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地方自治小景17

廿日市市におけるシティープロモーション施策

概要

背景としては2014年に公開された所謂「増田レポート」を受けて人口減による消滅可能性自治体から脱却するための施策として開始された。第六次総合計画に盛り込まれた移住定住施策に貢献することが当初は主眼とされていた。施策の立ち上げから初期の施策の展開についての詳細はこちらのレポートを参考にしていただきたい。
以下が平成27年度のシティプロモーション事業報告書に添付の戦略概要の資料になる。

民間でペルソナマーケティングなる手法に触れたことのある人にはわかると思うが明確なターゲッティングによる広報戦略の用意がされた。施策の前年度時点の議会答弁において先行する事例として「流山市」があげられており本施策も類似事例と言える。
本施策の効果というよりも研究レポートでも指摘のあるように沿岸地域の東部、西部の宅地開発の誘導に成功したことによりターゲッティング対象の子育て世代の住宅購入需要を掴み社会増を中心に10年連続で実現する。
市長が変わったのちの2020年度以降から対外的な認知獲得と結果としての移住者の獲得に加えて内向きの、つまり廿日市市民に向けてシビックプライドの醸成を企図した施策が追加される。生涯学習という体裁をとりながら市民に対して廿日市市の地域資源等の認知向上を図るとともにシビックプライドの醸成を図る意図がみてとれる。

実施体制

立ち上げ当初は小規模な室であったが現在はプロモーション戦略課として市の広報・広聴業務とあわせてプロモーション戦略とそれに基づいたプロモーション施策を実施している。ただ、プロモーション戦略ならびに施策は一括して外注されており、本件について市の裁量により施策が具体的に実行されてはおらず、旧来型の広報・広聴業務のみが直営と言った状態にある。

主な媒体

移住定住イベントのような各種のオフラインイベント、紙媒体(パンフレット、リーフレット)や市のホームページとは別に広報用のサイトを構築している。また、五月雨式でかつ統制が一切取れていないが各種SNS(InstagramやLINE等)を活用している。
市として明確なブランドプロポジションはあるようでなく、実際問題として各種の広報媒体においてブランド構築を企図した統一性のある施策は実施できていない。

課題点

  • 市の複数の施策領域にまたがるブランド戦略や広報戦略が不在である

  • 危機管理広報の体制が未整備ないしは脆弱である(最悪でも市長、副市長、教育長へ必要なプレス対応への準備実施が望ましいができているように見えない)

  • シビックプライドの醸成を主眼におくのであればあらためてターゲットとするペルソナと目標としたい行動変容に関して取得可能な指標と目標値の設定が必要だができていない

総評

端的に言って危機感を感じること自体がおかしい指標であった「消滅可能性自治体」からの脱却が直近果たされてしまったため明確な戦略目標を失っており行政の常であるなんとなくやめる理由を考えるのもしんどいので続けている状態にある。政策提案の要点としては下記が検討可能と考える(詳細は別途)。

  • ブランドプロポジションの再定義

  • シビックエンゲージメントの向上に必要なプロモーション戦略の策定

  • 広報戦略策定ならびに実施業務の内製化

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