば空いた時間をどう使おうと何も文句は言われません.


実際に私も博士課程に進学してから,かなり自由に動いています.

そもそも私の研究はやることの種類がとても多く,

・歌を聴き,そこからわかる情報をラベル付けしてデータセットを作る
・ラベルを統計分析にかけたり可視化したりしてその実態を把握する
・音響データや楽譜データを自動解析する(信号処理,符号処理,機械学習,深層学習等幅広い技術を使います)

等があります.

私は全て,

・データセット作り→ 歌手の魅力が改めてわかるから楽しい!!分析や自動解析に必要なゲージを貯めてるみたいで楽しい!!
・統計分析 → こんな傾向があるんだという新しい発見があって楽しい!!
・自動解析 → 性能上げがゲームみたいで楽しいし,うまくいって歌声の情報を自動的に引き出せるともっと楽しい!!

という感じでなんやかんや楽しく気ままにやっています.
飽きたら別のことをやり,また飽きたら別の作業に,,,を繰り返しできるのも今のテーマのいいところです.

それ以外にも,後輩とわちゃわちゃ研究の話をしたり,
筑波大学のティーチングフェロー(TF;講義も可能な,博士課程学生だけがなれるTA)として講義をしたり,
外部のイベントで論文サーベイや隙間時間でやった卒研のお蔵入り分析等を発表したり, Twitterの強者たちと音楽情報処理の研究の話をするコミュニティも立ち上げました.



肝心の成果はどうなんだ,という話に関しては,今年は現時点で国際会議2本(査読ありなし各1),論文誌投稿準備中,国内学会2本と受賞が1個で,
割とまあまあ成果を出すことができているのではないかと思っています.
少なくとも修了の最低要件は来年中には満たされるんじゃないでしょうか.
ネタ切れというわけでもないので,かなり調子としてはいい方だと思います.

もちろん四六時中ずっと研究しているわけでもなく,きちんと休息も入れています.ゲームしたり自炊したり出かけたり.

GW,想像の3倍くらい速かった河口湖のモーターボート


秋,那須フィッシュセンターのニジマスの唐揚げ

つまりは今のところはエンジョイしています.博士課程最高!

人には人の博士課程で私の例はあくまで一例でしかないのですが,
過ごしてみた結果,案外地獄というわけではなかったなという感じです.

ちょっと内容が特殊なだけで,マクロに見たらそこまで社会人と変わらないと正直思っています.
1日中何らかの作業をする点も,仕事に修羅場がある点も.成果を出さないといけなかったりというのは社会人と同じではないでしょうか.
論理を練りに練って詰めることの代わりに,あんまり理不尽を強いられることも(少なくとも私の場合)社会人に比べたら少ないと思うので,全体で見たらどっこいどっこいというか.
当然手を抜いたりとかはできないし,拘束時間は実質無限大ですが.

博士課程,実際どうなのか

ただ,それでもやはり博士課程というのは普通の選択肢ではないと思います.進学にあたり,いくつかの問題に直面します.それについて,私なりの現状の印象を述べてみます.

キャリア

 ぶっちゃけ逆に私が知りたい

研究職に就きたいという方は博士課程に行っておくといいんじゃないかと思います.大学教員なんかは大抵が博士号取得が必須ですし,海外で働くのには一番の近道だという印象を持っています.
逆に研究を通して得られるスキルが直接役に立つような職種以外(事務職やいわゆる学部新卒の総合職等)の門戸は狭くなる印象があります.
情報系においては,観測範囲で比較的博士号が足枷になるパターンは他分野より少ない印象があります.博士修了後に企業勤めになる人もちらほら見かけます.

私に関しては,今のところアカデミアに残ることはあまり考えていません.狭い範囲で物を言うのもなんですが,一番近くで見ている弊学に仮に勤めた場合,楽しそうに働いている自分がイメージできないのと,ティーチングフェローの講義をやってみて,これをコンスタントにやるのはあまり性に合わないなと感じたのがきっかけです.
そもそも外部にもっといい講義をしてくれる人もいるし資料も公開されているのに,なぜわざわざ自分が再構築せなあかんのか,と感じてしまうのが原因です.外部にいい資料があるからそれ見てやって来てね!実習のときは自分がTA的に補足するよ!という形が許されるのだったらいいかもしれませんが.
そのほか,正直アカデミアに行きたくない理由は他にも山ほどあるのですが,あんまり下手なことを言うと怒られそう書いていくとキリがないのでこの辺で.それが解消されたらアカデミアもいいのかもしれません.

また,情報系の場合,もはや今は企業の方がデータ等のリソースも持っているし楽しそうに働けると思うので,今のところは企業への就職も考えています.

金銭

博士課程において最大のネックになるのが金銭面.学類から合わせると少なくとも9年間を学費に費やし,生活費の確保までもが課題になります.
昔が学振がとれるかどうかが天国・地獄の分かれ目になっていましたが,
今はJST次世代研究者挑戦的研究プログラムという,博士課程の3年間の金銭支援を行うプログラムもあり,筑波大学においては1学年約100人をサポートしています.
私も10月まで研究の隙間時間にバイトをしてなんとか食いつないでいましたが,このJST次世代プログラムに採択され,月20万円の生活費の支給をいただいております.ありがたや.

また,その他の制度としては,大学側のものとして,文科省の大学フェローシップ創設事業があるほか,産総研RA理研JRA等,月に2桁万円の給与がもらえるRAの制度があります.
それなりに成果を出していればどれかには引っかかる可能性があるので,
昔よりはマシになった,というところでしょうか.
ちなみに,最低保障として(?),情報学学位プログラムにおいては月4万円が学振を「出しさえすれば」RAの給与として支給されるという独自のプログラムがあります.

婚期

博士課程にストレートに進んだ場合,年齢は結婚適齢期でもあり,そんな時期に博士課程のような不安定な道に進むのはかなりリスキーです.
言わずもがなです.

さらに女性の場合は出産の問題が絡む時期でもあるかと思います.博士課程の間に結婚している人もいますが,それは大抵上記の金銭面がクリアできた場合です.お金がないと結婚は難しい,という一般論でしょうか.パートナーの理解も必要です.
これは当事者にとっては結構シビアな問題のようです.だれかこのあたりの情報をまとめたものがあれば逆に教えてください…

私はそもそも一生独身で生きていたい人間なので,この問題は幸いにも考えなくて済みました.

進学先

私はストレートで卒研・修士と同じ研究に所属していましたが,博士課程に進む段階で研究室を変える人もちらほらいます.修士を卒業した段階で海外のPh.Dプログラムに入学する人もしばしば見かけます.

D進の進学先を考えるにあたって主に考えるべきなのは,
その環境は博士課程を切り抜けられそうなのか(成果的な面でも,資源的な面でも,メンタル的な面でも)に尽きると思います.
成果が出ないテーマに取り組み続けても一生博士論文など書けないし,
それが現実的に実行可能な環境(計算資源,データ,テーマを指導教員が熟知しており,指導可能か)になくてもできないし,
進学先の研究室における住居環境,指導教員を含めた同僚との関係性の相性が悪いと研究を阻害する要因となり得ます.
とはいえ1つの研究室にいると,自分の今いる環境が当たり前と思いがちなので,今D進を少しでも考えている方は,一度は他の研究室も見たほうがいいと思います.

私はD進に関して他の研究室の見学こそ行きませんでしたが,他の環境を知ると言う点では産総研の学生実習がとてもいい機会になりました.
あとは,あんまり周りにガツガツタイプが多いとやる気がなくなりそうなのと,音楽情報処理を研究しているラボでうちよりいい環境が日本になさそうだったのとです.(あるにはある(東大,京大,慶應,名工大等)のですが,私はそもそも人口密度が高い場所と満員電車が大嫌いなのでいずれも選択肢から外れました.)
ビッグラボのPIと共同研究できてるから実質ビッグラボ所属だよね,的な.

人付き合い

割と孤独になることが多くなるのではないでしょうか.
まず,同期がいない.私の研究科だと同学年は私含め12人いますが,同じ研究室では,同学年が(というか博士課程自体)いない状態になりました.
ビッグラボにいればそれなりに同期はいる状況になりやすいのですが,
(例えば落合研は私と同期だと3,4人はいた(はず).)そうでなければ,学年で1人という状況はザラにあります.

ちなみに博士課程の同期はすごい人たちばかりで,
すげえな〜やべぇな〜天才〜(語彙力)と,進捗発表などを見て感心するばかりで,ウマ娘のアグネスデジタルみたいな感じの状態になっています.


また,今までつるんできた人との話題のズレも感じ始めることも多くなるかと思います.
私は特に,編入前の大学の友達がする出産・育児だの昇進だのマイホームだのの話に全くついていけなくなりました.しょうがない.それでも仲良くしてくれるのでありがたい限りです.

メンタル

博士課程中はマジで病みやすいです.
普通に生きてきた人にとっては,精神がやられるイベントがとても多いと思います.メンタルを健康に保つことは博士課程で必須のスキルです.

私はぶっちゃけ元が豆腐メンタルなので,様々なメンタル管理術によってなんとか切り抜けています.
火事で言うところの防火・消火・耐火に分けてみると,

防火
・よく寝る・食べる・運動する
・人と話す
・1週間1回は必ず休みを入れる
・自分に過度な期待をしない
・研究における指摘≠自分への叱責であることを心に留めておく
・Twitterで「博士課程」「ドクター」等をワードミュート(正直ろくなことが呟かれてないと思っています.)

消火
・自分へのご褒美を用意する
・お風呂に入る
・ストレスが大きかった場合はスーパー銭湯へ行ったり車で誰もいないところに行ったりする

耐火
・嫌なことがあっても脳内で合理化をしまくる
・凶報は送ったらもうその日は返事を確認しない(緊急性が高いもの以外は)
・ストレスの閾値を超えたら意識的に作業を中断するか別のことをやる
・上手くいかないことや感じているストレスをとにかく文字起こし
・訓練した脳内の意見/いちゃもん判別器を使い,いちゃもんだとみなしたらすぐに適当に流す対応を取る


特に自分に過度な期待をしないことが私にとっては一番大事でした.
元々自分はダメ人間だと知っているから,何か出来なかったとしても,
「予想通り出来なかった」ことが再びわかるだけで落ち込むことはないです.
また,幸いにもそのマインドで地道にマイペースにやれることができるくらい,研究テーマの競合相手がいなかったりします.(むしろいたらそもそもそのテーマを選んでなかったと思います.)

逆に競合相手の多いレッドオーシャンの中,高プレッシャーで戦う人ももちろんいます.尊敬 of 尊敬.

むすびに

以上,意識低い系学生だった私がいかにして博士課程に進んだのかという話と,博士課程って実際どうなのかという話の記事でした.

色々と書きましたが,結局,私の話は一つの生存バイアスに過ぎません.
いくら私が意識が低い人間だからとはいえ,

・好きなものがあって,
・かつそれを研究できる環境があり,
・周りの人の理解もあり,
・指導教員や研究室のメンバーとの関係もうまくいっていて,
・つよい共同研究先と一緒に研究できて,
・メンタルもある程度制御可能で,
・お金もどうにかなっている

という奇跡中の奇跡のもとで,博士課程生活をなんとか生き延びています.
自慢乙と言われても仕方ないです.

逆に言えば,意識が低いからこそ,楽をするための努力は惜しまない
そのためにこのようなピースを揃えたのは事実です.一つでも欠けていたら成立しなかったと思います.

そうしたピースを揃えさえすれば,世間で言われているイメージよりは地獄を味わうこともなかったということも伝えておきたいです.(ただ,地獄をまだ味わっていないだけかもしれないし,あるいはM2の調子の悪い頃にセンサーがぶっ壊れただけかもしれないが.)
また,繰り返しですが,取り巻く環境は昔よりも確実に良くなっていると思います.

唯一D進を考えている人へのアドバイスがあるとしたら,
絶対に自分の理想の環境探しを妥協するな
ということでしょうか.

以上です.

参考
・アカデミアを離れてみたら――博士、道なき道をゆく – 岩波書店編集部 (編集)

・情報処理 特集別刷「博士課程進学のメリット・デメリット」https://techbookfest.org/product/5985643083595776?productVariantID=6602327708401664

博士課程に進むときに考えたこと by Makky さん
高専から大学編入をして修士に進学し博士に進学した理由 by elnikkis さん
博士課程に進むときに考えたと思われること、今思うこと - NOZAWA Kentoさん
2020年度 研究会推薦博士論文速報