私の好きな短歌、その40
荒海の浪はにごりてくだけつつ水際の砂を平らかに這ふ
窪田章一郎、『六月の海』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p338』)
眼前の景をそのまま歌にして余すところがない。一心に景色を見て作り上げた一首なのだろう。大げさにしようとか、ことさら美しくしようという邪念がない。読者はそのまま受け取って風景をそれぞれ頭に描いて、そこに吹く風を、激しい波音を味わえば足りる。結句「平らかに這ふ」で、時間が流れ、余韻を引いた。
『六月の海』は1955年(昭和30年)刊行。刊行時作者48歳。作者生没年は1908年(明治41)ー2001年(平成13)、享年94歳。
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