【いそがしいとき日記】その27
「天保十二年のシェイクスピア」が開幕して、今日で4日目です。
連日満員のお客様、それこそ「いっぱいのお運び」で本当に嬉しく思っていますし、「やっぱり商業演劇ってすげぇな」とも思います。
これだけたくさんのお客様に待ち焦がれ、期待され、喜ばれるエンターテイメントを作り上げるためには、途方もないくらいたくさんの人の努力と苦労と高い技術力が結集しないといけないわけで。一朝一夕にはその組織力は作れないから。
昨日までで4公演が終わりましたが、僕がSNSなどで検索しているかぎり(SNSでみなさんの感想読むの大好きなの)おおむね好評のお言葉をいただけているようです。これもまた嬉しい。
今回の作品の面白さは、出演者の豪華さもさることながら、戯曲自体が持っている「多層性」、そしてそれに寄り添いまた挑戦するかのように創られた宮川彬良さんの音楽の「多層性」、藤田俊太郎さんが提示した演出構造の「多層性」
その3つの多層性、いわば「多層性の三乗」が生み出すなんともいえない劇効果の乱反射だと僕は思っています。これによって観劇の楽しみ方の「多層性」も生じてきているのではないかな。
つまり、お客様それぞれのバックボーンやこれまでの観劇・読書経験、人生経験によって、本当に多彩な楽しみ方をしていただいている。すごくありがたいことだなと思います。
出演者の存在やパフォーマンスを楽しんでくださる方、音楽のカラフルさを楽しんでくださる方、演出のダイナミクスを楽しんでくださる方。脚本の「シェイクスピアパロディ」の仕掛けを楽しんでくださる方。
はたまた、歌舞伎や文楽の要素を読み取って楽しんでくださる方。ミュージカル的な楽しみを見出してくださる方。こまつ座や蜷川演劇という日本演劇の大きな歴史の流れを感じ取って楽しんでくださる方。そのほかにもさまざまな楽しみ方をしてくださっているようです。
これが僕としては本当に嬉しいです。
それぞれの人生を抱えたお客様が、同じ場所に集い、同じ演劇を見る。けれどそこから受け取るものはそれぞれ。
そういう観劇体験が結実するのは、劇作品が多面鏡のような役割を果たせているときだと思います。僕は、多面鏡のような役割を果たせる劇作品が、大好きです。
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で、もちろん、「よかった!」という感想ばかりではないのが当たり前。
「よくなかった」という感想を読むことも、僕としてはとても嬉しいです。
嬉しい、というと言葉の選び方がすこし雑かもしれません。なんというか、「興味深い」といいますか、「知的好奇心をくすぐられる」気持ちがします。
ある演劇作品が世に放たれた時に、それについての感想がなにか一色に塗り込められてしまっているとしたら、演劇作品としては「失敗作」なんじゃないかと僕は思っています。
どんな演劇作品であれ、それが作られる根幹には、「社会に何かを提示したい」という欲求が存在しているはずだと思うからです。
社会とは、いろいろな人生といろいろな考え方を持った、いろいろな出自の人々が住む場所です。そこに何かを提示したら、きっと賛否両論、さまざまな色と形のリアクションが返ってくるはずなのです。
さまざまな色と形のリアクションから、僕ら演劇に携わる人間は多くのことを学びます。画一的なリアクションから得るよりも、遥かに多くのことを。
同時に、SNSが発達したこの時代だからこそ、「SNSには浮上してこない感想たち」のことにも思いを馳せます。
SNSをやっていない方、やってても書かない方、そもそもスマートフォンやPCを持っていない方、ネットに自分の言葉をあげる習慣を持っていない方。そういった方がいまでもたーーーーくさんいるはずなのです。
そういう方の心の中に、何が起きたのか、それについても注意深く思いを馳せなければならないなと、いつも思います。
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ところで、僕には前々から夢があって。
演劇を肴に、「作った側」と「受け取る側」がおしゃべりをする、そういう時間を持ちたいということ。
イギリスには田舎でも街にひとつ劇場があって、劇場のそばにはカフェやパブがあって、終演後にお客さんたちがそのカフェやパブで酒を飲みながらその日の芝居についていろいろな話をする。
その店には終演後の俳優たちも家族や友人や恋人を連れて訪れ、さっきまで観客だった人たちと、さっきまで出演者だった人たちが、同じ演劇をトピックに話をする。
そんな光景があるという話を聞いてからの、憧れなのです。
「ああ、僕も終演後、お客さんと酒飲みながら、
その日の芝居の話とか、してぇな・・・、それって、豊かな文化だなあ・・・」
と。
そんな夢、かなうといいな。
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さて。
本日は祝日のようですね。
僕らは12:30開演のマチネ、17:30開演のソワレ、2回公演で「天保十二年のシェイクスピア」をお届けします。
ご来場のみなさま、お待ちしております。
正直、なかなかハードな公演スケジュール(と内容)なのですが、終演後はいつも清々しい気分になります。お客様の拍手に支えられています。
それでは、今日もがんばってきます!
みなさまもいい1日をーーーーー!!!!!
読んでくださってありがとうございました!サポートいただいたお金は、表現者として僕がパワーアップするためのいろいろに使わせていただきます。パフォーマンスで恩返しができますように。