店長と私 #05 バッドニュース
「そいつ」のおかげといってもいいかもしれない。
厄介なタバコの場所や銘柄は、補充を口実に直ぐ覚えた。自分で言うのもなんだが、私は窮地に立たされると頑張れるタイプの努力型だ。しかし普段は基本窮地に立ちたくないので努力はあまりしていない。
私は「そいつ」のことを腹いせに自分の頭の中で創作したりなどしていた。
こんな最低な想像をしていたら、オーナーが通りすがりに私に行った。
「レジ、忘れたか?」
またしても泣きそうになった。
こんな感じで私の初勤務は終わった。
勤務終了時、私はあーさんに「迷惑ばっかりかけてすみませんでした」と謝った。
あーさんは、「いやいや!助かりました」
と言ってくれた。私はあーさんの、無駄な話はせず簡潔に物事を伝え、ミスも一瞬で解決してくれるところに初日の勤務でかなり好印象を抱いていた。
次の日出勤打刻時間まで事務室で待機していると、私服のあーさんが入ってきた。事務室に、私、オーナー、あーさんの3人。私は気配を消してできるだけ小さくなっていた。
あーさんが小さく低い声で
「よくないニュースなんですけど」と切り出した。私は「これ、私聞いて大丈夫?」と思いながら小さく小さくなっていた。
「癌でした」
(続く)
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