私の好きな短歌、その28

夕照雨ゆふでりあめはらはら光りのなかにわがさといれてにじたちにけり

 結城哀草果、歌集『山麓』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p154)

 「夕照雨」は作者の造語だろうか。「はらはら」といい、「輪のなかにわが里いれて」といい、情景を見事に再現している。私の住む田舎でも大きな虹が立つことがあるがまさに、「わが里いれて」である。しかしこの表現は思いつかなかったと思う。情景は珍しくないものかもしれないが、それを一首のごとく表現することこそが、短詩形文学、短歌の醍醐味だ。頭から末までよどみなく、難しくなく、しかし詩的に輝いている。

 『山麓』は1929年(昭和4)刊行で、1914年(大正3)の歌から入っている。刊行時、作者37歳。作者生没年は1893年(明治26)ー1974年(昭和49)享年82歳。

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