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ちょっと後半息切れしたかも。な、2023年ふりかえり。

2023年も終わろうとしています。仕事は残っています。年内にやるべきことが。けれども、先にこれを書いときます(笑)

2023年、長かったような気がします。といって、この長いというのは、おもしろくなかったとかいうことではまったくないのです。むしろ、いろいろできたこともたくさんありました。だから、長く感じるのかもしれません。

1. アントレプレナーシップへの美学的・詩学的アプローチへの展開。研究その1。

2023年の研究の多くを占めていたのは、これでした。
幸いなことに、2023年度から科研費の基盤研究(C)を交付してもらえることになりました。勤め先では、科研費申請が基本的にmustなので、毎年出してたのですが、恥ずかしながら一度として交付されたことはありませんでした。積極的でないわけではなかったのですが、やはり気魄を欠いていたのかもしれません(気魄だけで承認されるものではないです笑)。

これは昨年度のことになりますが、学内〆切寸前になって、それまでのを若干使いまわしていた(←こういう表現になるところが、そもそもダメだったわけですが)ところ、ふと「自分の好きなことをやる!」ってなぜか吹っ切れて、担当事務の方にも「ちょっとだけ遅れるかもしれません、ごめんなさい」って連絡入れて(結局は、数日前に出せました)、全部書き直しました。それが、以下のようなテーマです。

これに関連する文献は、それまでもいろいろと買い漁って読んでました。何となく研究テーマになりそうやなぁくらいのことも思ってました。で、「これであかんかったら、それはそれでしゃあない」ってなって、研究計画書を書いたら、申請に通ったという次第です。

おかげで、2023年、これに関連する文献をたくさん揃えることができました。科研費で足りない分は、自腹で買ってますが(笑)

そして、何を思ったか、組織学会研究発表大会が京都産業大学であるというのを知って、応募したりもしました。ありがたいことに採択してもらうことができ、報告できました。ありがとうございます。

報告の折、多くの先生方からありがたいコメントをたくさん頂戴しました。このテーマで研究していけそうやなという心持になれたのは、嬉しいことでした。

まだ論文になるところまでいってませんが、このテーマでしばらくは研究を進めていきたいと思ってます。

実は、私にとって今年の数少ない(唯一?)の忘年会が12月29日にあったのですが、そのときに木村石鹸の木村祥一郎さんや金永樹さん、ゼミOBで木村石鹸PJのメンバーだった吉村佳樹(企画ありがと)、そしてXデザイン学校大阪分校2019年で同じチームだった木倉谷伸之さんと話をしているときに、けっこうヒントになる話がいろいろ出てきて、経験的な研究も少し視界が開けてきた気がしてます。

研究業績を焦って出していかないといけないわけではないので、拙速にならずに、しかしダレずに進めていこうと思います。

2. マンズィーニ『ここちよい近さがまちを変える/ケアとデジタルによる近接のデザイン』の翻訳。研究その2。

これも2022年から継続していた研究。コロナ禍で安西洋之さんや山崎和彦先生、本條晴一郎先生、澤谷由里子先生と始めたオンライン研究会のなかで、このマンズィーニの新著を読むということが始まり、これを訳出しようという話になりました。

ちなみに、楽天ブックスだとすぐに買えるようです。

マンズィーニのデザインをめぐる議論は、意味のイノベーションなども含めて、デザインという概念を捉えるために、気になっていました。実際、子の研究会でも、2015年の著書を読んだりもしてました。

翻訳って、以前にも参加させてもらったことが何度かありますが、たいへんです(笑)でも、どうやったら原著者の伝えようとしていることを日本語として表現するか考えるのは、すごく学びになります。

しかも、この本、まちづくりをめぐるデザインの議論。そして、私が担当したのは、マンズィーニの担当章ではなく、イヴァナ・パイスによる寄稿の箇所。なかなか難儀しました。けれども、八尾市産業振興会議にかかわらせてもらってることもあって、知見として得られたことは多かったです。

何より、デザインという考え方において、「かたちにする」「しくみにする」という側面だけでなく、「ささえる(care)」という側面をどう織り込んでいくのかという視座を手にすることができたのは大きかったです。

この翻訳に関連して、対面&オンラインのイベントもできて、関心を持ってくださる方々と交流できたのも、すごく楽しかったです。

3. 経営学史のこと。研究その3。

1.で新しいテーマでの研究を始めたので、「経営学史はやめたのか?」って思われる方もいらっしゃるかもですが、やめてません(笑)

昨年度の経営学史学会全国大会での統一論題で報告させてもらった内容をベースにした論文が活字化されました。

経営学史方法論のようなことを書いたのですが、自分のなかでまだちょっと熟れきってないなぁという実感はあります。経営学史そのものを書かないといけないのかもしれません。

そんななかで、大学院時代の指導教授から「ドイツ語圏の経営学史の通史を共著で書かへん?」という話をいただき、私の進捗がきわめて遅いのですが、企画としては進んでいます。がんばります。

あと、来年4月ごろの〆切で、とある先生の退任記念号に寄稿してほしいというありがたいご依頼を頂戴しました。その先生も、ドイツ語圏の経営学史研究をしてらっしゃる方なので、まだ仕上がっていない2冊目の単著(出版社も何も決まってませんし、刊行できるかどうかわかりません笑)の最終章になる内容にしようかと思っています。

この2冊目の単著(予定)、構想としては2016年とか2017年ごろにはほぼ固まっていたのに、何やかんやとほったらかしにしてしまって、いまだにまとめきれていません。けれども、いつまでもこれをほっておくのも気持ち悪いし、新しいテーマに進んでいくためにも、そして後で書く(かもしれない)サービスデザインに関する基礎としても、やっぱり「けり」をつけておきたいなと、また思うようになってきました。

逆に、サービスデザインとかに、この数年間かなりどっぷりつかったおかげで、その観点からニックリッシュの価値循環思考やコジオール学派の経営学説を捉え返せそうな感じにもなってきました。

そういうわけで、2024年以降、経営学史研究もちゃんとかたちになるようにしていきたいと思います。

4. サービスデザインとかデザイン経営とか。ちょっと実践寄りのこと。

近畿大学にデザインクリエイティブ研究所ができて、2年目に入りました。本格的に動き出してきて、活動も増えてきてます。

そこと完全に直結してるわけでもないですが、サービスデザインへの関心は相変わらず持ち続けてます。ゼミでも、サービスデザインをベースとしたプロジェクト活動を続けてます。

このサービスデザインってのも、学問的に確立された体系を持っているわけではありません。基本が実践ベースなので、それはそれでいいかなとも思いますが、それでも「(他ではない何らかの実践的枠組としての)サービスデザインって何?」て問題は存在します。

このあたり、2023年の後半になってきて、社会的な状況にも変化が出てきてますが(IDEOの日本撤退など)、サービスデザインの考え方の重要性が低くなったとは全く思ってません。むしろ、企業のすべての活動のなかにサービスデザインの視座が入り込んでいかないといけない段階に進んできたんじゃないかとさえ思ってます(ここらへんは、詳細に検討しないといけないところですが、ひとまずは直感です笑)。

そうなってくると、サービスデザインというのを「協働を通じた価値創造」(←広い意味での「経営」)にどう織り込んでいくのか、そこをていねいに考えていく必要があるなと感じています。

実際、近畿経済産業局の委嘱でやらせてもらっている関西デザイン経営推進研究会(座長してます)での議論でも、それに近い話はけっこう出てきてます。さまざまな変化のなかで、企業が脱皮しつつ、生き続けていくためには、表層的・形式的な段階にとどまったままのデザインの話では、まったくもって足りません。

ここらへんは、研究としてというより、実践やあるいはゼミなどでのプロジェクト活動としてというほうが主になるかもですが、上に書いた研究テーマともリンクしてくるので、2024年度も考え続けたいなと思ってます。

5. ゼミのこと。

ゼミのやり方自体は、ここ数年で安定はしてきました。安定してきたというのがいいことなのかどうかはともかく。あと、コロナ禍がいちおう収束に向かっているということで、活動がかなりやりやすくなってきました。

(1)15th_価値創造デザインプロジェクト。7年目。

プロジェクトそれ自体は、毎年のように紆余曲折がたくさんあります。それでいいのです。

ただ、合同ゼミがなくなってしまったこともあってか、プロジェクトやることだけにばかり意識が向いてしまってるケースもちょっと見られて、そこは懸念事項ではあります。このプロジェクトは、もちろん実践も重視しますが、それを理論的に捉え返すというのもセットだからです。それを抜きにした価値創造デザインプロジェクトはありえないので。

となると、研究という観点をどうちゃんと根づかせるか、そこが課題になってきそうです。

とはいえ、コロナ禍でなかなか実地での活動を展開できなかった京丹後PJ(インフォバーンさんとのコラボPJ)では、京丹後市峰山町で高校生向けのスペースを開設・運営されているroots 京丹後市未来チャレンジ交流センターさんで、高校生と一緒に京丹後のいいところ、ちょっと物足りないところなどを書き出していって、そこからカケアイカードのもとになるフレーズやワードを構築してみるという2回構成のワークを実施しました。

これ、なかなかおもしろいことになりそうです。私は行けなかったのですが、メンバーたちが入念に準備して、実施してました。ちなみに、そのときのInstagramライブを残してくださってます。ありがとうございます。

あと、今年から始まった藤田金属さんとのプロジェクトでは、「洗うところまでフライパン体験」(←これは、あとで浮かび上がってきたフレーズです笑)ということで、藤田金属さん×高田耕造商店さん(和歌山県海南市のたわし屋さんです)×近畿大学山縣ゼミで「TAWASHU」という鉄フライパン向きのたわしを企画しました。

あと、6年目に入った友安製作所さんとのプロジェクト。ここ数年、ホームパーティー推進委員会とリンクして、ホームパーティーを広めるというテーマで活動してます。

ゼミでも新メンバーの歓迎も含めて、実験的にホームパーティーをやってみたりしました。

2024年2月5日には、近畿大学内で(申込制ですが)実証実験的にホームパーティーを開催する予定です。

その他のプロジェクトも、いろいろがんばって進めてくれてます。

そうそう。それと、久しぶりに常葉大学造形学部の安武伸朗先生の研究会と一緒にワークショップできたのも、すごく嬉しかったです。大学とか学部とかを超えたワークショップイベントって、楽しいです。

(2)14th_卒論。

ひとまず、年内に全員、卒論は出し終わりました。
だいたいちゃんと仕上げられたメンバーもいます。が、そうではないのもいてます。なので、まだ完全には終わっていません。

どのメンバーも、いい加減にやってるということはあまり感じられなかった(進めるのが遅いとか、ちゃんとこちらの説明を聴けてないとかいうのは、もちろんあります)です。ただ、文章をちゃんと書く習慣がない、当然、論文をはじめとする論説的文章をちゃんと読む機会を活かしていないといった状況がよりくっきり出てきたような印象もあります。

このあたり、かつては「教えなくても、当然わかってるやろ」みたいなところがあったように思いますが、そうではなくなってきてることを顕著に感じます。同時に、教員側もそこらへんを伝えていかないといけないと痛感しています。

てなことを書くと、「プロジェクトみたいなことやるよりも研究だ!」みたいなご意見が出てくるかもしれませんが、それは違います。むしろ、広い意味での経営という実践への経験がなかったら、対象を捉えることも難しくなると思っています。その点で、プロジェクトのような実践的な学びと、いわゆる研究とをちゃんと関連づけたカリキュラムを考えないとあかんねやろなと、いよいよ本格的に思うようになってきてます。ここらへんは、ゼミをはるかに超えた課題ではありますが。。。

(3)16th_部分的にプロジェクトはじまり。

16thのメンバーもいよいよ決まりました。
全員参加ではなく、また近畿大学アカデミックシアターのACTプロジェクトである意味のイノベーションプロジェクトとしてやっていることですが、東大阪市の山本光学株式会社さんとのResearch&Designプロジェクトというのを展開しています。

ちなみに、山縣ゼミに内定したメンバー以外の学生も参加してくれてます。

けっこう濃密に進めることができてるなって感じてます。また、このあたりは機会があれば書きたいと思います。

他にもビジコンも始まったり。これから本格的に動いていくことになります。

6. 講義のこと、学内その他。

講義に関しては、ほぼ完全に対面に。ただ、オンライン講義素材は今も活用しています。その点で、特に目新しい展開はありません。

ただ、後期になってから、急遽、担当科目が増えたりと、ちょっと後半になって慌ただしくなったところはあります。その科目自体、以前にも担当したことはあるのですが、やはりあらためて組み直したいなと思ってます。2024年度も担当するので、できれば2月3月には準備したいところです。

それと、2023年10月からちょっとした役職に就くことになりました。私などで務まるのかどうか、不安だらけですが、任を解かれるまでがんばろうとおもいます。

7. ザッソウラジオに出させてもらったり。

どういうご縁だったか、もう失念しかけてるんですが、楽天大学学長(がくちょ)の仲山進也さんと、ソニックガーデン代表取締役社長の倉貫義人さんがやっておられるザッソウラジオに出演させていただきました。

第3回がやたら長い(笑)世阿弥がらみで話が盛り上がりました。
鼎談それ自体がめっちゃ楽しかったです。

ちょうどその直後に大阪での倉貫さんの出版イベントで、仲山さん、倉貫さんと直にお目にかかれたのもすごく嬉しかったし、楽しかったです。

9. Ad:tech 2023に出させてもらったり。

10月19日には、2023 ad:tech Tokyoに登壇させてもらったりしました。こちらは、FICCの森 啓子さんにお誘いをいただいて申し込んだところ、採択されたもの。

その折のことをFICCさんのサイトでまとめてくださってます。よろしければ、ご覧ください。

FICCの森さん、そしてマザーハウスの山崎大祐さん、ウィル・シードの小林 陶哉さんとご一緒させていただきました。あっという間でした。楽しかったです。この登壇で、人的資本という概念について、あらためて勉強し直すきっかけをもらえたのは大きかったです。この4人やったから、濃密になったというのは間違いなくあるかなと思います。

そして、近畿大学で廣田章光先生の講義にゲストとしておいでになったときにお会いしてから7年。山崎さんと登壇ご一緒したのは初めてでした。それも個人的にはすごく嬉しいことでした。

1.で触れた詩学的アプローチについて、ちょっと経験的な研究の可能性が見えたのは、この当日にいろいろ山崎さんからマザーハウスさんでの取り組みを伺うことができたからというのもあります。

そもそも、アドテックというイベントのすごさも知らずに、お誘いにほいほいと乗っかったのが最初でしたが、ほんとにありがたい機会をいただきました。

9. その他にも、いろいろ。

他にも、いろいろ楽しいことはたくさんありました。5月下旬には渡邉康太郎さんとゆっくり話ができたり(そのあと、9月にも。そのときは、京都大学の山内裕先生や佐藤那央先生、インフォバーンの井登友一さんとかともご一緒に)したのも楽しかったですし、上にも触れた近畿経済産業局関連の案件で、いつもお世話になっている友安製作所の友安啓則さんにじっくりインタビューできたりとか、木村石鹸さんが来年で百周年になるので、そこらへんのインタビューをスタートできたりとか。

ここに書けてないけど、いろいろなことができた1年でした。

後半になって、ちょっと役職になってしまったもんだから、いろいろと仕事が増えたのも確かで、それで研究やらがすこし捗りづらくなっているのも事実ですが、来年はペースつかんでやっていきたいと思います。

ちょっと後半になって、息切れしてしまった感じはありました。もう今年は4度目の年男。ペース配分も考えながらやっていきます。

能のことについては、別途書きます(年内には間に合わなさそう)

10. ごあいさつ

ということで、2023年も、ほんとにお世話になりました!!!
2024年もどうぞよろしくお願いいたします!!!!!

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