ホットミルク

牛乳をマグに半分、電子レンジで50度
ティースプーンに蜂蜜を絡めて白色へ沈める。
カラカラと軽い音、優しい香りがゆっくり肺を満たしていく。
テーブルにはスマホスタンド、イヤホンが絡まないように設置してコール画面をタップした。
「おはよう」と言っても返事が無く、珍しいなと思っていれば何やらパタパタと音がして、「こんばんは、ごめんトースト取ってくるからちょっと待って」と言うとまた音が離れていった。
きっと起きて直ぐにこの通話を繋いでくれたのだな、と胸の奥がじんわり暖かくなった気がした。

時計を見れば深夜二時、君との時間、イヤホンの向こうでサクリとトーストをかじる音
いつだったかにトーストにはホットミルクが合う、と言った君へ、「最近コーヒーをやめてホットミルクを飲むようになったよ、よく眠れるようになった」と伝えると、んふふと笑ってまたサクリと気持ちの良い音を鳴らす。
返事は無いけどそれでよくて、なんでもない、ただの時間の共有。

そっちは今何時なのとか、ふと気になっても聞くこともない、多分そっちは昼頃で、君はさっき起きたばかりで、私はこれから寝るところで、それだけ分かっていれば充分だから。

「今度注文したマグが届くよ」と君は言う、「こっちも届くよ、明日だったかな」と言えば楽しみだなと呟きが聞こえて、それはきっと伝える気などない零れた気持ちで、そんなことが胸の奥からゆっくり体を温めていくから、君の真似をするように笑った。

君がトーストを食べ終わって、私がホットミルクを飲み終わる。
少しの雑談は些細な日常を共有して、深夜二時半

おはようとこんばんはで始まった時間は、そうしておやすみと行ってらっしゃいで終わる。

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