朱字

【朱字(あかじ)】
 校正紙で誤りを正したり、加筆削除したりする指示を赤い文字で記入することから、その訂正書きのことを「朱字(赤字)」と呼ぶ。このため校正作業のことを「朱入れ」「入朱」ということもある。


「赤」を「朱」と表現するのは、明治時代は筆と朱墨を使用していたためと、「赤字」では縁起が悪いから。


 かつて編集者は赤青2色の色鉛筆で校正紙に記入するのが普通だった。訂正は赤で、指示は青で書くのがルールとなっていたからである。指示に青を使用した理由は、昔の製版フィルムが青色を感じなかったので、版下に青文字があっても消す必要がなかったため。今日のスキャナーと製版フィルムは高感度なので、青で記入する意味はない。

 著者に校正紙を見せる場合、ていねいな仕事をする編集部の場合は校閲者の鉛筆書きが入ったものを渡す。校閲者がいない場合は、編集者みずからが疑問点や訂正の提案などを鉛筆書きする。朱で書かないのは、著者に決定権があることを示すため。

 写植時代の雑誌などでは、校正紙を校正マン、ライター、編集者、場合によってはクライアントに同時に回していた。校正戻しの時間を節約するためである。編集者は、戻ってきた校正紙の朱字を集約するが、それぞれが反対の直しを指示してきたりすると頭を悩ますことになる。

 DTP(デスクトップ・パブリッシング)の時代になってから、コストダウンと時間節約のために校正の作業がいい加減になっている。そのため、名の通った出版社の刊行物でも、びっくりするような誤植が見つかることが多くなってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?