万年スタンプ台
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万年スタンプ台

yamasans

おもに請求書を発送する時に活躍する黒と赤のスタンプ台だが、これは1982年に前の出版社を設立した時から使っているものだ。覚えている限りではインキの補充もしていないので、32年間使い続けていることになる。

ふつうはどのくらいの寿命があるものなのか、スタンプ台のインキが出なくなった経験がないのでわからないが、それにしても長持ちしたものだ。

ちなみにこの製品はシヤチハタのスタンプ台だが、もともとの製品名は「万年スタンプ台」というものだった。大正14年にシヤチハタの創業者である舟橋高次が空気中の水分を吸収するグリセリンを使い、インキが乾かないスタンプ台を発明。舟橋商會を設立して販売を開始したものだ。それまでのスタンプ台はインキがすぐ乾いてしまうので、まめに補充する必要があった。

社名のシヤチハタだが、これは当初使っていた日の丸印が「国旗を商標に使用してはいけない」と指摘されたために新しい商標として舟橋家の出身地である名古屋のシンボル「金のシャチホコ」を日の丸の旗と組み合わせたところからついた。漢字で「鯱旗」としていたら、難読社名のひとつになっていただろうが、社名を変更した昭和16年からカタカナを使っている。もっともシヤチハタの「ヤ」は拗音ではなくキヤノンや文化シヤッターと同様の全角文字である。

シヤチハタの社名が広く認知されたのは、昭和40年に発売された「スタンプ台のいらないハンコ」である「Xスタンパー」の登場から。いまでもこの手の印鑑のことを「シャチハタ」と呼ぶ人は多い。スタンプ台の会社がスタンプ台を不要にする製品を作ってしまったのだから、大胆不敵なイノベーションといえるだろう。

わがロートルのスタンプ台だが、じつは赤のスタンプ台だけは新品が用意してある。といっても購入したのはずいぶん前で、古いスタンプ台と同じデザインの製品だ。シヤチハタのホームページを見ると、今のスタンプ台はデザインが変わっているので、このスペアも使用されないままロートルと化していることがわかる。

ものが長持ちするのはいいことだが、こんなにも買い換えの必要がない製品を作って、よくも今まで会社が存続してきたものだと感心してしまった。そういえば自分の名前のXスタンパーも大小2つ持っているが、これは最初の出版社に入社した時に買ったものだった。スタンプ台よりもさらに2年古いことになる。恐れ入った。

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yamasans
ライター・編集者、一人出版社。基本的に「文字で伝えたいこと」をお手伝いするのが仕事。著名出版社の下請けから、超格安自費出版のプロデュースまで、ロートルの割に守備範囲は広いつもり。昨今はインタビューを文字原稿に起こし、本や冊子を制作して流通までつないでいく仕事が増えている。