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ピラメキ展を終えて

今回のGWに、初めて「やま設計」として展示に出展するということをしてみました。その出展を経て考えたことや感想など貴重な体験を忘れぬよう記しておきます。
なので、場所やイベントの紹介記事という訳でもなく、私のための私が書くとっても個人的なテキストです。みなさん、ご注意を!



◎小川町、薪をくべる


埼玉県の小川町という地域にある「薪をくべる」という場所で、GW 5/3-4のすごく天気の良い2日間にマルシェが開催されました。
小川町は、5年ほど前から若い方々が移住をされてかなり盛り上がっているエリアで、まちの感じはいわゆる田舎です。有機栽培や和紙の生産地としても有名だそうですが、実はわたしもマルシェ参加の当日で2回目の訪問でした。(相方は5回ぐらい来ているそう)

池袋から東武東上線に乗って1時間ちょいで行ける意外と便利な立地で、都内と小川町の2拠点居住をされている方もいるとか。わたしも同じ沿線沿いの都内に住んでいるので、割と行きやすく少し親近感もあります。

「薪をくべる」は公式には、シェアキッチン/シェアハウス/メディアまでをも担った施設となっていますが、個人的には面白いことを何かチャレンジしている人をピックアップしてくれるパブリックに優しい「場所」という印象です。わたしも1回目に訪れた時はお友達のイベントにお客さんとして参加したのですが、その夜には「何かイベントやらない?」というお誘いも受けるほどの壁のない許容力と瞬発力の高さ、企画力です。いい感じのスピード感で面白そうだなと思い、参加してみようと思ったのでした。


◎「やま設計」 初の出展


うち「やま設計」としての出展は初めてで、建築・空間設計を軸に仕事をしている身としては、実際に何ができるかなと考えていました。たまたま相方は、趣味でというか必要に応じて(適応するサイズがあまりないようで)自らの衣服の制作をよくしていたので、この際少しばかりデザイン・ディレクションしたものを展示販売してみてもよいかなと思いました。

自らは建築家と名乗っていても、もともと建築だけを設計したいわけではなく、服も家具も彫刻もテキストも絵もいろんなものがやりたいし好きなのです。結局は、建築を学びその分野が軸になってはいるものの、「空間」という抽象的なことに興味があるので、空間にまつわる色々はすべてやってしまおうと思っていました。なので「やま“建築”設計」ではなくて「やま設計」なのです。

今回の出展には、服だけではなくカバンやペンケース、今デザインしているスツール、彫刻なんかも展示してしまって、あまり格好付けずに何でも盛り沢山にとにかくやってしまう方が、今後の自分はどうしていったらいいのかという方向性や指針のようなものが少しでも見えるかなとも思いました。とにかくやってみるのです。ということでやってみました。


◎「figure」


マルシェ全体としては「ピラメキ展」というカワイイ名前で開催されることになっていたのですが、個別の展示タイトルも付けてみました。今回は「figure」です。特に説明するほどでもないのですが、おおよそ出展物も決まったのでなんとなく秩序のようなものを作るためにもいろんな意味を含んだその語がいいかなと思っただけです。

わたしたちに割り当てられたお部屋は2階。1階は美味しい飲食系のお店やテラスでは活気あふれるワークショップが行われることとなっており、2日間で10店舗ほど出店されていました。お客さんを2階に上げるというのは、どんなテナントビルでも至難の技ですが、そこは当日になんとか気合いでビラ配り。重要なのは、他のお店の雰囲気や楽しみとは全く別の空間を作り上げることです。2階にわざわざ上がって来てもらうのだから、別の体験や楽しみを与えたいなと考えていました。

当日に初めて出展するお部屋を見てからだいたい2時間ぐらいで展示空間を作らないといけなかったワケですが、即興的な空間制作はよくやるので何となく仕上げました。持って来た展示販売品だけではつまらなかったので、薪をくべるの敷地内にあるかわいいモノたちも物色して仲間入りをさせました。それから、GWの快適で気持ちのよい空に対して繋がっていくような開放的な空間を作りたかったので、少し窓の外に顔が飛び出すような設えにして、遊びながら空間構成をしました。

できる限り圧迫感を与えず、開放的で気持ちいい空間を目指し、即興で作ったのですが、いつも思うように服の展示は結構むずかしいのです。割と大きさもあって大抵の場合は数量があるのに加えてひらひらと揺れる空間支配力が強めのやつらです。いつもこいつらとの戦いです。

それぞれのモノがそれぞれの良さをかき消さぬよう構成するのが基本ですが、たまにはずらしたり、くっつけたりとモノの配置の仕方(遊び)は個人の癖のような差が出る部分です。実はこのあたりは結構お笑いや音楽なんかに似ていたりしています。屋内も屋外も関係なく、モノを並べる様は庭づくりのような感覚でもあります。いろんな美学的なレトリックがあるのですが、これは話すと長すぎるので、また別の機会にー。



◎やり直すこと、訂正可能性


1日目もいろんな方々に来てもらって、予期せぬ見知らぬ面白い方にも出会って大変おもしろかったワケです。しかし、実際にはあんまり販売しているものが売れないなあという感じもありました。このまま2日目も同じように過ごすのは良くない気がしたので何か作戦を考えました。展示販売するモノ自体を変える時間はない。と、なると出来ることは展示空間を変えることだけが残されていました。その方が面白いだろうということが大部分ではありましたが、やり直すことで現状よりも何か良い状況に持って行こうとしました。

常に物事や世界に対して「断定しない」ということを意識しています。これは可能性を残すということで、とても創造的な態度なのです。自分の身体の可能性を拡張するために「断定しない」のです。身体は何かに固定されるととんでもなく不自由になり、たぶん創造的なことはできないでしょう。これは優柔不断ということではありません。何かを決めるということはする。でもそれは仮の状態であるということを自覚しておくということです。
こんなどうでもいいようなことを言葉を持って考えておくこと、あるいは判断基準にすることで何か自分の身体に一貫性を持つことができるのです。これは本当の意味で言語を獲得するということです。テキストは身体そのものに影響を与えることができる素晴らしいモノですが、あまりそういうことに自覚的な人は少ないようです。(何か脱線感が出てきてしまいましたのでこの辺りで辞めます。)

こういう態度や考えで挑んだ2日目です。他のお店とは別の空間を作ること、その違いを作ることを考えた1日目とは違って、今回は自ら1日目に作った空間との違いを作ることを目指しました。なので2日目は、1日目とは別の空間を感じてもらえるように空間を作ったのです。(現実にはそれを体験できるのは2日間とも来てもらった人だけだが)1日目には、仲間ではなかった薪をくべる敷地内に転がるモノたちも新加入し、何とか別の空間を作ることが出来たような気がします。

2日目の展示空間の変更は、自分が楽しみたいということと同時に売れなかったことに対する訂正も含んでいます。この楽しみと切実さの両方があることが創造においては意外と重要なのではないかと思っています。


◎展示を終えて

主催者の方に1日目の展示を見てもらった後に2日目に小さなトークイベントもしませんか?とお話を頂き、面白そうなのでやってみました。興味ある方には聞いてもらって大変楽しく、直にリアクションがあるのはいいなと思いました。自分の考えていることをアウトプットできる良い機会でしたし、みなさんがどういったことに関心があるのかも聞けて面白かったです。
以前に実験企画でやってみたウェブ展示では、ウェブオンリーだったためか少しリアクションが分かりにくかったので、もう少し改善しながら色々と考えていきたいなと思いました。でも面白かったし、やった時とは別の印象なのでまだまだここから熟成されていくことでしょう。
ちなみにそのウェブ展示はこちらです ↓ ↓ ↓
まだ見てないという方は是非!

https://drive.google.com/drive/folders/145zD6-RSunyebmVlQF0dk3pL_c0KqpAd


今回、展示をさせてもらう機会を頂いてよかったなあと思って、また何か力にもなれれば良いし、これを機会にいろいろと展開したいとも思います。主催者も出展者も皆おもしろい人たちだったのでまたしたいですね。次回までにまた日々鍛えていきたいと思います。



◎P.S. 『回転する基礎』の補足?

展示販売をしている中でわたしが作った彫刻が謎だというお声を聞いたので笑、少し補足しようかなと思います。と言っても、補足することは特に何もなくいつも謎めいた部分を自分の中にも作っておきたいというのがあります。つまり自分でも割と謎です。謎のモノを作って見せたときに興味を持ってくれたり、それについて考えてくれたりする人と関わりたいのだと思います。なんかすごく根暗な感じがしますが、深いコミュニケーションを求めているだけなんだと思います。とは言え、彫刻の側に置いていたテキストそれも含めて作品ではありますが。

作品そのものについて一言簡単に言えば、可愛さが崇高性を獲得した時のフィクションを作ったという感じです。続きはお会いした時にでも。



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