灰掻きの話

魂と肉体を分別して、魂は一旦燃えない方、肉体は凄く質が良いものだけ残して燃える方、でも基本みんな燃える方。
燃えない方はリサイクルにして、燃える方は灰にして、そうして灰になったものがここにたまる
この灰を今度は命の木の肥料にするやつと粘土みたいに捏ねるやつに分ける
粘土みたいにこねるやつはだいたい神様のところに行く、地上の生き物はみんな命の木から生まれてると言っていい、
燃えない魂は大抵、命の木の種になったり、神様のところで溶かされて綺麗にされてリサイクルされる、地上に根付いた命に神様が魂を入れる。
命の木は命を実らせて時期になると実を落として、その実は地上に消える、ここでは命の実がただ消えたようにしか見えないけど、地上に落ちる。
地上の命はゆっくり大地に命を分けて、地の下に行く、地の下で振り分けられた肉体と魂がまた天の上、つまりここに戻ってくる。
そうして命は回っていく。

ここはその灰の振り分け場なんだけど、天井の網目から、光とともに降ってくる灰は砂時計みたいで綺麗で、僕は好きなんだ。
僕はここから出られないけど、ここの上では光で肉体を灰に変えているんだって、
肉体が燃えるなら相当な熱さなんだろうけど、こんな優しい光がここの遥か上ではそんな熱を持った強い光だなんて、不思議だよね、一体どれだけ距離があるんだろう。

僕は翼を持たないから、ここからは出られないけどね、たまに点検で翼がある人たちがやってくるんだ、僕もその人達に連れてこられてここにいるんだけどね、点検の人達はその合間に外の話をしてくれてね、僕はそれが楽しくて仕方ないんだよね、外に出たいと思ったことは無いけど、想像した風景が実際に広がってる姿を見てみたいと思うことはあるよ、いつかさ、地上にある写真みたいに、見られたらいいなって。

僕は、ここで灰を掻いて過ごすのを結構気に入ってて、点検の人達も良くしてくれるし、好きだよ、
翼のある君はどこに行くのかなぁ
神様の近くであるほど良いってみんな言うよね、
神様に近いほど神様に仕えてるとか近くを許されてるって思えて嬉しくなるんだって、
僕はね、神の庭が良いと思うんだ、すごく綺麗で豊かな場所だって聞いたから、

ねえ、僕はもう随分長いことここで灰を掻いて過ごしてるけどさ、僕は翼の人達じゃないからきっといつか朽ちてしまうんだと思う。
だって僕が来る前にもここには誰かがいて、灰を掻いていたはずだから。
僕が朽ちたら僕も地上の命の流れに入れるかな、僕にも命の流れがあるのかな、僕ってどこから来たんだろうね、そしてどこへ行くんだろうね、
分からないけど、もうあと、今までと同じだけでもここで灰を掻いていたいって思うんだ。

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