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2018年をふりかえって:しごと編

2018年も、あと1日でおわりです。今年もあっという間でした。正直に言うと、「慌ただしかった」というのが正直な感想です。文字どおり「心が荒む」もしくは「荒ぶる」ようなこともなくはありませんでした(←って書くと、たいがいの4回生は「あ、また山縣は卒論のこと書いてる」って感じるかもですが、それは毎年のことなのでここには含まれていませんw)。でも、総じて実りの大きい一年でもありました。


1. 研究のこと:論文&第2著書。

これに関しては、2018年のうちに第2著書をまとめあげたいって昨年も書いてたのに果たせませんでした。自分の怠惰を愧じるばかりです。ただ、昨年に投稿し終えていた論文2編(1本は学内紀要、もう1本は昨年の学会報告をまとめ直したもの)が活字になり、来年3月に刊行される予定の学部時代の指導教授の退職記念号への投稿論文が、今、初校を返送して再校が届くのを待っている状態。なので、とりあえず1本はちゃんと書けました(←1本かよって嗤われたら、もうそれは能力不足ですって言うしかないです)。

今のところ、公表された2本にしても、校正中の1本にしても、とりあえず今の時点で書いておきたいことは書いたつもりなので、ひとまずはそれで自分を慰めるしかありません。

ただ、昨年の繰り返しにはなってしまいますが、2019年こそは第2著書をまとめあげたいと思います。強く強く。


2. 研究のこと:自分のなかでの〈経営学史〉。

上に書いたことともかかわるのですが、現在校正中の論文をともかくも書き上げることができたのは、私にとってはひと山越えた感がありました。いちおう自分自身としては〈経営学史〉を研究領域としているという、ぼんやりとした自覚は持ち続けてきたつもりです。が、それが「ぼんやり」としていたことは否めません。「経営学史なんて、もう必要ないんじゃないか」っていう自虐的な念に駆られることも珍しくはないことでした(←「お前が経営学史研究者として能力がないだけやないか」というご指摘もありましょうが、それはそれなりに自覚もしていますので、歳末に免じてご容赦くださいw)。

ただ、後述するように、昨年来、ゼミでの〈価値創造デザインプロジェクト〉などを通じて実践の方々と接する機会が増え、「むしろ、経営学史は(やりようによっては)いろんな可能性を含み持っているのではないか」という思いへと変わってきました。そのあたりのことを、現在校正中の論文では書いてみました。これに対するご批判は、また来年に承りたく存じますが、経営学史研究は実践との対話や協同的実践を通じて、実践に対してリフレクティブな思索の機会を提供しうると同時に、経営学における諸理論を経験的に研き上げうる、そのことによって経営学史は経営学における有効なアプローチの一つとなりうるということを提唱してみました。

このあたりを11月下旬に、敬愛する先達である井登友一さんと議論させてもらえたのは、まことに嬉しいことでした。


この考え方を、私自身は研究と協同的実践や対話のための橋頭堡としてひとまず設定して、来年以降の研究に活かしてみたいと考えています。


3. 実践との対話&協同的実践へのこころみ。

これは2017年から本格化したことですが、2018年も継続して活発でした。ゼミでの価値創造デザインプロジェクトについては後述するとして、私個人の活動して記録にとどめておきたいのが、4月25日の「組織を変える!何から変える?:今夜、ティールを手ほどきに組織のことをオープンに話そう!」(於:永田町グリッド)でした。これは、甲斐大樹さんと川端康夫さん主催で、羽渕彰博さん(はぶちんさん;OMUSUBI,Inc / Filament)とゼミのプロジェクトでお世話になっている木村祥一郎さん(きむしょーさん;木村石鹸工業)のトークセッション&ディスカッションというイベントでした。これは、翌日にちょっとした(私個人にとってはまことに重要なw)催しが東京であるので、ちょうどそれとも重なって都合がよかったこと、そしてゼミでお世話になっている木村さんの経営観を伺えるいい機会であることという条件も重なって参加した次第でした。

この日のイベントもものすごく濃厚で、最後まで楽しめましたが、それと同時に、5月29日に #QUM というイベントがあるという告知がありました。そこでは、きむしょーさんとはぶちんさんのみならず、昨年度にゼミのプロジェクトでお世話になった平安伸銅工業社長の竹内香予子さんも登壇されるということで、火曜日という私にとっては授業が一番忙しい曜日なのにどうしたものかと思い悩まされることになったわけです。

しかも、ゼミ生たちがインターンとしてお世話になっている浅野智先生主催のXデザイン学校大阪分校で師範代的な役割をも担っておられる佐藤啓一郎さんが、このQUMの主催であるFilamentに4月から参画されたのも、背中を押される要因の一つでした。

加えて。

Hiroki Sunagawaさんから「経営学部でサービスデザインを学ぶ / 教える意義とは?」というお題でしゃべってくれるように依頼を頂戴して、実際にしゃべらせてもらったのが5月23日のService Design Drinkでした。私がしゃべった内容はともかくもですが、その終わりごろに富国生命ビルのYahoo! Japanのフロアにおいでになったのが、Filamentの角 勝さんでした。Facebookのタイムライン上ではお名前やお顔は存じ上げていたものの、催しにはおいでじゃなかったので、正直まさかと思いました(笑)そのときにできたご縁が、この歳末に至って、ここまでになるとは、少なくとも7か月前には想像もしていませんでした。この出会いが、翌週のQUMへの参加を決定的にしたことは間違いありません。

そして、5月29日のQUM。これについてはすでに書きましたので、そちらをごらんください。

すでにこれ以前にも、実践の世界でいわゆる経営学原理に類する領域についての関心が高まっているのかなっていう感覚はあったのですが、QUMに参加したことで、その感覚がどうも的外れではないなという確信に至りました。

そして、その同じ週の木曜日(6月1日)には、PanasonicさんのWonder Labで中尾将志さんがニックリッシュについてLTをしてくださる(LTというより、ちゃんとした報告でした)というので、ツッコミ担当(?)として参加。経営学史叢書の『ニックリッシュ』の巻を手がかりに、ニックリッシュ学説とはどんな内容なのかを報告してくださいました。往古は知らず、ここ10年くらいのあいだで実践の方がニックリッシュに関心を持ち、それにとどまらず報告までしてくださったことなんてあったでしょうか。それだけでも、私にとっては涙が出るほど嬉しいできごとでした。そして、聴いてくださるみなさんも、かなり深いところまで質問してくださって、ゼミが終わったあとながら、かなりの昂奮を得ることができました。経営学史だって、実践と対話できるっていう念を強くできたというのは、私にとってほんとうにありがたいことでした。

そのほかにも、QUMのOnline Sessionに生で参加したり(しかも、翌朝は1限の授業なんで、泣く泣く最終の新幹線で帰ったり)などなど、実践の方々との接点がどんどん広がっていきました。

さらに、QUMでのご縁で、北島昇さんや角さんに卒論に関するインタビューにお力添えを願ったりもできました。

11月には #QUM_BLOCKS が大阪で開催され、それにも参加しました。

昨年も自分自身にとって驚くほど実践の方々との接点が増えた一年だったのですが、2018年はそれを上回るほどの拡がりでした。先に書いた経営学史についての私なりの見解は、今年の経験なしにはありえなかったものです。経営学史という方法に立脚する限り、すぐに見聞きした実践を考察対象として採りあげるかというと、なかなかそうはなりません。けれども、経営学史という、いわばメタ的な領域において抽象化された思考枠組を、個々別々の現象と突き合わせることで、どこまでその思考枠組が有効であるのかを験証できるというのは、研究としてきわめて大きな意義があると考えています。同時に、経営学史研究者として、いくらかなりとも蓄積してきた思索を抱き持ちつつも、いったんそこから離れて実践の方々との対話をすることが、実践の方々にとっても何がしかの益となりうると考えられるようになりました。

その意味で、このあたりは論文化こそされていませんが、私にとっては2018年の重要な研究蓄積でありました。


4. ゼミ活動のこと:〈価値創造デザインプロジェクト〉1st Seasonから2nd Season、さらに3rd Seasonへ。

ゼミの〈価値創造デザインプロジェクト〉もゼミ第9期が展開した1st Seasonから、第10期による2nd Seasonへ。いろいろ顧みれば、ほんとにいろんな偶然の産物として、このプロジェクトは存在し、そして続いているのだなぁって思わずにはいられません。いつか名称や内容は変わるかもしれませんが、理論的思索と現場的実践の両方を往還しながらやっていくというスタイルは、今のところ、これからも継続していくつもりです。

2月に第9期のPJ成果報告会を開催して、一区切り。

そこでの反省事項もたくさんありました。これは、メンバーの、ではなく、私の反省事項です。その最大のポイントは、「いくら課題発見といっても、やはりある程度の大きな課題は設定しておく必要がある」こと、そして「プロジェクトを展開していくうえで、必要な思索&実践の方法をちゃんと身につけてもらう必要がある」こと、この2つでした。

幸い、今年度は上述のXデザイン学校大阪分校で、主宰の浅野先生がゼミメンバー3名と理工学部の学生1名をインターンとして受け入れてくださいました。これは、ほんとにありがたいことでした。いくら大学で実践的にやるといっても、残念ながら現状では限界があります。それに、社会人の方々に交じって実践的に学ばせてもらうこと、ここにこそ重要なポイントがあります。

これなしには、価値創造デザインプロジェクトの進展はありえなかったことは疑いを容れません。

さて、第10期の2nd Season。3社さまが昨年度からの継続で、3社さまが今年度から。

まだ終わっていないので、結論を出す段階ではありませんが、課題も見えつつ、昨年度からいくらかなりとも進歩できたかなっていうところもありそうです。このあたりは、来年2月後半に開催予定の成果報告会でちゃんと整理して申し上げたいと思います。

とはいえ、2年続けてやらせてもらって、山縣ゼミとして標榜すべきなのは「価値のありかを見出し、価値の流れを創り出す」というところにあるのだなっていうのは、見えてきたようにも思います。

2nd Seasonになって、思索&実践の方法については、私も一緒に考えるかたちで、昨年度以上に意識して摂り込むようにしました。ただ、まだ足りないなっていうところも多々あります。このあたりをどうするか、すでに第11期メンバーは確定して、プレゼミとしても動き出しているので、改良していきたいなと考えています。

それにしても、12月に開催された合同ゼミで、必ずしも自分たちの納得できる結果を得られなかったメンバーたちが、悔し涙を流していたのは印象的でした。もちろん、冷静に振り返れば、十分でないところがあったのは確かです。ですから、その結果はしっかり受けとめなければなりません。けれども、そこまで悔しいと思えるだけの努力をしていたことは事実です。むしろ、教員としてなすべきは、この努力を適切なヴェクトルへと方向づけることであろうなと思います。そのヴェクトル自体、教員があらかじめ設定してやるべきものではなく、むしろメンバー自身が見出していくべきものであるのも確かですので、そのあたりを十分に留意しながら、これからに反映させていきたいなと。


3rd Seasonに入る第11期、これまでの2年間の成果と反省を生かしつつ、より魅力的なプロジェクトにしていきたいなって思ってます。さっそく有志がADKさんのワカスタビジコンに参加するってんで、ここからサービスデザインの考え方などを活かすトレーニングを始めてます。


5. ゼミ活動のこと:第9期卒論


第9期は卒論。
提出された本文をまだ見てないので、書くことはあまりないのですが、差が明確にあらわれたことだけは言えそうな状態になりました。

基本的に、全員に同じことを伝えています。そして、わからなければ研究室に来るように伝えてますし、実際に来るメンバーは来てます。

結局のところ、卒論は個人プロジェクトに他なりません。自分自身で問いを立てる、その問いに必要な概念枠組を見出す(=先行研究の理解)、問いを考えるための事実(事例、データなど)を集め、分析する、そこから解釈し、自らの見解を導き出す。このプロセスそれ自体は何度も繰り返し伝えてます。あとは、本人がやるかどうかだけ。

やってみて、一発でできる人なんてそんなにいません。だからこそ、個別の指導が必要になるわけです。ここで初めて、それぞれの状況に応じたコメントができるわけです。

そのことをわかってるかどうか。
これは毎年同じことを言い続けてる気がします。

ただ、今期に関しては、優れた卒論は明確に優れていると言えそうで、そこはちょっと安堵してます。その分、そうでないものは…。



6. プロジェクトからのご縁の拡がり。

さて、プロジェクト関連の話に戻ります。
価値創造デザインプロジェクト2nd Seasonでは、もちろんメインにかかわってくださっているプロジェクト先さまとご一緒にさまざまな試みをさせていただいたわけですが、そのなかで、いとへんuniverseさんとのプロジェクトでは、個人的にものすごく憧れである京町家のリノベーションの先駆的存在である八清さんとご縁ができたり、木村石鹸工業さんとのプロジェクトでは、今日まで阪急百貨店阪急うめだ本店で開催されていた「日本ものづくり市」での「OSAKAものづくり市」で、一緒に出展されている企業さんのご紹介に与り、来年度のプロジェクトに発展しそうな話も出てきたりと、ほんとうにありがたいご縁の拡がりも生まれて、私にとっては感謝の言葉が見当たりません。

2019年度のプロジェクトについては、ほとんどまだ何も決まっていません(というか、まだ考えれていませんw)が、さらに充実したものにしたいと考えています。どうぞみなさま、よろしくお願い申し上げます。


7. まとめ

ということで、いろいろ長々と書いてまいりました。

2018年もあっという間でした。あっという間だったということは、充実していたということだと思います。個人的には、これで後厄が終わります。ちょいちょい何やかんやありましたが、それもこれからにむけての跳躍のために必要なことなんだろうなと。

何やかんや言うても、大学教員生活も丸16年が終わろうとしています。無事に定年まで勤めあげることができるとして、あと24年。まだ半分には到達していないので、若手の心持をなお抱きつつ、体力の衰えをうまくいなしながら2019年も楽しみたいと思います。

みなさま、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます!

#2018年ふりかえり


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