20231130_自分とナゲットとソースの関係性調整

初めて行く場所で仕事する日。
とは言ってもその仕事先の最寄り駅には幾度となく行っているし、地図もチェックしてある。
早めに仕事先の最寄り駅に到着し、マクドナルドで一息入れる。ナゲットをオーダー。ソースは期間限定のトリュフソースを選ぶ。
ナゲットのソースはほぼ毎回マスタードにしている。しかし一昨日別のマックに寄ったとき、店内のラジオ的なものでaikoが「期間限定でナゲットにトリュフソースが登場」と言っていたのを思いだしたのだ。aikoによって自分の食に関する消費行動に変化が起きた。

トリュフソースを味わうべく、ちいさな器にナゲットをしっかり浸した。口に運んで、ナゲットを噛み切らずに口から出した。ナゲットをスプーン代わりにしてトリュフソースだけをとっぷり舐めたかたちになってしまい、自分の卑しさを恥じる。

トリュフソースはうまい。

しかし私はナゲット自体がかなり好きなので、スプーン代わりにナゲットを使うのはナゲットに対する冒涜でもある。その後はトリュフソースを少なめにつけて食べたり、つけずに食べたり、やっぱりスプーン代わりにナゲットを使ったりして、自分とナゲットとトリュフソースの間の関係性を調整した。

気づいたら仕事の集合時間が近い。
急いでマックから出て地図アプリを開いたら、しまった、今日初めて行く仕事先は駅の反対側であったか。
駅に戻ろうかと一瞬考えたが、近くに踏切があるのでそちらに回る。しかし比較的大きなターミナル駅ゆえ、いわゆる開かずの踏切であった。駅まで戻る時間と踏み切りを待つ時間を天秤にかけ、その賭けに負けたかたちである。

5分遅刻。
駅の反対側に出たことは仲間に話したが、早めに着いてマックでトリュフソースのナゲットを味わっていたことは当然ながら胸中にしまっておいた。

仕事はさくさく進み、解散。
駅に戻ると、海外のチョコレートのお店がある。先日の誕生日に友人からその店のデジタルギフトをもらっていたのを思いだし、使うことにする。
はたと「ギフトチケットを受け取る」のボタンを押したら自然になんらかの商品が郵送される仕組みだったか、と心配になり確認したが、よかった、店舗受け取りであった。
いただいた金額的に豪遊できるぞと鼻息荒く入店したが、さすがの高級店、想像よりは豪遊できない。かくして選択肢は自然と数点に絞られた。
ギフトチケットはお釣りが出ない仕組みなので、損しないようにいただいた額は全てつかいきりたい。しかしギフトとしていただいたのに、私が超過ぶんの料金を払うのもなんとなく納得しづらい。その逡巡を何周か繰り返し、50円だけ超過料金を払うラインナップにした。

レジにて。店員さんにプレゼント用か否か尋ねられ、自宅用である旨つたえる。すると彼いわく私が選んだ商品はすでに箱詰めしてラッピングされているため割高になっており、ビニール袋に自分で選んで商品を入れるスタイルにする方がお得であるとのこと。
しかし何回か商品選びに逡巡したので、もう選んだりしたくない。
そっけなく断り、断ったのち数秒のうちに脳内で「私はプレゼント用を自宅用として買うが、それは私がこの商品を自分や家族へのプレゼントとしたいからである。私は自分への買い物もプレゼント用にする素敵な人間なのである」という言い訳がましいが誰にも伝える必要のないペルソナをつくりあげた。
いよいよデジタルのギフトチケットで支払い。こういうのはだいたい出す側も「えっと、QRコード……」といった具合でまごついてしまう。店員さんも処理に手間取る可能性があるなと見越していた。
しかし全てスムーズにすすんだ。
驚いたのはチケットの処理方法である。
チケットを使うページには「スタンプを押してもらってください」というインストラクションがある。おそらく店員さんがスクロールしてタッチするのだろうと想像していたのだが、スマホの画面上に、なんと物理的なスタンプ状の何かを押しつけたのである。もちろんインクはない。
デジタルなのにきちんと物理的でわかりやすい処理方法に感心して思わず「ほぉ……」と息をもらしてしまい、その吐息がスマホにスタンプを押す店員さんの手にかかってしまった。
スマホを見直すと、ギフトチケットのページは「exchanged /交換済み」の画面に切り替わっていた。








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