書評『八月の御所グラウンド』は温かい奇跡を描く青春物語!見えないものが見える京都の魅力とは?

どんな物語が展開されるの?

『八月の御所グラウンド』は、万城目学さんが16年ぶりに京都を舞台に描いた青春小説であり、直木賞受賞作でもあります。
物語は二つのパートから成り立っており、真冬と真夏の京都を背景に、ユニークでありながらも共感できるキャラクターたちが織り成すストーリーが展開されます。

第一の物語「十二月の都大路上下ル」では、絶望的に方向音痴な女子高校生・サカトゥーが全国高校駅伝に急遽出場することになります。
サカトゥーは、京都の寒冷な冬の中で、走ることを通して自己を見つめ直し、成長していく様子が描かれます​。

第二の物語「八月の御所グラウンド」は、灼熱の夏に開催される草野球大会「たまひで杯」に参加する大学生たちの物語です。
舞台は京都御所内のグラウンドで、主人公たちは数々の困難に直面しながらも、チームとしての絆を深めていきます。
特に、留学生のシャオさんが伝説的な野球選手・沢村栄治に似ていることに気付き、彼の存在を感じながら試合に挑む様子が印象的です​。

何が特別なの?

本作の特筆すべき点は、京都の独特な雰囲気と共に、幻想的な要素が絶妙に絡み合っていることです。
京都は1200年以上の歴史を持ち、その街並みや風景は、時間の流れを感じさせるものです。
万城目さんは、その歴史の重みと現代の若者たちの葛藤を巧みに描き、読者に見えないものを見る力を与えてくれます。

「八月の御所グラウンド」の物語では、見えないものが見えるというテーマが特に強調されています。
例えば、シャオさんが感じる日本の野球文化の異質さや、遠藤というキャラクターが第二次世界大戦で戦死した学生名簿に載っていることなど、現実と幻想の境界が曖昧になる瞬間が描かれています。
これにより、読者は歴史や文化に対する新たな視点を得ることができます​ ​。

誰におすすめ?

『八月の御所グラウンド』は、万城目学さんのファンはもちろんのこと、京都の歴史や文化に興味がある方、幻想的な物語を楽しみたい方に非常におすすめです。
特に、京都での青春時代を過ごした経験がある人には、懐かしさと共感を呼び起こす要素が満載です。
また、青春小説としての側面も強く、登場人物たちが直面する困難や成長過程は、多くの読者にとって共感できるものでしょう​。

本作は、優しさと温かさに満ちた語り口で描かれています。
特に、見えないものを見る力をテーマにしたストーリーは、読者に新たな視点を提供し、日常の中にある奇跡を再認識させてくれます。
若者たちが抱える悩みや葛藤を通して、人生の美しさや儚さを感じさせる一冊です。

まとめ

『八月の御所グラウンド』は、京都という歴史と文化が息づく街を舞台に、見えないものが見える奇跡を描いた青春物語です。
万城目学さんの繊細で豊かな描写により、読者はまるで京都の街を歩いているかのような感覚を味わうことができます。
本作を通じて、日常の中に隠れた奇跡や、時間を超えたつながりを感じ取ることができるでしょう。ぜひ一度、手に取ってその世界に浸ってみてください。


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