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メルカリのSDカードに気を付けろ(メルカリで売られている中古SDを復元してみた)

 「メルカリ」の登場によって、日本の個人間取引は大きく変わった。それまでやや玄人向けな感じがあった「ヤフオク」よりも明快なシステムと、流行りのスマホアプリに特化したつくりだったことで大流行し、今では知らない人のほうが少ないというレベルまで普及した感がある。
 それ自体はいいことでも悪いことでもないと思うが、「誰でもなんでも売れる」ということは、「知識がない人が売ってはいけないものを売ってしまう」という可能性がある。
代表的なものとして「記憶媒体に残ったデータ」が挙げられる。
記憶媒体というのは、ハードディスクとかSDカードとかUSBメモリのようなデータを保存する電子機器の総称なのだが、この仕組みをよく知らない人は多い。
 こうした記憶媒体をメルカリとかで売ろうとする場合、中に入ったデータを削除するのは誰もがやっていると思う。パソコン等につないでフォーマット(データの全消去)をしてから売るだろう。しかし。「記憶媒体のデータは、簡単に復元ができる」ということはあまり知られていない。
 実は、フォーマットをかけても復元するのは比較的簡単な行為で、誤って大事なデータを消してしまった人のために復元するソフトが売られていたりもする。
 記憶媒体をスケッチブックに例えると、フォーマットは大別して「クイックフォーマット」と「フルフォーマット」の2種類がある。
 クイックフォーマットは、書き込んだスケッチブックのページの上から新しく紙を貼るようなもので、元の絵はそのまま残っている。
 フルフォーマット(完全消去)は、スケッチブックのページに描かれた絵を絵具で真っ白に塗りつぶすようなもの。元の絵を完全に潰すことになるので、復元が非常に難しくなる。
 こうしたSDカードやUSBメモリは、「トレジャーファクトリー」や「ハードオフ」のような中古品専門店であれば専用の設備とソフトを使ってデータが消去されるため、復元は極めて困難になるのだが、メルカリ等の個人間取引では、このような復元対策を行わずに出品している人も多いと思われる。

…というわけで、メルカリで適当に買った記憶媒体を復元して、データが残っているか検証していく。
まず1発目は、128GBのUSBメモリ(1200円)。早速、メモリをデータ復元ソフトにかけていくと、ズラズラっと読み取れたファイル名が出てきた。

(同人誌)エッチなお姉さんは好きですか?.jpg
ゲームヒロイン触手孕ませCG集.jpg
【肉便器乱交】あなたとコンビに.jpg
【母NTR】 妊婦すぎる僕のお母さんが近所の悪ガキに喰われた時の話。

 打ち込むのが悲しくなってきた。エロマンガばっかじゃねーか! そもそも、自分でスキャンしたデータじゃなくてネットから落としてるやつだったら完全にアウトだし、こうした事実が普通に他人に知れているあたり、やっぱり記憶媒体をちゃんと処理しないのは危険だ。
 …もう別に復元するまでもないが一応復元をかけると、やはりエロマンガのスキャンデータが出てきた。
 この人、出品物は真面目そうなのにエロマンガを几帳面に収集してることが割れたら評価ダダ下がりだろう。…っていうか、これメルカリが匿名配送じゃなかったら強請られてもおかしくない。仕様がよくわからない人がこれを出してたらと思うとゾッとするな。1200円に見合わないリスクなのは間違いない。

 次は32GBのUSBメモリ、価格は1100円。新品でも500円くらいなので、正直高い。まあ相場をわかってない人の方がPCに疎くて危機管理ができてない可能性もある。出品者はメルカリをはじめたてらしく、出品物は掃除機がひとつだけなので年齢・性別は読めない。
 先ほどと同じようにデータ復元ソフトにかけていくと…。今度は動画が6本ほど出てきた。さっきみたいにファイル名でネタバレしていないので少し気にはなるな。
 さっそく復元をかけて再生していこう。6本のうち2本はデータが破損していて見られなかった(動画や3Dデータのように大きいサイズのファイルは完璧には復元できないことが多い)が、他は読み込めそうだ。

 …ガサゴソと音だけが鳴る真っ暗な画面が出て、暗転が終わってセーラー服で歩いている女が出てきた瞬間にすべてを察した。盗撮モノのAVだわ、これ…。いちおう見続けたが、やっぱり盗撮もののAVだった。そして読み込めた4本の動画すべてが盗撮ものAVだった。
 …仮にこれを出してたのが会社のえらいさんとかで、飲み会で何気なく「最近メルカリを初めてさぁ、家のいらない掃除機が●●円で売れたんだよね~」なんて話していたら、会社のヤツにアカウントを特定されて盗撮趣味なのがバレる可能性だってあるわけで…。クビにはならないまでも、精神衛生にはとてもよろしくないだろうし、脅されていいなりになってしまう可能性まである。本当に気を付けたほうがいい。

 最後は、128GBのマイクロSDカードだ。価格は1500円。まあそんなもんだろう。
 さっそく復元をかけていくと…。データがぎっしり入っているらしく、だいぶ復元に時間がかかる。デジカメとかのSDカードだろうか?
…復元した結果、笑えないものが出てきた。
 SDカードに入っていたのは、ある女性の14歳から22歳までの写真だった。
 高校の入学式の写真から、大学のサークルで撮ったと思わしき写真、そしてラブホ女子会の写真、果ては彼氏とのキスの写真まで入っており、SDカードに入っていた写真の9割ほどが復元できてしまった。あとは長期休暇でホームステイをしたらしき写真とか、大学の文化祭の写真とかも入っていた。こんなもん1500円ぽっちで売るなよな…。

 しかもヤバいことに、大学のレポート課題のようなものまで一緒に入っていたため、所属大学と学籍番号と名前が丸わかりで、さすがに笑えない。仮にストーカー気質な男の手に渡ったら、何されるか本当にわからないぞ。

 やはり、一回パソコンにつないでフォーマットを行い、何も出てこないことで安心してしまったのだろう。こうやってデータを漁る人間がいないとも限らないし、こうしたUSBやSDカードは個人売買で売らないほうがいいよ本当に。これは責任を持って燃やして捨てた。
 どうしても個人売買サイトで売りたいのであれば、「ディスクリフレッシャー」のようなデータ消去専用ソフトでデータを復元できないような状態にして売るべきだと思うが…こうした専用ソフトであっても警察やFBIなどの組織は復元が可能なようなので、やはり完璧を求めるのであれば、売らないに越したことはない。

 基本的に記憶媒体に関しては、売るリスクとリターンがまったく見合っていないので、物理的にぶっ壊して捨てたほうがいいのではないかと思う。水没させたあとでペンチでバキバキに割ってから捨てるとか、ドリルで穴をあけるとか、そういう対策は必須だ。どれだけ生活を取り巻く環境が便利になろうと、刺身が魚に戻ったり、時間が過去に戻ったりしないように、「記憶媒体のデータは、技術的には容易に復元できる」という真理は変化しない。くれぐれもお気をつけください。

 ちなみに、秋葉原のラジオデパートにある【秋葉原最終処分場】では、HDDやSSDの物理破壊サービスを行っている。面白いお店なので、観光のついでにここに持ち込むのもいいかもしれない。


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