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価値創造デザインプロジェクト3rd season(ほぼ)完了。

今週月曜日(2020年2月17日)は、近畿大学経営学部山縣ゼミで展開している価値創造デザインプロジェクト3rd seasonの成果報告会でした。

プロジェクト先のみなさま方、また観覧&コメントにおいでくださったみなさま方、ほんとうにありがとうございます。

「そもそも」を問い、そこから〈価値のありか〉を探究した一年:3rd season概観。

今期のプロジェクトを総括的にいうなら、このように言えるかな、と。

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新商品の企画から販売までをやらせてもらったチーム(2つ)もあれば、単に魅力を伝えるだけではなく、それを新たな価値提案に結びつくような関係性構築の場としての展示会を企画・開催したチーム、地域活性化のための定性調査&分析を重ねてきたチーム、新しい価値提案そのものには結実しなかったけど、その根底にある理論的視座の発見と提言までおこなったチーム。

もちろん、最初からうまくいっていたわけではありません。やっていくなかで、いろいろと迷い、ぶつかり、探りながら進んでいった結果として、ここに到ったのかな、と。

1月12日にあった合同ゼミではどのチームも今ひとつ切れ味を欠いていました。今日の段階でも「もうちょいここを詰めたら、もっと力強いことを伝えられるのに」と歯痒く感じるところも残っていた部分もあります。でも、成果報告会でのプレゼンテーションでは、合同ゼミのときよりも練り上げ、琢き上げようとする姿勢は明らかでしたし、それはいくらかなりとも結実していました。

はっきりしてしたのは、今期のプロジェクトがきわめて“濃密”なものとなっていたこと。うちのゼミは商品企画“も”やりますが、それだけではありません。プロモーションがテーマになること“も”ありますが、やはりそれだけではありません。

〈価値の流れ〉〈価値の循環〉を構想し、可能な限りにおいてカタチにする、そしてそれを理論的に考察することで、何がしかの知見を得て、それを示す。それが、山縣ゼミでの学びの基礎です。

そして、そのベースにあるのが、

「そもそも」を問い、そこから意味のレベルまで探究し、実践へ。そして、省察し、概念化することで新たな援用可能性を。

という点であったと思います。

大学生として、プロジェクト先のみなさまにお返しできるのは、学生がとことんまで思索し、試行し、また思索する、そういった繰り返しの結果として、プロジェクト先のみなさまが気づいてなかった視座を提示すること、ここだと思ってます。

教員がいうのは手前味噌ですが、それぞれに濃厚な成果報告となっていました。

⇧は、成果報告会で私が総括した各プロジェクトのサマリーです。

※ 私が各プロジェクトをまとめなおしたスライドは、後刻ここでもアップします。←2020年2月24日にアップしました。

私自身が若干不満を抱いた(笑)1月12日の合同ゼミでの報告よりは、どのチームもだいぶブラッシュアップしていたと思います。

加えて、今期のプロジェクトは継続展開する可能性がけっこう高く、ここで終わりではない感が濃厚。区切りがありつつ継続展開の可能性があるというのは、個人的に高く評価していい点だと思ってます。何となく終わらなくて続くというのではないからです。

今まで、次の代にプロジェクトをつないでいくということは、あまりやってませんでした。マンネリになるのが嫌だから、というのが最大の理由です。ただ、今期に関しては、メンバーにその意欲があるなら、4回生でも継続展開していいかな、というより、やってほしいなと思ってます。それを卒論としてまとめてもらってもいいわけなので(←もちろん、論文としての書き方はちゃんと踏まえてもらいます)。

それだけの意義と価値のあるプロジェクトになったと思います。

これに研究まで、さらなるレベルを求めるのはハードに過ぎるのかもしれません。が、違う見方をすれば、ここまで充実したプロジェクトをやってきたからこそ、よりシャープな切れ味を求めたくなるのです。ここは第11期の卒論、あるいは4回生でのプロジェクトに期待したいと思います。

同時に、これからやる第12期のメンバーには、第11期を超える気概と熱量でもって、思索&実践してほしいと願っています。

能動的そもそも論と〈意味のイノベーション〉

ここからは、今期のプロジェクト&それに関連する私の思索から導き出された私見です。

今回の私の総括報告で主眼を置いたのは、この〈能動的そもそも論〉

だいたいにおいて「そもそも論」というのは、かなりネガティブな意味合いで用いられます。たしかに、「そもそも、そんなことやる意味あんの」みたいな、アイデアなどをさしたる根拠もなく挫くだけの「そもそも論」であれば、全くもって不要で、そんなものは唾棄し去ってよいのです。

ここでいう〈能動的そもそも論〉とは、今まで無意識、あるいはわかっていても脱しきれなかった根拠の疑わしい“常識”を乗り越えて、自分たちのやろうとしていること、さらには自分たちの存在意義をも「そもそも」と問い返す営みをさします。これは、別言すれば「意味を問い返す」ことそのものです。

前向きに「そもそも」を問うとき、そこに立ち現れる可能性ないしポテンシャルは、一つではありません。当然です。存在は、基本的に多面体であり、多様な関係性が織りなされたものとして現れます。ギブソンのアフォーダンス概念が、基本的に〈モノ〉のもつ多様な相=関係性の可能態を捉えようとするところに特徴があるとするなら、アフォーダンスを問い返していくことであると言えるでしょうし、多様なアフォーダンスのなかから立ち現れる「とある側面」は、ある主体とその対象との特定の関係性であり、かつその関係性はその主体にとっての〈意味〉として現象すると言えるように思います。

「能動的な“そもそも”」によって、その対象が内包する豊饒な可能性を明らかにし、そこから新たな意味を創造していくというのは、ベルガンティが提唱した方法とは異なるかもしれませんが、意味のイノベーションに通じるのではないかと考えています。

感性を琢き、論理を鍛える。

意味を創造しようとするならば、感性(審美性)を琢く(みがく)、あるいは豊かにするということは必須です。それこそ、「そもそも、価値を創造する」とは〈その人の生活世界に、何がしかの充たされをもたらす〉ことであると規定できます。

もちろん、そのための価値提案が相手によって「よい(佳い / 好い / 良い)」と判断され、何らかのかたちで相手、もしくは他の誰かから対価ないし反対給付(見返り)が提供されることが、価値創造活動(=事業)の経済的持続可能性の必須要件となります。サービスデザインがなぜビジネスモデル、ことに価値循環を念頭に置いたCVCA(顧客価値連鎖分析 / 価値循環マップ)の描き出しを重視するのかというのは、まさにこの点にかかわっています。

つまり、〈生活世界〉を構想しなければなりません。生活世界は、人の存在はもちろんですが、その人が生きていくうえで周りに存在するモノやコト、情報など、そしてそれらのかかわりあい(関係性)によって成り立っています。この生活世界は、感性的側面と悟性的側面が織りなされて生じます。

そのためには、当然ながら生活世界に対する審美性は避け難く重要ですし、それを成就するための実装能力や実装を可能にする技術や知識、知見も必要です。

現在の生活世界に立脚しつつ、新しい生活世界を描き出すこと、これこそ企業者的構想力と呼んでよいと思うのです。

このあたり、経営史学者の大河内暁男が『経営構想力』という概念を提唱したのは、先駆的であったといえましょう。

大袈裟はありますが、価値創造デザインプロジェクトで研いてほしいのは、この企業者的構想力あるいはそのための基礎的視座・姿勢なのです。

メタレベルに立ち返る習慣が、前進的試行錯誤を可能にする。

さらに、自らを俯瞰的に眺め、捉え返すための概念枠組としての理論的知見の蓄積とその活用も、じつは欠かせません。

近年、経験学習モデルが重視されているのは、単に実践経験を積むだけでは、その人の実践能力を高めるとは限らないことが共通認識になってきたからであろうと思います。コルブが省察的観察や抽象的概念化を重視し、コルトハーヘンがALACTモデルを提唱しているのも、この点と深くかかわっているといえます。

コルトハーヘンの存在については、高広伯彦先生のご教示によって知るを得ました。ありがとうございます。その後、立教大学の中原淳先生もブログで紹介してらっしゃるのを拝見しました。

価値創造デザインプロジェクトの成果報告会や、それに先立つ合同ゼミで、理論的視座を提示することの重要性を、耳に大ダコができるくらい強調するのは、このためなのです。

「事例くれくれおじさん」(おじさんだけではありますまい。大学生でも、事例ばかりに目が向くケースは少なくないので)という呼称がありますが、いくら事例をたくさん知ったところで、そこに共通する原理や、なぜ異なる結果に到ったのかを導き出さなければ、何の意味もありません。

うちのゼミに来て、そんな人間になって社会に出て行ってもらいたくない。そういう思いは、つねに抱いています。

だって、そういう人って、応用力もなければ、創造力もないからです。

私自身は、経営学史という理論史・思想史をメインに研究してますが、そこに無理くりくっつけたいから、というのではありません。もちろん、結びつく、という信念はあります(笑)

〈価値創造デザイン〉を名乗る以上、そこのところは大事にしていきたいと念じています。

これからに向けて。

さて、次年度の準備を始めなければなりません。今期、プロジェクトとしての学びの実りはかなり大きかったと感じています。これは、商品企画が成功したとか、カタチにならなかったとかいう次元の話では、まったくありません。

ただ、だからこそ次に向けて、整えていかなければ、と感じた部分も少なくなくて。

(1)日々の思索と実践をきちんと記録する。

これは、実のところ毎年言うてます。なかには、ちゃんとメモ帳やノートを持って、いろいろと記録してたメンバーもいます。やっぱり、それを怠っているメンバーって、生データを「録って」ないわけなので、思索も実践も浅くなりがち。

メモをとりゃそれでいいのかというと、もちろん違います。記録するのが目的ではないので。けれども、一つひとつの記録(観察情報や、事実情報、統計情報などだけでなく、その分析なども)は、思索を重ねていくうえで、クリティカルに重要です。

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今日、こんなのを買ってみました。理系では当然なのでしょうけど、文系ではこういった記録の方法を教わることも、まずありません。ちょっと見様見真似で試用してみたいと思います。

(2)〈思索&省察〉にもっとこだわる。

これも、今までやり始めていたことではありますが、次年度(というか、今)から取り組んでみたいと考えてます。

例えば、プロトタイピングを繰り返してみてって言うても、それだけじゃメンバーもなかなかピンとこないと思います。ちゃんとスパイラルな学び(経験学習 / ALACTモデル)のプロセスとして織り込まないと。

そこからの今期の反省として、「ゼミの正規の時間を活かしきれてなかった」というのがあります。もちろん、ゼミの正規の時間に何もしてなかったってんじゃありません。しかし、やはりゼミの正規の時間は〈省察〉〈概念化〉に用いるべきだな、と。少なくとも、2コマ使ってるんやから、1コマは〈省察〉〈概念化〉に用いることにしたいと思います。

これは、別に理論的な省察に限定されるのではありません。むしろ、自分たちが考えていること、やっていることをexpressionし、他者からの批判(←言うまでもなく、ケチをつけるということではありません。研いていくというプロセスとしての批判です)を仰ぎ、それによって自分たちの省察をさらに深め、創造への途を進めていくこともまた、大事な省察です。

そのためにも、第11期にも第12期にも願いたいのは学術的文献に数多く触れて、“研究”という視座&姿勢を身体化してほしいと強く願っています。研究というのは学者だけがすることではありません。福岡大学商学部の森田泰暢先生が展開しておられる〈ヒマラボ〉などは、多くの人が“研究”という実践に足を踏み入れられるようにしようとする試みの一つだと思います。

“研究”という姿勢が身につくことで、今まで囚われていた常識的観念からの創造的超克がやりやすくなります。思索や省察なども、もちろん“研究”のプロセスに含まれます。

ここがもっと深まってりゃ、もっとおもしろくなるはずです。次年度に予定してる学年縦断型プロジェクトでは、むしろ〈思索&省察〉がきわめて重要になってくると思います。

(3)スパイラルな学びのプロセスを、よりしっかりと。

頭でわかってても、なかなか採り入れることができてなかった点。次年度こそ、ここに本腰入れます。

私が今年度に学ばせてもらったサービスデザインのプロセスは、ものすごく巧みに(しかも、適度な余白を仕込みつつ)“デザイン”されたスパイラルな学びでした。一年くらいでサービスデザインがわかったなんて、とてもじゃないですが、思っていません。むしろ、スタートラインに立てたというのが、ほんとに正直な実感で。


時間が許すならば、Xデザイン学校にも通いたいと思ってますが、同時にゼミでのプロジェクトを“サポート”するなかで、このスパイラルな学びを少しなりとも実現できるようにしたい、そう念じています。

ちなみに、(1)で書いた〈記録〉も、これとつながってます。

これ以外に関しては、2019年度のレベルを落とさない、できるならばそれを超えることができるように、熱量と鋭利さの持続的両立をはかるというところかな、と。

ひとまずのまとめ。

長々と書きました。

今期のプロジェクトを振り返ってみて、めざしている方向へ進めていることは実感できています。あらためてみんなのがんばりに称賛を送りたいと思います。

ただ、これが完成完結ではありません。さらなる深み、さらなる高み、さらなる広がりをめざしてもらいたいと強く願っています。私も、それを実現できるように、これからもガチでやっていきます。

あらためて、2019年度の価値創造デザインプロジェクトにご一緒くださったプロジェクト先のみなさまに、言葉ではあらわしきれないほどの心からの感謝を捧げます。ほんとうにありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

また、成果報告会においでくださったみなさま、またさまざまなかたちで支援くださったみなさまにも、深く御礼を申し上げます。ありがとうございます。

第11期のメンバー、ひとまずの区切り、おつかれさんでした。しっかりと成果を示せていたと思います。4回生、引き続きプロジェクト&卒論がんばってな。

第12期のメンバー、ビジコンチャレンジ報告おつかれさんでした。きわめて限られた時間で、まずはよくがんばったと思います。とはいえ、これからです。価値創造デザインプロジェクト4th seasonがさらに充実したものとなるようにがんばってな。






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