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ポスター発表と私

大学院生活を長いこと過ごし,かれこれ20回くらいは対外発表しているだろうか. 
その中でいまだにやり方が掴めないのはポスター発表である.
国内・国際含め7,8回やっているだろうか.それなのに正直いまだに苦手意識を持っている.
なんもわからん.大学院生を長く続けたのにいいやり方が本当になんもわからん.
本記事では雑多にこれまでのポスター発表で私なりに感じたことを書き散らしたい.

発表準備に関して

ポスターはショートトークの添え物

最終的に話し方として
要は何をした?の1文(XXのための〇〇をしました.)
-> 背景を3-4文
-> 提案手法を3-4文
-> リサーチクエスチョンおよびそれに対応する結果を2~3文
-> 結論を1文 +アルファで今後の予定を1,2文
(大体途切れずに全部話し切るのに3-4分)という形のトークを用意し,それに沿える形でポスターを作る,というスタイルに落ち着いたと思う.
具体的にはポスターは各セクションにトピックセンテンスを書く + 細かいところは箇条書き,もっと細かいところは省いて論文なりに逃すとか質問の応答として用意して対応,とかいう形をとった.
トークを始めに考えておき,それの添え物としてポスターを作ってトークに対応する部分を随時指差しながら話せるようなポスターが作れた時が一番話しやすかったので,自分にはそういう方法が合っていたと思う.

画像は一番すらすら話せた自負がある,韓国のワークショップの時のポスター.ただ,これはもしかしたらwork依存かもしれない.もっと上手いやり方はある気がしている...

国際会議 APSIPA ASC 2023の前哨戦として,
留学先の韓国の研究室交流ワークショップで発表したその内容ポスター.

忘れっぽいやつは万が一のために現地で印刷する方法を

国際会議で,印刷したポスターを日本から持っていったが,トランジットの空港でなくしてしまったことがあった.
現地で印刷するという方法をとり,幸いにも街中にA0ポスター印刷ができる店を見つけて事なきを得た.正直とてもテンパった.
万が一のためにポスターを印刷できる場所が近くにあるかどうか調べると良さそう.学会運営に聞いてもいいかもしれない.もっとも,運営側はそんなことでいちいち仕事を発生させるなと憤っている可能性もあるかも.その節はすみませんでした.

萌芽的で意見が欲しいのが主旨なら,はっきり「XXについて意見が欲しいです」と書く&&言う

どちらか片方が抜けた時に意見をもらえたことは一度もなかった.意見が欲しいのが主旨ならそう書いて言わないと伝わらないということを経験から学んだ.

発表中に関して

喉が辛い

ポスター発表をする会場は大体が人の流れを良くするために,廊下のような場所で行うことが多い.そういう環境で1時間やら2時間やら喋り続け,しかも雑踏にかき消されないようにはっきり話す必要がある.
ロックボーカルで喉を鍛えていたはずなのに,セッションが終わる頃は声が大抵ガッサガサになる.議論するときヒートアップしてついつい声を張ってしまうのが原因なんだろうか.
議論を2,3ループ回すごとに給水するとか,のど飴タイムを設けるなどして乗り越えるという方法を習得した.給水不可能な場所には当たったことがないので,そういう場所だったら辛そうだなという感想.
また,舌の運動,リップロール,腹式呼吸の基礎練等,喉に負担をかけないような準備をした時もあった.気休めにはなったと思う.

人が距離をとりながら止まってポスターを読んでいる気まずい瞬間

自分のポスターに立ち止まっていて内容を読んでいる人.正直気まずい瞬間.私も聴衆として経験した,「ポスターをとりあえず見ているが,話を聞いてもわからなさそうなので著者の人に話しかけるかどうかすごく迷う」というのを発表者から見ている瞬間.
デモがある場合は「こんな感じですよ〜」っていうのを見せてどうにかしていたが,デモが用意できなそうな研究ではすごく困った.
正直ニコニコして挨拶し,「こういう研究です マル」でおしまいになってしまう場面もあった.
よくわかってる人向けの説明と本当の初心者むけの説明両方を用意するのが良さそうだと思っているが,実践に移せたことはない.どうすればいいんだろう.
こういう悩みが発生しない程度には人見知りじゃない人間に生まれたかった.

音系研究,ポスターだけだとわからない問題

私は歌声の研究をしているのでこの問題にぶち当たった.どうしても音の研究をしていると音およびスペクトログラム等の可視化を含むデモを見せる必要性に駆られることがある.
最終的に私はタブレットを使うというチョイスに落ち着いた.PCより軽いし,何か図で書いて説明したくなった時にも対応できる.
韓国留学時でサムスンパッドの5万円くらいのを買ったが,とてもよく機能している.

カクテルパーティ効果 is all we need.

私はカクテルパーティ効果の存在を疑うほど,雑音環境下でターゲット音声を拾う能力が低く,他の発表者もいる中で聴衆の人の言葉を拾うことに脳の負荷をかけた.あらかじめ脳の負荷がかかることを想定し,前日よく寝る,糖分をとる,コーヒーを飲む,等の対策が必要だった.

英語のポスター発表は難しい

カクテルパーティ効果なしハンデがあるのにも関わらず英語ポスターだった時が一番きつかった.私は英語のポスター発表は3回経験していて,ひとつは韓国のドメスティックなワークショップ,もう2つは国際会議での発表だった.前者は,聴衆がほどんど全員韓国の人だで,韓国の英語アクセントは日本のそれと近く割と対応できたが,後者はほぼネイティブなみのスピード&英語完璧を求められる + たまに訛りのある英語に対応しないといけない.
個人的に非東アジア圏の英語はとてつもなくハードに感じた.インド,シンガポール等の英語は日本人にとっては独特に感じる訛りがあるし,
欧米圏出身の人の英語は非英語母語の人ですらネイティブ並みのスピードできっちり話す上に発音原理も日本人のそれと大きく異なる(喉発声,単語でチャンクしない等)からか,とても難しい.
これを経験してから英語の訛りに個人的に興味が湧き,色々調べた.各国の訛りとなぜその訛りが生じるかを調べまくった時期があった.あれはひとつの趣味として楽しかった.今ではリスニングがマシになっていると思う.また,
その経験があり,逆に日本訛りの英語は他の国の人にわかりにくい可能性を考え,なるべく日本のアクセントを抑えた英語で話すように心がけている.
どのアクセントも魅力的ではあると思う一方,コミュニケーションはお互いに最も伝わりやすいやり方でやるべき,というのが私個人の考え.
ちなみに一番好きなアクセントはオーストラリア英語.将来英語ネイティブの国の代表であるアメリカ(カナダ),イギリス,オーストラリア(ニュージーランド)の中から住む場所を選ぶとしたらオーストラリアが一番良さそうだなというのと,響きから感じる性格が一番好き,というふわふわした理由.

謝るな,わからなくなったら辛抱強く食い下がろう

ゼミの時指導教員の寺澤先生が英語発表の極意,的な講演をしてくださったことがあった.(研究室でも教えてくださったが,外部でもどこかでやってくださっているはず.).間違えても謝るな,わからない時も食い下がって「What did you say?」 「The problem is …what?(The problem is ※$#X◯&%…みたいに聞き取れなかった時)」「Could you repeat that slower?」「Could you say it easier again?」「I didn't understand…」等聞き返し,コミュニケーションをちゃんと成立させるというのが重要だという極意を授けていただいた.
本当にどうしようもなくなった時に,翻訳ソフトや音声認識等,テクノロジーの力を借りるのも私はありだと思う.英語のテストじゃない,研究の議論というコミュニケーションが第一なのだから.

ポスターにQRコードを載せてWebサイトに誘導するといいことがあるかもしれん

デモをwebサイトに載せておいてそれをQRコードでスキャンできるようにしておくと吉.後で見てくれた人が興味を持ってくれて発表後にやり取りが発生した場合もあった.WEBサイトのサブページにするなどして自分のホームページに辿り着けるようにしておくと,ジョブハンティングにプラスの効果もあるかもね.

ISMIRの発表形式は良かった

国際会議 International Society for Music Information Retrieval
Conference (ISMIR) https://ismir.net/ 
はショートオーラル発表を先に全員に向けてやった後にディスカッションをポスターで行うという形.

https://ismir2022program.ismir.net/poster_296.html 私の

発表用意はとても大変だが,そのぶんみんなある程度自分の研究をある程度頭に入れた状態でポスターに来てくれるので,新しく研究の説明をする手間が省け,ディスカッションに100%時間を費やすことができる.あの時間は濃密でアツかった.私はこのスタイルは好きだったが,全ての学会がこうだと流石に疲れてしまうかもしれない.

参考になる資料

ここまで書いてて,何か参考になる資料はあるかなと思ったら,お茶の水女子大学の伊藤先生の資料のp.16-からに本質情報がたくさんあった.


終わりに

ポスター発表もっと上手くなりたい.