呼吸
君、そこの君、まだ小説を書いているかい。
それからそこのあなた、絵は描き続けているかい。
あなた、小さい頃の僕、人を諦めた僕、工作を諦めた自分。絵と小説を並べて絵を手放した私、向かない小説を選んだ自分。
まだ、書いているのかい。
息を吸わなきゃ吐けないよ、吐いてばかりじゃ苦しいだろう。
どんなに息が長くとも、そろそろ呼吸の折り返し、吐いた分だけ吸う時間。
今はペンを置いて、顔を上げてみて。
夜の空気は美味いだろう、月の明かりは優しいだろう。
夜も意外と賑やかだろう、穏やかだろう。
昼より近く見える木々は話しかけてくるようじゃないか、河原に座り込んでみれば対岸の草花が手を振るようじゃないか。
息をひとつ吸ってごらん、夜が優しくしてくれてるのが分かるだろう。
昼の息のしづらさは消え、心地の好い温度が肌を撫で肺から体を満たすだろう。
目を瞑ってごらん、夜はすぐそばであなたを守ってくれるから、今はその帳の内で、ゆっくり息を吸うといい。
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