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にじさんじセンター試験・共通テストから見えてきた楽しいクイズの作り方

どうも。ヤマたです。

以下、長文になります。

お時間あるときに・・・

 2020年1月公開の「にじさんじセンター試験」と、2022年1月公開の「にじさんじ共通テスト」を作成した者です。これを読んでくれる方の中にはこれらのクイズを解いてくれた方もいると思います。本当にありがとうございます。実は私、他にもセンター試験風のクイズを作成公開した経験があります。これまでのクイズ作成歴は以下の通りです。

2018年3月 センター試験「マリオ」 回答2000件超
2018年8月 センター試験「VTuber」 回答5500件超
2020年1月 センター試験「にじさんじ」 回答32000件超
      (ライバー本人回答12件)
2021年4月 センター試験「にじさんじ」(第2回) 回答1300件超
2022年1月 共通テスト「にじさんじ」 回答36000件超
      (ライバー本人回答13件)

 にじさんじのクイズはこれまで3年連続で作成しております。あまりバズらなかった第2回にじさんじセンター試験の経験も含め、みんなに楽しく解いてもらえるクイズ作りについて私なりにある程度結論が出たため、私が思う工夫すべきことをここにつらつらと書いていきたいと思います。クイズは多くの人が楽しめるコンテンツだと思います。作成者が増えればそれだけコンテンツも増えるため、何か参考になればという願いであります。


⚪︎とにかく意識していること


とりあえず結論から。必須事項として意識しているのは次の2点です。

Ⅰ.わからなくても推測の余地を残すこと

Ⅱ.自分が簡単と思える程度の難易度にすること

Ⅰは1問1問に対して「楽しい」と思ってもらえる工夫、Ⅱは全て解き終わった後「楽しかった」と思ってもらえる工夫です。加えて、さらに楽しませるためにできる限り組み込んでいるのが次の観点です。

Ⅲ.知識を間接的に用いさせ、回答に確信を持たせないこと

Ⅳ.その他

詳細を以下に記述します。


Ⅰ.わからなくても推測の余地を残すこと


これは、「わからんから適当にやるか」という事態を避けることにつながります。具体的に私が取り扱ったにじさんじの題材を例に挙げてみましょう。

Q1-1.『空星きらめ』の瞳の色は何?
①赤 ②青 ③黄 ④緑

さて。この問題をどう思うでしょうか?もしあなたが『空星きらめ』を見たことがなかったとしたら、この問題はどうなるでしょう。捨て問になるはずです。少なくともこの問題を解いて楽しいと感じる人は『空星きらめ』をよく知っていて、解答できた人だけです。では、少しマシにしてみましょう。

Q1-2.瞳が青いライバーは誰?
①リゼ・ヘルエスタ ②空星きらめ ③天宮こころ ④童田明治

こうすると、検討できる人数が一人から四人になりました。仮に『空星きらめ』を知らなかったとしても他の3人がどうかという検討の余地が残ります。これは一見、設問と選択肢([ライバー名]と[色])を入れ替えただけに見えるかもしれません。しかしここには大きな違いがあります。それは「選択肢が持つ情報量」の差です。色の選択肢はその色でしかありません。しかしライバーを選択肢にすると、そのライバーの情報がすべて含まれます。この問いの場合、もしどこかでそのライバーを見たことがあれば、そこにクイズを解くための「思い出す」工程が発生し、検討を始めます。楽しんでもらうためには、情報量の多い方を選択肢にするといいでしょう。
今回の場合、
[ライバー名]を定めて[色]を問う
のではなく、
[色]を定めて[ライバー名]を問う
方がいいでしょう。

では、もう一つ例を示してみます。

Q1-3.鷹宮リオンのチャンネルで競馬配信時に登場する、牢屋に入った猫の名前は何?
①タマ ②ミケ ③チビ ④ポチ

これは、ただただ猫の名前を答える知識問題になります。配信を見たことがあればわかるし、そうでなければわからないで終わる問題です。名前を聞いても面白くないので、観点を変えてみます。なぜ彼女のチャンネルでは競馬配信時にミケが登場するのでしょう。そこからこのように派生させてみましょう。

Q1-4.競馬配信時にその人自身が登場せず、別の名前のものが登場するライバーとして正しいのはどれ?
①舞元啓介 ②鷹宮リオン ③ニュイ・ソシエール ④レイン・パターソン

もちろん知っていればそれまでですが、知らない人はまずそれぞれの人についてどんな人だったかを考えると思います。そこで、馬券購入の年齢制限とそのライバーの年齢を考えることができれば、「ミケ」という存在を全く知らずとも「馬券購入ができない高校生の②鷹宮リオンに代わって別の者が配信しているだろう」という予想を立てることが可能です。知らなかったで終わらせないよう、解答に理由や背景があるといいでしょう。



Ⅱ.自分が簡単と思える程度の難易度にすること


要は「ムズすぎる問はダメ」ということです。クイズを作成する上で非常に陥りやすい事象といえます。私の作成した「第二回にじさんじセンター試験」がバズらなかった主要因がこれといって間違いないでしょう。クイズを作っていると、知らず知らずのうちに自然と難易度は上がりがちです。なぜ難しすぎるクイズを作ってしまうかというと、それは「クイズを作っていくうちに自分の常識レベルがどんどん引きあがっていく」からです。Q1-2を例にしてみましょう。やや改善した問でしたが、そもそも「瞳の色」という、多くの人は恐らく覚えていないであろうことを聞いています。この問いの作者の立場になった場合、きっと多くのライバーの瞳を見続けたことでしょう。見ていくうちに強い印象を持つようになり、「他の人も頑張れば解けるだろう」という考えに至ります。自分の常識が多くのファンの常識と思わないことです。極端な例を一つ示してみましょう。

Q2-1.『空星きらめ』が『小野町春香』に対して言った、自分の妹の特徴に当てはまるのはどれ?
①やさしい ②気難しい ③おしとやか ④圧が強い

「知るか」となったことでしょう。これは当人の配信もしくはぷちさんじに取り上げられた該当動画でも見ていないと解けません。もっと言えば見ていたとしても解けません。なんなら『空星きらめ』ファンでも解けないでしょう。何か特定のエピソード一点に絞って取り上げられたクイズはわからない人が大半です。ただこれはクイズを解いてもらう人の対象次第なところはあります。Q2-1を『空星きらめ』のファンコミュニティの中で共有するならギリ有かもしれません。
 対象によって使い分けるべきと思われるわかりやすい例を1つ示してみましょう。

Q2-2.次のうち『える』の本名に含まれるのはどれ?
①パキパキ ②トントン ③ドコドコ ④パタパタ

最近になって登場頻度が増えてきたように思える『える』の本名ですが、やはり依然としてこのような問は『える』のファンコミュニティの外には出られないと考えられます。ただ、「『える』の本名はやたら長い」という情報はかなり浸透してきたと考えられます。そのため、回答者の対象を「『える』のファンコミュニティ」ではなく「全にじさんじファン」にするならば次のようにしてもいいかもしれません。

Q2-3.『える』の本名に含まれる「・」の個数として正しいのはどれ?
①2個 ②7個 ③22個 ④107個

 これは、「全部は覚えてないけどなんかこれくらいの長さだった気がするから③かな~」と考えることができます。『える』ファンにとっては、本名に「ドコドコ」とか「チャコボシ」とかが入っていることを問いたくなると思いますが、無情にも知らない人にとっては「そんなん知らん」で終わってしまうことなのです。また、「Q2-3じゃ簡単」と感じる方も多いと思いますが、難易度の観点では「詳しい人にとっては常識」くらいの方がちょうどいいです。間違っても、選択肢を①20②21③22④23としてはいけません。ただの運ゲーが始まります。
 クイズを解いてもらう対象によって適切な難易度は変わってきますが、いずれにしても難しすぎる問題はあまり楽しまれません。「解けるから楽しい」という世界なのです。謎解き脱出ゲームなどでも、まったく正解が導けずに終わったらさすがに「楽しかった」とは言いずらいのではないでしょうか。

では、かなり簡単にすればみんな楽しめるのでしょうか。一概にそうだとは思いません。全員が100点をとれるテストを「楽しい」と思ってはもらえなさそうです。解けたことを「嬉しい」、解けなかったことを「悔しい」と思わせられたら、より良いのではないでしょうか。次は、そんな「嬉しい」と「悔しい」に発展させるための、取り入れられるとより良いと感じる観点です。


Ⅲ.知識を間接的に用いさせ、回答に確信を持たせないこと


 これは、知識を直接聞かず、その知識から派生して考えられることを問うものです。Ⅰの「推測の余地を残す」という観点を発展させたものであり、「最初から推測を前提として作る」という観点になります。
 例としては、2020年1月公開のにじさんじセンター試験第2問にあった「空気読み」の実況当て問題がこれに該当します。問題の形式だけ見ると、「誰が何と言っていたか?」という非常にマニアックな知識を問うものになっており、これを覚えている人はまずいません。そのため、こういった問題に直面した時の第一印象は「わかるか!」と思われることが多いです。しかし実際には、知識の組み合わせから「こんな実況をしていそう」だという推測のもと、回答を選ぶことができます。推測なので根拠がなく、基本的には確信を持ちずらいです。確信が持てていないため、正解できた時の喜びが大きく、間違ったときにも納得できるフィードバック(解説)があれば悔しい気持ちを持ってくれます。
 Ⅰの観点が「わからなかったら推測してみてね」に対し、Ⅲの観点は「知らないでしょ?だから推測してね」という感じです。ただし、この推測前提問題は作成に膨大な時間と労力を要します。なぜなら、推測の道筋をある程度作者側で用意してあげないと、ただの理不尽問題になるからです。加えて難易度の調整もあるので、よほどモチベーションのある方のみが取り組むべき観点かと思います。


Ⅳ.その他意識していること


・ひっかけ要素を取り入れる

理不尽性が発生しない程度にほぼすべての問題に取り入れています。実際ににじさんじ共通テストで出題した問題でどのように取り入れているか解説します。

Q4-1.次の4名の第4回マリカにじさんじ杯の二つ名に当てはまるのはそれぞれどれか。
ベルモンド・バンデラス、加賀美ハヤト、イブラヒム、オリバー・エバンス
①楽園のプロフェッサー ②地殻の下のビッグ・ボス
③オフロードの皇帝   ④Circuit Epic Onslaught

この問いの場合、まずライバーの属性的なものを洗い出します。
②地殻の下のビッグ・ボス
  ベルモンド・バンデラス・・・夢の人、バーテンダー etc.
④Circuit Epic Onslaught
  加賀美ハヤト・・・社長、乗り物好き etc.
③オフロードの皇帝
  イブラヒム・・・石油王、お金持ち etc.
①楽園のプロフェッサー
  オリバー・エバンス・・・教授、英語 etc.
そして、自分のではないところで当てはまりがあるところを選びます。
夢の人⇒①楽園?
乗り物好き⇒③オフロード?
石油⇒②地殻の下?
英語⇒④英語の二つ名?
といった具合で、何十人といるライバーの中からひっかけられそうな組合せを探してきました。ただし、このひっかかった推測が完全に成立してはいけません。どこかで明らかに否定できなければ、回答者に納得は得られません。今回の場合は明らかに①の「プロフェッサー」がオリバー・エバンス一択になれるでしょう。

・なんだったっけ?と考えさせる問題

先述している通り、知らなかったときに「はい、わかりません。」で終わってしまうと、楽しんではもらえていません。反対に広く知られている知識だけを聞いても、大半の人が「わかった」で終わってしまうクイズになってしまいます。そのためマニアックな知識を聞くことはせず、なるべく多くの人が少し悩んでもらえるようにおおざっぱに把握されがちなところをついています。今回のにじさんじ共通テストでいえば、第1問の名前表記、ヘアピン、プロフィール、第5問のSEEDsデビューなどです。

・知らなかった人が「へぇ~」と思ってくれそうな問題

答えを知った時、「あ、そう」で終わってしまうと、やはり楽しんでもらえてはいなさそうです。なにか新しい発見や意外性を見出してもらえるといいなと思って作っています。今回のにじさんじ共通テストでいえば、第2問3Dお披露目楽曲、マイクラの山田、第5問題材の卒業ライバー出雲霞、初配信がMirrativのライバーなどです。


まとめ


これまで5回のセンター試験風クイズを作ってみて、特に注意すべきだと思ったのが「Ⅱ.難易度設定」でした。2021年4月の「第2回にじさんじセンター試験」は過去最高の製作時間とこだわりを持って作成した問題でした。しかし実際は独りよがりのクソ難しいだけの問題となったのです。針に糸を通すかの如く、わずかな推測の余地を通り抜けられたものだけが解ける問題に、回答者はうんざりしていたことでしょう。平均点40点だったこの試験は、公開後もほとんどタグで共有されることなく終わりました。はじめは原因もよくわからず、公開時期のせいにしていましたが、過去にも受験シーズンでない時期に上げてそれなりに回答をもらえていたため、根拠としては薄く、しっくりこない日々を過ごしていました。
 今回のにじさんじ共通テストを作成するにあたり、難易度に問題があったのだろうと仮説をたて、去年より難易度を大幅に下げて挑戦してみることにしました。すると瞬く間にTwitterタグ共有がなされ、公開から28時間で回答10000件突破という過去最高記録を出したのです。問題への作りこみは変えず、基本的にはただ難易度を下げただけなのですが、ここまで違いが生まれました。タグ共有のツイートを見てみると、「こんな私でもここまで取れた!楽しかった!」といった内容のツイートが多く見受けられます。ここまで楽しんでもらえた理由は、「Ⅰ.推測の余地がある問題」が「Ⅱ.難しすぎない」ために解くことができたからだと思っています。


これからと課題


今後も毎年1月にこうして「にじさんじ共通テスト」を上げていこうかと考えています。去年のことのようにならないよう、来年も妥協せずしっかり作っていきたいです。
まだまだ私も把握できていないことは多いです。データ問題は相変わらずわかりにくい問題だがこれでいいのか。公式プロフィールは果たして楽しいクイズなのか。今年のものからさらに難易度を下げたらどういう反応になるのか。工夫できること、検討できることはまだまだありそうです。今年の成功に油断することなく、さらに面白い試験作成に向けて、精進していきます。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

2022.1.22 ヤマた

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