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月雲了推しのナナライ感想

IDOLiSH7、通称アイナナというアプリにおける私の推しは月雲了という男だ。
彼はアイドルですらない、マジマジのマジのド悪役である。性格は最悪&下劣で、主人公グループであるIDOLiSH7や、そのライバルのTRIGGERや先輩のRe:valeを卑怯で残酷な手段で蹴落としまくる役回りの、人に苦痛を与えることでしか自分の寂しさを癒せない可哀想な男、それが月雲了だ。
でも私はその彼の孤独を愛しいと思っている。彼の弱さは誰の中にもある普遍的なもので、そこに人間らしさを感じたからだ。支え合って強くなっていく、夢や希望を体現するアイドル達よりも、私は弱くて自分の醜さを抱え切れずもがいている彼に共感してしまった。

彼のためにストーリーを読み続け、彼の出番に一喜一憂し、彼が後々プロデュースすることになったŹOOĻも、彼と同じような孤独や不器用さを抱えていたので、大興奮で応援した。

言っておくが、私はIDOLiSH7もTRIGGERもRe:valeも大好きだ。感情移入もしているし、彼らが辛い目に合っているのは「悲しい」とも思うし、幸せそうに歌う姿は美しく、楽しい。関係性のかけがえのなさや、絆は素晴らしくどのグループも最高のアイドルだと思う。でも、やっぱりアイナナのシナリオの1番の魅力である「人間の弱さを真摯に描いている」という点が1番際立つのが月雲了という男なのだ。彼がこれからどう救われて、またはどう見捨てられるのか、それを見守れずにおれない…という点で、彼が大好きだ。彼を見つめる時、私はいつも彼を通して自分を見つめられる。そういうキャラクターだから好きだ。

そんな楽しみ方をしているので、当然私はアイナナのストーリーにしか基本的に興味がなく、ライブは凄いとは聞き及んでいたけれど「ま〜了ちゃん出ないしな〜」と、別に気にしてもいなかった。

しかし、今回たまたま友人が「一緒に行く予定の人が急に行けなくなった」と私を誘ってくれたのだ。基本的に「ライブ」というイベントは好き(たくさんの人間のでっかい感情がガーッと動く波の中にいられて、それに流される快感があるから)なので、まあ曲も結構好きだし(太陽のesperançaとか特に月雲了に憎しみという強い感情が向けられていて大好き)行くか〜!と同行することに決めた。

結論から言えばめちゃめちゃ楽しかった。行ってよかった。良すぎて内臓3個くらい潰れた。

基本的にずっと息が苦しかった。
楽しそうにキラキラ歌って踊るIDOLiSH7(もといIDOLiSH7の担当声優の皆さん)の姿がきらめけばきらめくほど「このきらめきは月雲了の孤独を癒さない」と月雲了に同情して泣き、Re:valeが歌えば「こんな風にユキと歌うモモが、月雲了だけに弱さを見せたばかりに、そこに縋って待ってしまって、それから勇気が出なかったせいで裏切られた月雲了」「そしてそんな月雲了の弱さとワガママのせいで生まれた沢山の最悪な悲劇」のことを考えて自分の襟首を握りしめて「ゥグッ………」と言うなどした。
あとŹOOĻが登場すると「ああ!了ちゃん見てる!?あなたの放った呪いが会場を熱狂させてる!」と思ったし、彼らが歓声で迎えられるのを見て「やめて!!!!了ちゃんだけ置いてあなたたちだけ成長しないで!!!!」と縋るような気持ちになった。そして、ここまでの全ての感情と同時に「アイドルってすごい!」「IDOLiSH7が実在しててやばい」「TRIGGER本人じゃん…」みたいな気持ちも並行して生まれていたのでもうその矛盾で狂って死んでしまいそうになった。

アイナナを最初に勧められた時、私は「フーン、でも乙女ゲーでしょ?私恋愛要素が主軸のゲームとか得意じゃないんだよな…」と思っていたし、1年後の自分がまさかアイナナのライブビューイングで自分の服の襟元を握りしめて、画面を息を止めて凝視して号泣するような、こんなこじらせクソオタクになるとは夢にも思っていなかった。恐ろしいことである。

こうやってキャラクターのバックボーンに想いを馳せて勝手にめちゃめちゃ辛くなるのには、謎の快感が伴う。
これはこの「辛さ」がとてもハイコンテクストなものだからなのだろうなと思う。「わかる」ことは快感だ。

そう考えるとアイナナのライブは全ての感情の起因要素がとてもハイコンテクストだった。アイナナがアプリゲームとして成功しているのはそこが1番強い理由なのかもしれない。緻密なストーリーというめちゃ強なバックボーンが前提にある空間は、ディズニーランドなどのテーマパークのような「没入」の楽しさがあった。キャストの皆さんも狂気のように(だがそれが役者としての本懐なのだろうと思う。どれだけ観客を騙して狂わせるかという)そこに没入していて、観客に「本物」の幻覚を見せていた。

そういうことを考えたライブでした。
セットリストや舞台演出も豪華かつ工夫が凝らされていて、「幻覚」の説得力になっててすごかった…本当に関わった全ての人たちの力があってこそ実現したものだったのだろうと思う。

みんなどうして幻覚が見たいんだろう。理想郷がそこにあるからというだけではない理由がある気がしている。

私は「幻覚」を作り出そうとする作り手の気持ちこそが1番幻覚に近い美しい現実なのだということを実感できるから「アイドル」が好きだ。偶像という嘘を作ろうとする人たちの努力は嘘では無く、この上なく美しい。

そういえばアイナナのストーリーでもそんなことを言っていた気がするな。芯のブレねえシナリオだ…。

以上、めんどくさいオタクのナナライ感想でした。
しかし、私は月雲了にどうなって欲しいんだろうな…いや、どうなって欲しいとかじゃなくて、彼の物語を見届けたいという気持ちだけがあるのかもしれない…ストーリー更新待ってます…。





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