「エルシャダイ」の3つのデマ

1.開発費が102億円
 →実際には20数億円。

 ソースはファミ通の記事「“問題ない権利”を取得するために竹安氏は全財産をつぎ込んだ!? 『エルシャダイ』権利取得記念イベントリポート」https://www.famitsu.com/news/201308/21038513.html

 2013年5月、エルシャダイのディレクター竹安佐和記氏の個人会社が、エルシャダイの版権を取得したことを記念して開かれた座談会のレポート記事だ。この中に"20数億円"と書かれている。

 デマの元は2010年8月9日に公開された、ゲーム系メディア・インサイドの記事、「ゲーム機はインドで根付かないかもしれないが、策はある」 ― 英BBC | インサイド https://www.inside-games.jp/article/2010/08/09/43641.html

 ここでエルシャダイは開発費7500万ポンド(約102億円)をかけた超大作、と書かれているのが元凶である。しかしこの記事にはさらに元となったソースがある。英国営メディアBBCが、UTVソフトウェアコミュニケーションズのロニー・スクルーバラCEOにインタビューした記事 Indian media firm set to release first video game - BBC News  https://www.bbc.com/news/technology-10870209 だ。UTVはエルシャダイのメーカー・Ignition Entertainmentの親会社であり、開発費を出資していた。   この中に、

Ronnie Screwvala, chairman of media & entertainment company, UTV Group, said that his firm had invested £75m (5.5bn rupees) in three game titles.

(UTVのチェアマンであるロニー・スクルーバラは会社から7500万ポンド=55億ルピーを、3つのゲームソフトに投資した、と明かした)(翻訳適当)とある。

 文末に"in three game titles"とあるのだが、なぜかインサイドはエルシャダイ1作のみへの出資額だと間違えてしまった。ちなみにYahoo!ファイナンスで計算したところ、当時のポンド-円レート(1ポンド=135円前後)では7500万ポンドは約102億円で、計算は正しい。https://finance.yahoo.co.jp/quote/GBPJPY=X/history?from=20100501&to=20100831&timeFrame=d&page=1

2.「爆死」(こんな俗な表現は、筆者の美学に反するんだよなボソボソ)

→実際には「2011年発売のPS3向け」かつ「何のシリーズにも属さない完全新作」の売上本数としては健闘した方。ソース:『発売前から話題作だった「エルシャダイ(El Shaddai)」の売れ行きは善戦、消化率も好調に - GIGAZINE』https://gigazine.net/news/20110506_elshaddai/ 発売中は話題作になれなかった、そんな悲しみが記事タイトルから垣間見えますね。

 そもそも、エルシャダイは発売前から会社が事業縮小を行っていたので、エルシャダイの売上本数は会社の進退には関係なかったのだ(多分)。   

 ただし、「PVが大ブームを巻き起こした作品」としてはかなり少ないね、ということ。残念。

3.Ignition Entertainmentが倒産
 →実際は、2012年11月に『マジカルドロップV』(Steam)を発売しているので、倒産はしていない。
https://www.gamespark.jp/article/2011/06/12/28423.html
 しかし、竹安氏はTwitterで「倒産した」と不特定のユーザーに複数回返信している。 

 エルシャダイの開発と発売(企画、宣伝など)を手掛けたのは、Ignition Entertainmentというイギリスに本社があるゲーム会社。設立からほどなくして、インドの巨大グループ企業であるUTVソフトウェアコミュニケーションズの傘下に。ロンドン、フロリダ、東京など(ドイツ、中国にもあったという情報も)に開発スタジオを持っていた。

 2007年頃、エルシャダイ制作のために日本法人は東京に開発スタジオを設立。2010年5月、エルシャダイ発表。同年9月の東京ゲームショウ2010以降、ニコニコ動画でPVを使用したMAD動画のブームが巻き起こる。ところがリーマンショックの影響で親会社UTVの経営が悪化し、各国の開発スタジオの閉鎖が決定。エルシャダイも、開発途中であるにもかかわらず東京スタジオの解散を強いられてしまう。半年分の開発期間がなくなってしまったらしい。

※こちらのTogetter記事(Twitterのまとめ)をかなり参考にさせてもらいました。『「エルシャダイの流れを簡単に説明する」というデマ - Togetter』https://togetter.com/li/622898



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