「リトル・ガーディアンズ 第2話」

 霧のような硝煙と、焼けた木々や草、そこへ響き渡る轟音の中、ハルトは、ふわふあと浮かぶハーブを、大きくに開いた目で見つめていた。

  ハルト「ガーディアンズ、なんだよそれ。」

 ハーブが答えようとしたとき、ひときは大きな轟音が響き、強烈な風が吹いてハルトとハーブは吹き飛ばされてしまう。


タイトル 「リトル・ガーディアンズ」


 ハルトは気が付くと地面にひれ伏せていた。慌て頭を起こし周囲を見渡と、洞窟から離れてしまったが、景色は変わらない。それにハーブの姿が見当たらない。ハルトは立ち上がり、大きな声でハーブを呼ぶ。返事は全くない。途方に暮れ立ち尽くしていると、洞窟の入り口から声が聞こえた。

  洞窟からの声「おーい、君ー。」

 ハルトは、洞窟を見ると、入り口から、ひげ面でひどく汚れた顔の男が叫んでいた。

  ひげ面の男「おーい、そこで何をしているんだ。危険だ。」

 ハルトは背後で遠く、また轟音が聞こえたのでひげ面の男のところへ逃げようとするが、足がすくみ思うように動かず倒れてしまう。すると、ハルトのもとへひげ面の男が洞窟を飛び出し駆け寄ってくる。そして、倒れたハルトを起こす。

  ひげ面の男「壕から出ては危険だといったはずだぞ。」

 強い口調でひげ面の男はハルトの両肩を抱え言った。奇妙なことにその男の服装は、教科書の中の旧日本陸軍と全く同じだった。ハルトは、もう訳が分からず何も言葉出来なかった。

  ひげ面の男「ずいぶん変な洋服だな、学徒か。」

 ひげ面の男は不思議そうにそういったが、すぐにハルトを担ぎ上げた。

  ひげ面の男「どうでもよい、きみ、壕へもどるぞ。」

 ひげ面の男が駆けだそうとしたその時、背後からヒューヒュルヒュル、と伸びやかな花火を打ち上げるような音が聞こえてきた。

  ひげ面の男「まずい。」

 そういって、ひげ面の男は地面に伏せ、抱えていたハルトの頭も押さえつけた。強烈な閃光が走り、爆音が響いた。そして、地面に伏せる二人の上を猛烈な風が通り過ぎた。ハルトは、小さくゆっくろと頭を上げ光と音のしたほうへ目を向けた。そこは、二人の向かおうとした洞窟だった。洞窟からは、黒い煙とが吐き出され、かすかに炎もみえる、

  ひげ面の男「ちくしょう、もう終わりだ。」

 ひげ面の男がそう言うと、白い霧のような煙の彼方から、キュルキュルュルっと音が聞こえ、こちらへ近づいてくる人影が見えた。ひげ面の男は震えて泣いている。ハルトはまた目を閉じた。


 ハルトが再び気が付くと、そこは元の洞窟の入り口の前だった。周囲は何事もなかったかのように木々や草が生い茂っている。ハルトは、また体を起こし周囲を見渡す。まるでキツネにつままれたような表情。

  ハルト「夢?」

 ハルトは、ふらふらと立ち上がる。体のあちこちが痛む。スマホを取り出してみると、やはり圏外、ロックをとくと、ハーブへ見せた幼いハルトと父と母の写真が表示される。ハルトは、ぼんやりと洞窟の中を見る。

  遠くの声「雨宮。雨宮君。」

 遠くのほうから、教師らしき大人とガイド、そして数名の人が駆け寄ってくる。ハルトは、その人らの声のほうを向き、手を挙げる。

  教師ら「いたぞ。雨宮君。おーい。」

 ハルトは、彼らが近寄ってくるとふらふらと倒れてしまう。


字幕 数日後


 人がまばらな電車の中に私服姿で頭に包帯を巻いたハルトと私服のさくらが座っている。車窓からは新宿の都庁が遠く見える。

  ハルト「なんで、ついてくんの。」

  さくら「私、学級委員長だし。家近いし、土曜日だし。」

  ハルト「病院ぐらいひとりで行けるよ。」

  さくら「ハルトすぐ迷子なるし、午後休診だし、あと私今日暇だし。」

  ハルト「だから何だよ。」

  さくら「病院終わったら、マックでも行こうではないか。」

 さくらがハルトの肩に肘を乗せる。

  ハルト「なんで、お前と。」

  さくら「小学生の頃は、よく行ったじゃん。」

  ハルト「ああ、そうだったな。」

 ハルトの表情が少し曇る。さくらは察したように気まずそうにハルトの肩から肘を下す。

  さくら「あ、ごめん。」 

  ハルト「何が。」

  さくら「いや、別に。」

 二人の間にしばし沈黙、周囲には人がいなくなる。その時、電車の窓の外が暗くなる。

  さくら「え、この電車地下鉄とつながってたっけ。」

  ハルト「さぁ。」

 一瞬、車内も暗くなる。そして、二人の隣にハーブが座っている。

  ハーブ「ハイハイゼヤ。」

  ハルト「ハーブ。」

 ハーブが笑顔で、二人に手を振る。さくらは驚き立ち上がる。

  さくら「なに、誰、いつのまに。」

  ハルト「生きてたのか、てか、夢じゃなかったのか。」

  ハーブ「言ったじゃん、同じ世界にいるって。」

  さくら「え、なに、知り合い?」

 混乱するさくらをなだめようと、ハルトは立ち上がる。

  ハルト「いや、知り合いてゆうか。」

  ハーブ「僕たちはドルーク。」

 ハルトの肩越しに、はーぶをみるさくら。

  さくら「さっきから何言ってんのあいつ。」

  ハルト「俺もよくわかんないけど、友達ってことらしくて。」

  さくら「ええ、中二病仲間?今度は異世界かなにか?」

  ハルト「いやいやいや、まず俺は中二病じゃないし、あいつは異世界じゃない。」

 ハルトは、一呼吸つく。

  ハルト「沖縄の洞窟で出会ったんだ。」

  さくら「あああああああ、ハルトやっぱりおかしくなっちゃてたんだ。それに影響されて 私まで、これって、集団催眠?」

  ハルト「違う、絶対違う。とにかく、危険な奴ではないから。」

 ハルトがさくらの肩をつかみそう言っていると、ハーブがふわふわ浮いて二人の間に近づいてきて、さくらに手を差し出す。

  ハーブ「はじめまして僕はハーブ。君もオレンジで、ビーノなんだね。トレアだよ。」

 さくら、浮いているハーブの足元を見て気絶する。


 電車はまだ暗闇の中を走っている。ハルト、ハーブは座席に座り、さくらはハルトの横で 寝かされている。さくらが気が付く。

  ハルト「大丈夫か?」

 さくらが、頭を抱え起き上がってくる。

  さくら「いや。なんか変な夢を見てて。」

 顔を上げると、ハルトとハーブが並んで桜を見ている。

  さくら「あー、うそ、夢じゃなかった。私たち死んだの。それとも異世界?」

  ハルト「だから、異世界じゃないんだって、それに死んでないし。」

  さくら「じゃあ、その宙に浮かぶ悪魔みたいなのは何なの。」

  ハーブ「悪魔?」

 ハルトは、悪魔という言葉を気にするハーブをいなしながら、さくらに話していく。

  ハルト「さっきも言ったけど、危ない奴じゃないし、名前はハーブ。あの洞窟で死にそうなところを助けてくれたんだ。」

  さくら「そうなの。」

 さくらがハーブを見る。

  ハーブ「ライ、ライ。」

  さくら「で、それで。」

  ハルト「うん、それでそのあとはよくわかんないけど、洞窟を出たら戦場にいて。」

  さくら「戦場。」

  ハルト「そう、戦場。そして、俺とこいつはガー何とかに。」

  ハーブ「ガーディアンズ。」

 ハーブがそう口をはさむと、ハルトはハーブのほうを向く。

  ハルト「そうそれ。ていうか、なんなんそれ。」

 ハーブは、待ってましたとばかりに二人の前に浮かぶ。

  ハーブ「ガーディアンズは、宇宙のバランスを保ちために働く仕事さ。」

 ハーブが誇らしげに、手を広げる。ハルトとさくらを唖然としている。

  ハルト「宇宙?」

  ハーブ「そう宇宙。僕らはこの世界の6次元に住んでいて、5次元を理解しているんだ。時の流れの中に、ほんの小さなブレイクえーと(綻び)ね、ができるとそれのために重力バランスが崩れ、全宇宙の崩壊につながるんだよ。それがある時間と場の交点がポイント。だから、見つけるとそれをもとに修正し流れを戻すため、全6時空に存在しているんだ。」

 語り終えたハーブは満足げだが、 ハルトは、ちんぷんかんぷんといった顔。

  ハーブ「この前の戦場で洞窟の外で一緒に助かったおじさんいたでしょ。」

 ハルトは、ひげ面の男のことを思い出す。

  ハーブ「君があそこにいたおかげで、あのおじさんは命が助かったんだよ。そのおかげで、おじさんの子孫、数億人がこれから何千年にわたって存在できるんだ。」

  ハルト「でも、俺は何も知らずそこにいただけだし。」

  ハーブ「それでいいんだよ。それで時の流れは修正されるんだよ。」

 さくらは二人の会話を聞きながら、あごに手を当てている。

  さくら「つまり、あなたは運命とかを守っているってことね。」

 さくらがおよそ理解してることのに驚くハルト、と同じくハーブ。

  ハーブ「うん、たぶん、そんな感じ。」

  ハルト「え、なんだよ、お前がよくわかってないんじゃいか。」

 ハーブは少ししょんぼりする。

  ハーブ「だって、実は僕まだ3.5次元しか理解できたないから…。」

  ハルト「どうゆうこと?」

  ハーブ「だから、いつどこに時のポイントができるかすぐにはわかんなくて。」

 ハーブ、恥ずかしそうに笑いながら頭をかく。

  ハルト「え、じゃあ沖縄で急にいなくなったのは?」

  ハーブ「転んで違うポイントにロスボイしちゃった。」

  ハルト「バカ野郎、俺は死ぬとこだったぞ。」

 ハルトがハーブにつかみかかる。さくらは、二人の間に入り止めようとする。

  ハーブ「いやいやほんとに大丈夫なんだって、君はあそこでは死なないから。」

  ハルト「うるせぇ、バカ。」

  さくら「もうやめて、電車の中だよ。」


 その時、電車が停車し、多くスーツ姿の人が乗り込んでくる。三人は、騒ぎをやめ大人しくなる。

  さくら「土曜なのにこんなに、しかもサラリーマン?」

 ハルトもあたりをきょろきょろ見回す。ハーブが何かを感じ取ったようにハッとなる。


  乗り込んできた人の中に、帽子を深くかぶりマスクを着け顔を隠した人がいる。その人は小脇にビニール傘を抱えて、足元に縛られたビニール袋を置いていた。その前に座るスーツの男が新聞を開いている。その日付に寄る。


字幕 1995年3月20日


第2話 終了


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