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Time is Journey(5)

いい本を読んだ。

タイトルは直球ど真ん中である。
本に関わる人が、例えば流通、作家、本屋など、各々の持ち場から見える出版業界の景色について、本への愛憎について、書かれたエッセイだ。

どのエッセイも、問題意識を前面に出すことはなく、暖かみがあるが、一つ一つを読み終えると、どこか考えさせられてしまうエッセイだ。どのページから読んでもいい本で、リビングのいつでも手に取れるスピーカーの上にしばらく置いていた。

日曜の昼下がりに、時間ができたので、軽い気持ちで手にとって、読んだ巻末のエッセイに度肝を抜かれたわけである。本の帯にもそのエッセイの一部が抜き出されていた若松英輔さんのものである。その名は井筒俊彦の書籍などを通じて知っていたし、よい文章を書く人なんだとぼんやりと認識していた。しかし、そのぼんやりは間違いであり、はっきりと認識したほうがいい、今後長きにわたり、要注目であることと思い知らされた、世間的にはどうか知らないが、自分にとっては。

ここは自分にとって、エネルギーをそそいで、本を評する場でもないから、いくつか、文章を引用することで、この感動を保存しておきたい。

彼にとって言葉は、時間とは異なる、過ぎ行くことのない、私たちが「時」と呼ぶものの器だった。人麻呂は、出来事を歌にすることによって「時間」の世界の出来事を「時」の世界に送り込もうとする

私たちは、さまざまな言葉から影響を受けている。だが、もっとま強い力をもつのは自分が語る言葉である。発した言葉が他社に届くとは限らない。だが、そんなときでも自分だけは聞いている。人は、自身の言葉から不可避的に影響を受けている。さらにいえば、言葉がその人の世界を作っている。

書くとは、思ったことを言葉にすることではない。そのとき私たちはメモしているに過ぎない。真の意味で書くとは、記された言葉に導かれて、未知なる自分に出会うことにほかならない。

学びや教育関係の本の購入にあて、よりよい発信をするためのインプットに活用します。